世界の子どもに「当たり前」を。原点は大学時代のゼミでした 白木朋子さん(ACE事務局長)[PR]

  • 2017年12月4日

白木朋子さん

  • 白木朋子さん

  • 「初めてインドに行ったときの衝撃が忘れられず、それから20年、変わらない思いでやってきました」

  • おいしいチョコレートやまっしろなコットンの裏側にある、児童労働や環境問題について理解を高めるべく、活動を続けている

  • 大学のゼミの校外実習で、スラムの子どもたちにインタビュー(1997年2月)

  • 1998年ACE立ち上げのきっかけとなったグローバルマーチにて。創業メンバーの岩附さん、小林さんとともに(インド、1998年4月)

  • ACEでの活動。ガーナの子どもとその家族にインタビューしている様子

  • ACEでの活動。人身売買から保護した子どもと家族とともに

 ACEは「遊ぶ、学ぶ、笑う。そんな当たり前を世界の子どもたちに」をキャッチフレーズに、世界の子どもを児童労働から守るための活動をしてきたNGOだ。現在事務局長を務める白木朋子さんが明治学院大学の学生だった1997年に、代表の岩附由香さんとともに始めたACEの活動は、今年20周年を迎える。20年にわたるACEの活動と児童労働の現状、私たちができる社会貢献について、話を伺った。

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――これまでのACEの活動について教えていただけますか。

 現在は、インドとガーナと日本で活動を展開しています。インドは服の原料になるコットンの生産地域、ガーナはチョコレートの主原料であるカカオの生産地域です。学校に行けずに危険で有害な状況で働かされている子どもたちが、そういう状況を抜け出し教育を受けられるように現地で活動する一方、日本では企業との連携に取り組んでいます。カカオやコットンを原料にしてビジネスをしている企業の方々と一緒に、児童労働などによって作られたものではない商品を、世の中に生み出して、消費者の選択肢を広げていこうという取り組みです。

――児童労働の問題は、今どういった状況にあるのでしょうか。

 今年9月に国際労働機関が発表したデータでは、世界で1億5千万人以上の子どもが児童労働しています。世界全体では少しずつ減ってきていますが、アフリカでは増えていて、全体の7割以上が農業分野に集中しています。たとえばコートジボワールとガーナが世界1、2のカカオ生産国ですが、2つの国を合わせて220万人が児童労働をしていると言われています。カカオを収穫したり、収穫して乾燥させたカカオ豆を運んだり、いろんな作業に子どもたちが従事している。

 ガーナは縦に長い国で、北と南で気候や文化が大きく異なります。カカオが生産できるのは南部一帯だけなんですね。北部は乾燥地域で農業も適さないので、仕事がなく、生活を立てる方法がない。北部から南部に出稼ぎにくる人が多くいます。

 またガーナはアフリカの中でも比較的経済的に成長しているし政治的にも安定しているので、ガーナより貧しい周辺国、ブルキナファソとかマリ、トーゴからの移住者も多いんですね。家族ごと引っ越してくればまだいいんですが、最悪なのは子どもだけ労働者として連れてこられる人身売買のパターンです。食べ物はもらうけど、学校には行かせてもらえず、雇い主の言いなりになって働かされる。ACEではそういった被害に遭っている子どもを救出したこともあります。

学校にいるはずの時間帯に、外を歩いている子どもが

――そのときは、どんな状況だったのでしょうか。

 私たちが救出したのは11歳と14歳の男の子でした。現地の村を訪ねて調査をしていたとき、普通なら子どもは学校にいるはずの時間帯に、外を歩いている子どもがいたんですね。車を止めて話を聞いてみたら、どうやら北部から来た子どもたちでした。学校に行っていなくて、朝ごはんを食べたきり、お昼も食べず水も飲まず、ということでした。ガーナの炎天下、そのときは牛を連れて歩いていました。本来はその場で救出できればいいんですが、いくらNGOでも勝手に救出しては誘拐になってしまいます。警察に通報し裁判所から保護命令が出てやっと保護できるんですが、なかなか現地の警察も行政関係者も動いてくれないんですね。

――手続きが思うようにはいかない、と。もどかしいですね。

 児童労働を禁止する法律も、人身売買を取り締まる法律もあるんですけど、実態として機能していない。私たちはあくまでも部外者なので、制約もあります。本来子どもたちを守るべき立場にいる現地の大人たちが役割を果たしていないことが、この問題の大きな根源でもありますが、その中でいかに現地の人たちと信頼関係を築いていけるかが大切です。あとは、現地の保健局とか病院につなぐとか、なんらかの方法があるので、自分たちで解決できない場合は別のソリューションを見つけるようにします。

