50㎡台までのコンパクト暮らし

38平米でも広く見える、インテリアの工夫

  • 文・大橋史子(ペンギン企画室) 写真・井上佐由紀
  • 2018年1月9日

コンパクトな柿崎こうこさんのお宅。扉があり、ベッドスペースを仕切ると1LDKになります

 家は広いほうがいいと、今までは思われてきました。でも、最近は、あえてコンパクトな家を選ぶ人が増えてきました。その理由を聞いてみると、便利な都心に住みたい、住宅ローンや家賃を抑えて生活を楽しみたい、隅々まで目が行き届くところがいいなど、自分らしいライフスタイルを送っている人が多いようです。

 そこで、50m2台までのコンパクトな都心のお宅で暮らす人たちを取材しました。スペースが狭いからこその工夫は、だれにでも役に立ちます。そして、ものとのつき合い方、優先順位のつけ方、働き方など、新しいライフスタイルは今後の参考にもなりそうです。

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[柿崎邸]
柿崎こうこさん(イラストレーター)
東京都世田谷区/一人暮らし/1LDK 38m2

 まず、1回目はのんびりした雰囲気が漂う世田谷線沿線に住む、イラストレーターの柿崎こうこさんです。本や雑誌、広告、webなどで活躍し、明るくおしゃれなイラストが人気です。世田谷線沿線の雰囲気が好きで、家を探し始めましたが、なかなかこれぞというものに出合えませんでした。1カ月ほどお休みしてクールダウン。その後、再び探し始めて、今の家に巡り合えました。

柿崎さんはイラストレーター。コンパクトながらお仕事スペースも確保。背の高いグリーンは、スッキリした枝ぶりのものをセレクトしました

「仕事は家でしているので、本当はもう少し広いほうがいいなと思っていました。でも、この家を見に来たときに一目ぼれ。広さ以外の要件、場所、間取り、部屋の雰囲気、家賃などほとんど理想通りでした。持っているものを減らしてもいいから、ここに住みたいと思いました」と柿崎さん。大きな窓がある明るい室内。窓からの風景も、高い建物がなく広々としていました。狭さはある程度、我慢できると考えたそうです。

「引っ越す前に、間取り図にどの家具をどこに置くのかシミュレーション。サイズが合わない家具、入りきらない洋服や本などは処分して、ものは減らしました」

  

コンパクトな部屋でのグリーンの飾り方の工夫です。棚の上から垂らしたり、天井からつるしたりして省スペースに

 この部屋に来るまでの5年間、3回ほど引っ越しをしました。引っ越しスタートは、離婚が決まり一人暮らしを始めたことから。その後、紆余(うよ)曲折を経てこの部屋に住んでから3年がたちました。ものが増やせない、コンパクトな暮らしが、むしろすがすがしく感じるようになりました。

「部屋の中の、全てのものがお気に入りです。なんとなく持っているものがなくなりました。実は、もっとものを減らしたいなと感じています。身軽になることが、気持ちが良くなってきました」

 理想の住まいに出合って始めた新しい暮らし。気持ちにも新しい風が吹いてきました。

コンパクトながら、カウンターのあるキッチン。カウンターの下には小さめのチェストを配置しました。白い飾り棚は、ずっと以前に友人に譲ってもらった医療用です

 実際に、部屋はコンパクトなのですが、狭く見えないのは、家具の配置とサイズに工夫があるようです。引っ越し前にシミュレーションした間取り図を、引っ越し屋さんに渡して家具を配置してもらった、と柿崎さん。背の高い本棚は視界に入りにくい奥のスペースに、キッチンのカウンターの下のスペースには、奥行きがピッタリの背が低いチェストを置きました。古い食器を並べる飾り棚は、脚付きでガラスの扉のせいか、圧迫感がありません。どれもそこに元々あったように、ピッタリはまっています。

 持っていた家具をできるだけ生かしましたが、食事用のテーブルは購入。前に使っていた丸いテーブルは、この部屋には大きすぎたので、近所のリサイクルショップに売りました。代わりに、ネットオークションで、2万円ほどで落札。サイズが60cm四方で高さ70cmとコンパクトだったのと、脚がかわいいのが気に入ったそうです。

高さのある本棚は、視界に入りにくいコーナーに置くと圧迫感がありません。 ここからはみ出した本は、ネットで見つけた古本募金をしています

ネットオークションで落札したテーブル。イギリスのアンティークのイスとも相性がピッタリです

 ものは増やしたくないけれど、古い器は気に入ったものを少しずつ集めています。でも、増えすぎないように収納場所は決めています。キッチンには食器棚がないので、つり戸棚に日常使いのものを収納。リビングの飾り棚には、今、眺めていたい好きな器をインテリアとして飾ってしまっています。決めた場所からはみ出さないよう、気をつけているのです。

 ときどき、友人や仕事仲間と持ち寄りご飯会を開催しています。スペースが狭いのに人を呼ぶなんて……と躊躇(ちゅうちょ)しがちですが、5~6人なら問題なく楽しめるそう。

 テーブルも小さいし、イスもバラバラ、そんなラフな会です。ホームパーティというよりも、家居酒屋というほうがしっくりくると柿崎さん。お気に入りの古い器に、牛すじ煮込み、ひよこ豆のフムスなど少し手間がかかる料理を作って、盛りつけます。

 スペースが狭いと諦めることが多いと考えがちですが、そんなことはありません。ものとのつき合い方や収納の仕方など、暮らしを見直すきっかけになります。工夫することが楽しくなり、それが人生を豊かにしていくのだと思いました。

リビングの飾り棚に、古い器を収納しながら、眺めて楽しんでいます

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■柿崎こうこさんのHP
https://www.kakizakikoko.com/

■柿崎こうこさんのインスタグラム
kakizaki_koko_illustration(イラスト)
kakizaki_koko(古いものや器、金継etc…)

>>写真をじっくり見る

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BOOK

『55m2までの心地よい コンパクト暮らし』

『55m2までの心地よい コンパクト暮らし』
(朝日新聞出版) 大橋史子 著

2018年4月6日、本連載が朝日新聞出版から書籍化されました! 本連載には出ていないお部屋を含めて大幅加筆、都市部に暮らし、55㎡までの「狭い家」を選んで、毎日を快適に楽しく暮らす人たちのインテリア・収納実例集。好きなモノをあきらめない人、グリーンがすてきな部屋、快適なリノベーション術などコンパクト暮らしの工夫が満載です。
詳しくはこちらへ
税込1296円

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PROFILE

大橋史子(ペンギン企画室)(おおはし・ふみこ)編集者・ライター

家事、料理、収納、インテリアなど暮らし周りを中心に、雑誌、本、webなどで活動中。人の人生や物語を聞くのが好き。
ペンギン企画室「40’s style」http://40s-style-magazine.com

井上佐由紀(いのうえ・さゆき)写真家

写真

1974年福岡県柳川市出身。東京都在住。写真家。九州産業大学芸術学部卒業。写真スタジオ、アシスタントを経て独立。現在はライフワークとして生まれたばかりの赤子の目を撮影しています。うどんとコーヒーがすき。
コレクション:フランス国立図書館、サンフランシスコ近代美術館
http://donko.inouesayuki.com/
http://inouesayuki.com/

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