猫と暮らすニューヨーク

ハリケーンがもたらした、おちゃめなペルシャ猫との日々

  • 文・仁平綾、写真・山田真実
  • 2017年12月4日

レイチェルさんとニックさんが主宰するカリコ・ウォールペーパーの壁紙が各部屋に貼られ、まるでショールームのような自宅。こちらはWABIというシリーズの壁紙が印象的なリビング

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Irie(アイリー)メス 6歳 三毛柄のペルシャ猫
飼い主・ブルックリン発の壁紙ブランドCalico Wallpaper(カリコ・ウォールペーパー)のオーナーである、Rachel(レイチェル)さんとNick(ニック)さん夫妻。長女のWillow(ウィロウ)ちゃん、次男のRiver(リバー)くんと、レッドフックのロフトアパートメントに在住。

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 2011年8月28日、暴風雨を伴うハリケーン、アイリーンがNYの街に上陸。
 24時間運行の地下鉄も、バスも完全にストップ。学校は休校、会社も休み。「当時、病院で働いていたレイチェルの仕事もオフになって、だったら動物の保護施設やペットショップでも見て回ろうか、なんて二人でぶらぶらすることにしたんだ」とは、夫のニックさん。
 ハリケーンは予想していたほどひどくなく、かといって、特別することもない。ふとした思いつきで、かわいい動物たちでも愛でにいこうかと出かけた二人が、とある店で出会ったのが、ふわふわの三毛柄ヘアをまとった、小さなペルシャ猫だった。
 「一瞬で恋に落ちてしまった」という二人は、その子猫を自宅に連れ帰り、ハリケーンにちなんでアイリーと名付けたのだった。

 アイリーは、白、グレー、黒、プラスところどころにベージュのヘアがミックスされた、三毛柄というよりは四毛柄のボディー。むくむくの毛に脚先まですっぽり覆われ、黒がメインのぺちゃんこ顔には、オレンジ色の目が輝く。
 取材したこの日は夏場だったため、ライオンカットを施されていたアイリー。尻尾は毛先だけがふさふさ、頰はまあるくカットされ、輪をかけておちゃめな姿に。
 映画「スターウォーズ」のどこかで見かけたような……、あるいは「グレムリン」を彷彿(ほうふつ)とさせるような……。「まるでキャラクターみたいでしょう」とレイチェルさん。
 「ひと目見ると、みんなすっかり虜になってしまうんだよ」とはニックさん。「そりゃあそうでしょう」と一同、何度もうなずいてしまうほどの、愛くるしい存在感。

 昼夜問わず夢中になるのは、キャットニップ(またたびに似た効果を持つ、猫用ハーブ)入りの鳥のおもちゃ。夜は、リビングルームのソファでくつろぐ家族に、くしゃっと体を寄り沿わせ、優しくなでられるのを喜びとする。
 そんな無邪気なアイリーが、あるとき、まるでデビルのように豹変(ひょうへん)してしまったことがあるという。
 「家中を走り回る。物を落とす。わざと音をたてる。それはもう、ひどかったんだ。いつも夜はベッドで一緒に寝ていたのに、ベッドにも来なくなってしまった」とニックさん。

 いたずらの度を超えた、問題行動。さて、困った。娘のウィロウちゃんが家族に加わり、生活環境の変化が影響したのかもしれない。原因は定かではないけれど、「どうやらストレス性の行動らしい」、そう考えたレイチェルさんとニックさん。
 猫の不安や、ストレスに起因する行動を和らげる効果があるというサプリメントを試したり、猫用のフェロモンを発するディフューザー(香りを噴出させる器具)を部屋に設置したりして、なんとかアイリーとの元通りの生活を取り戻したのだという。
 「おかげで問題行動はなくなって、夜も一緒にベッドで寝るようになったんだよ。ディフューザーの効果で、家具を引っかくこともなくなって、以前より良くなったぐらいだよ」(ニックさん)。

 ところで、アイリーと出会うきっかけになったハリケーンの翌年に、今度はさらに大型のハリケーン、サンディがニューヨークを直撃。レイチェルさんとニックさんが暮らすレッドフックには水があふれ、アパートメントの建物にも浸水、一家は自宅に閉じこめられてしまったという。
 それでも悲観的にならず、「時間を有意義に使おう」と考えた2人は、壁紙を作ることを思いつき、ひたすら試作を繰り返した。そこから生まれたのが、彼らの壁紙ブランドというわけだ。
 ブランド名は、三毛猫という意味のCaliko(カリコ)。アイリーは、カリコの壁紙を施した自宅の写真や、インスタグラムのポストにたびたび登場し、今やファンの間ではすっかり知られた看板猫となった。

 猫との出会いもブランドのきっかけも、ハリケーンの日という不思議な巡り合わせの一家。再びハリケーンの悲劇が起こらないことを願いつつ、でも、もしも、ハリケーンがまたやってきたその時は、「新しい何かが、起きるのかもしれないね」。レイチェルさんとニックさんは、そう言って肩をすくめるのだった。

>>つづきはこちら

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連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

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カリコ・ウォールペーパーのホームページ http://www.calicowallpaper.com

カリコ・ウォールペーパーのインスタグラム https://www.instagram.com/calicowallpaper

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PROFILE

仁平綾(にへい・あや)編集者・ライター

仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.ayanihei.com
http://www.bestofbrooklynbook.com
photo by Naoko Maeda

山田真実(やまだ・まみ)写真家

山田真実

鳥取市生まれ、大阪芸術大学写真学科卒業、現在はアメリカ在住のフォトグラファー。渡米前は10年以上に渡り、株式会社文藝春秋の写真部にて、女性誌の撮影から、アーティストのポートレート、スポーツ取材まで幅広く担当。ドキュメンタリーな視点を大切にしながら、現在も雑誌、書籍、Webなどで活躍中。
http://www.mamiyamada.jp/

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