――20周年を迎え、今後のACEはどのように展開していきますか。

 アメリカやヨーロッパでは近年、ビジネスと人権が企業にとっての重要テーマとなってきました。イギリスでは2015年に英国現代奴隷法という法律ができました。英国国内で事業活動を行う、ある一定程度の財政規模を超える企業に対して、ビジネス上の人権課題がないかどうか、きちんと自分たちで調べて情報公開することを義務付ける法律です。そういう法律を日本でも作れないか、政策提言などもしています。

 また、人権への取り組みといっても実際にどこから始めていいかわからないというのが企業側の現状だと思うので、人権における課題解決のプロフェッショナルとして、ACEがお手伝いするということもしています。リスクを特定したり、途上国で原料を調達している場合に、一緒に行って調査したり。そういった連携も今後は増やしていきたいです。

所属したゼミで知った「インドの児童労働」

――ACEの設立は、大学時代の「児童労働に反対するグローバルマーチ」の活動がきっかけだったと伺いました。大学時代の話を聞かせていただけますか?

 はい。もともと高校時代にアメリカに9カ月留学した経験があり、将来英語を使った仕事をしたいと漠然と考えていました。それで明治学院大学の国際学部に進学しました。旅が好きで、大学時代もよく友達と一緒にバックパックを背負ってアジアの国々を訪ねたりしました。私は、見知らぬ土地の人たちの生活、食べ物、文化などに興味があって、いろんなものに接したり現地の人と仲良くなったりすることが好きなんですね。

 電気がない生活でも大丈夫、というように、どんな環境でも柔軟に適応できるのは、その頃にベースができたのかもしれません。国際学部だからか、まわりも他人が行かないようなところに旅をする人が多かったですしね。自由なんだけど、ガツガツしていなくて、いい環境だったと思います。また、進学前に思い描いていた国際関係とは違っていて、視野が広がりました。

――児童労働というテーマに出会ったのは?

 所属したゼミ(田部昇先生&リチャード・ヤング先生)が、まさにインドの児童労働をテーマにしたゼミでした。3年の終わりにフィールドワークがあり、初めてインドに行って。実際に働いている子どもたちや家族にインタビューをしたり。インドのホスピスも訪ねました。

 そこには人生を終えようとしている人たちがいるわけですが、最後に通された部屋が、赤ちゃんがベビーベッドに並んでいる部屋だったんですね。エイズに母子感染してしまった子どもたちで、生まれてきたばかりなんだけど、命がいつまで続くかわからない。インドの子供って、目がくりっとしてすごくかわいいんですが、そのとき私を見つめていた赤ちゃんの顔は、いまだに忘れられないです。

 児童労働の問題についてゼミで勉強はしていたわけですけど、現地に行ったら、自分が思っていたよりも大変な状況があるということにすごく衝撃を受けて。そのときの衝撃は今も残っているし、あのとき見た深刻な状況はまだ世界の中では変わっていない。それに対してどうにかしなきゃという思いが、この20年間続いてきたっていう感じなんです。

――卒業後は、イギリスの大学院で開発人類学を学んだのちに、一度民間企業に就職されています。会社をやめてNGOに専念するのは、大きな決断だったのではないですか。

 就職したのは、ODAのコンサルティングを行う会社でした。社会開発の分野に特化した会社で、教育、環境、保健、そういう分野の仕事が多かったんですけど、やっぱり私がいちばん関心があるのは子どものことだったんですよね。いろいろな仕事をさせてもらいましたが、子どもにフォーカスを当ててできる仕事があまりなくて、自分の中でジレンマを抱えていたというか。働きながら平日の夜や休日を使ってACEの活動をしていたのですが、本当にやりたいことはACEにあると感じていたので、05年に法人化するタイミングでこちらに専念することにしました。

一消費者としてチョコを選ぶとき、何を選ぶのか

――コンサルティングの仕事をした経験も、現在の仕事に生きていますか?

