川島蓉子のひとむすび

<30>虎屋が提案する新しい「あん」生活 「TORAYA CAFÉ・AN STAND 北青山店」(前編)

  • 川島蓉子
  • 2017年11月22日

「あんバン」(右列)と「あんペーストフォンダン」

 去る10月22日、「TORAYA CAFÉ・AN STAND(以下、あんスタンド)北青山店」がオープンしました。新宿「ニュウマン」の第1号店に続いて2店舗目です。ロケーションは、東京・青山の「KINOKUNIYA」の裏手で、周囲にポツポツお店はあるものの、閑静で落ち着いた界隈(かいわい)です。前面がガラス張りになっているショップは、控えめながら目立つ存在。右手の入り口から入ると、カウンターとスタンド席が配してあるシンプルな空間が――すっきりした明るいお店です。

 コンセプトとして掲げているのは、「『あん』のある生活を」。

 「あん」をもっと気軽に楽しんでほしい
 トラヤカフェ・あんスタンドはそんな想いから誕生しました。
 いつもの食べ方にひと工夫加えた
 自由で新しい「あん」の楽しみ方を提案します。

 ということで、ユニークな新商品も登場しています。
 それらはどのように作られたのか、店長の川本未青さんと、副店長兼キッチン責任者を務める木村咲子さんのお話をうかがいました。

「あんバン」と「あんペーストフォンダン」

 北青山店オリジナルとして作ったのは、「あんバン」と「あんペーストフォンダン」の2つ。まず「あんバン」は、もちっとした触感がある生地に「あんペースト」がたっぷり挟んであります。「あん」を生かし、おいしく食べられる方法はないかと探った結果、おまんじゅうでもパンでもない、ユニークな商品ができあがったのです。

オリジナルの生地にあんペーストがたっぷりはさまれた「あんバン」

 「あんバン」の「バン」は、バンズパンから取ったものですが、特徴のひとつは、オリジナルで作った「バン」の生地。「作り方はパン、配合は蒸しパンといった感じです」と川本さんは語ってくれましたが、ここに行き着くまでに、何度も試行錯誤を重ねたのです。弾力のある食感を出すため、さまざまな小麦粉の中から北海道産のものを厳選し、強力粉に米粉とベーキングパウダーを加え、練って蒸し上げました。

 温かいうちにほおばると、小麦の馥郁(ふくいく)とした香りが豊かに広がります。そして、中央の切り込みに「あんペースト」がたっぷり挟まれているのですが、口に入れると、生地と合体した「あん」の甘さととろり感が口の中いっぱいに広がり、しあわせな気分になります。

中からとろっとあんが出てくる「あんペーストフォンダン」

 もうひとつのお菓子は「あんペーストフォンダン」。こちらは、チョコレートフォンダンをかたどったネーミングで、中から出てくるのが、チョコレートではなく「あんペースト」です。

 「ナイフやフォークを使わずに、気軽に食べていただけるお菓子と考えて作りました」(木村さん)。さくっとした表面の生地には、小豆やカカオが入っています。手に取ってがぶりと口に入れると、外の「かりっ」と、中の「とろっ」は、チョコレートフォンダンの感覚で、味はしっかり「あん」なのです。

わが家のロングセラー「あんペースト」

 さて、「あんペースト」とはどういうものでしょうか。これは、2003年に「トラヤカフェ」が世に生まれ出た時の看板商品のひとつ。もちろん、「あんスタンド」でも売っています。「あん」にメープルシロップや黒砂糖といった素材を加え、少しやわらかく仕上げてあるペーストなのです。「こしあん」「小倉あん」「白ごまときな粉」が定番としてそろっていますが、それ以外にも、「栗」「抹茶とホワイトチョコレート」など、期間や数量限定のものもあります。

朝のお楽しみ、「あんペースト」

 何を隠そう、「あんペースト」はわが家のロングセラーです。早朝の3時から原稿書きをしている私にとって、スイッチを入れるために欠かせないのが朝ゴハン。メニューは、10枚切りにした薄い食パンに「あんペースト」をたっぷり塗って、コーヒーといただくというもの。この生活を、かれこれ10年以上も続けてきました。

 出会った時は、「あんがペーストになっているってどんな味で、どう使うとおいしいの?」と思ったのですが、お店の人のアドバイス通りに試したところ、トーストやクロワッサン、ヨーグルト、アイスクリームなど、いろいろなものに合うことがわかりました。小豆の香りとすっきりした甘さは、くせになるおいしさです。

「あんペースト」は、こしあん(レギュラー 1080円/スモール 640円、税込み)、小倉あん(同)、白ごまときな粉(1296円/864円、税込み)の3種類がネットで買える。店頭では栗(864円)バージョンも購入可能

 そして今回、「あんバン」と「あんペーストフォンダン」で、今までとまた違う「あんペースト」のおいしさに出会い、「あん」という存在は、改めて奥行きが深いと感じ入りました。そして川本さんと木村さん、2人の女子が紡いでくれた言葉の確かさは、これからのお客が喜んでくれる、「あん」のおいしさを、知恵と身体を使って生み出したからと思い及びました。

 500年近い歴史を持つ和菓子の老舗が、こうやって新しい挑戦を続けている――その先に未来が築かれていく。長生きしているブランドが重ねてきた努力に、頭が下がる思いです。

 次回は、この店のインテリアや、2階にあるスペースなどに触れたいと思います。

TORAYA CAFÉ・AN STAND 北青山店
東京都港区北青山3-12-16

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PROFILE

川島蓉子(かわしま・ようこ) 伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト

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伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。多摩美術大学非常勤講師。 日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。
ifs未来研究所 http://ifs-miraiken.jp

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