 プロジェクトの計画を立てて、モニタリングして評価するというやり方は、まさに前職で学んだ方法です。NGOの仕事って、草の根の、思いから始まって、思いだけで推し進めてしまっている活動が多いと思うんです。コンサルタントの仕事で学んだのは、それぞれの国には政策があって、重点課題があるということ。それに対して日本がどういう援助をするか。プロジェクトを進めるうえでも、それぞれの国の文脈をどうとらえるか、国の政策をどう自分たちの活動とリンクさせて問題解決を図るのか、その点を意識しています。

――私たちにできる社会貢献として、どんなことから始めたらよいでしょうか。

 商品の背景を考えてものを選ぶのも、ひとつの方法かなと思います。お買い物は投票と同じ、と私たちはよく話すんですが、消費者が何を選ぶかによって世の中の経済の流れは変わります。ACEではカカオとコットンにフォーカスを当てていますが、そういう普段食べたり使ったりしている身近なものでも、元をたどると児童労働の問題があるんです。

 一消費者としてチョコレートを選ぶとき、洋服を選ぶとき、何を選ぶのか。安いもの、楽に選べるものを買ってしまいがちなんだけど、原料が児童労働ではなくフェアに作られたものだとわかっている商品が探せばある。選択肢としてはまだ少なくて、徹底するのは難しいけれど、5回に1回でもいいんです。そういう商品を探して買ってみる。すると企業の側もそういう商品が世の中から求められていることがわかります。

 2020年のオリンピックにも、調達コードがあって、オリンピックに納入するものに関しては、人権や環境に配慮されたものでなければいけない。フェアトレードマークや、「レインフォレスト・アライアンス認証」を示すカエルのマークなど、いろいろな認証マークもあります。マークがついた商品を優先的に選ぶというのも、普段の暮らしの中でできることのひとつです。

 また、クラウドファンディング など、活動支援方法も変わってきているので、やりやすい方法で参加してもらえればよいと思います。

 社会貢献活動はいろいろあり、小さなことが有意義なことにつながっていきます。そういった活動に参加することで、自らが変わり、新しい世界が広がる可能性もあるのです。

――大学生や若い後輩たちに向けて、アドバイスがあればお聞かせください。

 よく学校でお話をする機会もあるのですが、「将来自分がやりたい仕事をどう見つけるか」という話になるんですね。将来を考えるときに、まず何か職業を選ばないといけないと思っている人が多い。でも私がこれまでを振り返って思うのは、まずは自分がどういう世界、どういう社会で生きていたいのか考えるべきということです。私の場合は、子どもたちが悲しむような世界ではなくて、自分がしたいことを実現できるような世界であってほしいという思いがあります。それを実現するために自分が貢献できる仕事をしたいと思っていたら、いまの仕事にたどりついた。若い人たちにも、何をするかを先に考えるより、どういう世の中で生きていたいかを考えてみてほしい。その中で自分は何をするかという観点で仕事や将来やることを考えていったらいいと思います。

(文/高橋有紀 写真/山田秀隆)

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白木朋子(しろき・ともこ)

1974年宮城県仙台市生まれ。宮城学院高等学校、明治学院大学国際学部卒業。英国ロンドン大学東洋アフリカ大学院国際教養ディプロマ課程(開発学、比較文化学専攻)、英国サセックス大学・文化環境開発研究所(CDE) 開発人類学修士課程修了。代表の岩附由香氏とともに、大学在籍中にACEを創業。開発援助コンサルティング会社での勤務を経て、2005年4月より現職。ガーナ・カカオ生産地での事業立案、企業との連携、企業向けの研修や、サプライチェーンのCSRレビュー(社会監査)などを担当。消費者教育、エシカル消費の普及にも携わる。著書「子どもたちにしあわせを運ぶチョコレート。」(2015年)、共著「わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。」(2007年)(いずれも合同出版)。

■ACEが20年の活動を通じて目にしてきた、子どもたちの“変化のストーリー”を1冊にまとめるために、12月18日までクラウドファンディングを行っています。詳しくはこちらから


教育理念“Do for Others”を実現するために

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今から150年以上前の1863(文久3)年、J.C.ヘボン博士が横浜に開設した英学塾「ヘボン塾」が明治学院の淵源です。建学の精神「キリスト教による人格教育」のもと、ヘボン博士の生涯を貫く信念である“Do for Others(他者への貢献)”を教育理念として、時代を切り拓く人々を育ててきました。明治学院大学は国際交流、ボランティア、キャリア教育など、さまざまな取り組みにも力を入れ、これからも社会への貢献をめざします。


未来を作るのは今の自分。学びと好奇心と出会いのトビラを開けば、新しい自分が目ざめます。

明治学院大学 「明学の理由。」動画へ

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