朝日新聞ファッションニュース

創作への真摯な姿、銀幕に ドリス・ヴァン・ノッテンとマノロ・ブラニク

  • 2018年1月11日

 世界的なデザイナーであるドリス・ヴァン・ノッテンとマノロ・ブラニクを追ったドキュメンタリー映画2本が完成した。服と靴。創作の対象は違うものの、ものづくりへのこだわりは共通していることがわかる。

服と暮らし、行き届く完璧主義

デザイナーのドリス・ヴァン・ノッテン(右)(C)2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

 「ファッションはむなしい言葉だ。私は時代を超えたタイムレスな服を目指している」。「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」では職人気質のヴァン・ノッテンの公私にカメラが密着した。

 1958年生まれのデザイナーは、広大な庭があるベルギーの邸宅にパートナーの男性と暮らす。私邸はムービー初公開。庭の花を愛し完璧な料理を作る生活は静けさに包まれている。

 一方、仕事場は慌ただしい。2016年のショーに向けて、デザインや生地の選択で微調整を繰り返す。しかめ面で細部にこだわる姿に浮薄な要素は無い。「布と色が私の世界を作ってくれる」と、ブランドの服作りを支えるインドの刺繍(ししゅう)工房も見せる。

 86年のロンドン・ファッションウィークでメンズのショーに初参加。94年のレディースのショーなどで絶賛され、商業的にも成功した。巨大資本傘下に入らない独立系ブランドとして、現在は世界17都市の400軒以上の店で扱われている。広告はせず、小物やアクセサリーではなく服で勝負する。完璧主義は、ミシェル・オバマ前米大統領夫人らにも支持された。

 2000年代初めは、不幸な出来事が続く冬の時代だったが、近年息を吹き返した。「クラシックな服を常に意識している。仕立ての高度な技術、ため息の出るようなシェイプ。そのクオリティーを(先人から)受け継ぎたい」。デザイナーの挑戦と栄光とを象徴する、これまでのショーの数々にも注目だ。

 1月13日からヒューマントラストシネマ有楽町ほかで順次公開。(木村尚貴)

華やかな靴の陰、自ら削る木型

マノロ・ブラニク(C)HEELS ON FIRE LTD 2017

 女性があこがれる高級靴のデザイナーを取り上げたドキュメンタリーが「マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年」。子どものころはチョコレートの包み紙でトカゲの靴を作り、こづかいをファッション雑誌につぎ込んでいたというブラニク。彼の靴を愛用する有名ファッション誌の編集長やモデル、デザイナーなどへのインタビューを織り交ぜながら、人となりや創作の源にせまる。

 ブラニクは、アフリカ大陸の北西沖、スペイン領カナリア諸島生まれの75歳。独学で靴作りを学び、1972年にロンドンに初めての店を出した。

 美しいシルエットを描くハイヒールは、世界で大ヒットした米国発の人気ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」の主人公が愛用していたことで、一躍有名になった。

繊細な装飾が施されたマノロ・ブラニクの靴(C)HEELS ON FIRE LTD 2017

 劇中のブラニクは、洗練された一見派手にも見えるスーツを着て、セレブリティーと楽しそうに語らう。一方で、イギリスの古都でひとり静かに暮らし、人生の喜びはイタリアの工房で過ごす時間にあると話す。華やかで、孤独。対照的な要素をあわせ持つ生き方を、カメラは映し出している。

 工房で職人に交ざって木型を削る姿からは、都会的でスタイリッシュな靴を生み出すデザイナーが、ものづくりに真摯(しんし)に向き合っていることがわかる。

 新宿ピカデリーほかで公開中。(長谷川陽子)

陽気と真面目、性格も浮き彫り

 京都服飾文化研究財団理事・名誉キュレーターの深井晃子さんの話
 安くてそれなりの服や靴がどんどん出てくる中、ものづくりは楽しいんだよ、すてきだよ、というデザイナーの思いが伝わる2本の映画だ。自然が作り出した美しいものをたくさん見て、そこからインスピレーションを得て形にするというそれぞれの制作過程も描かれ、興味深かった。

 陽気なマノロと真面目なドリスという2人の性格も浮き彫りになっている。ドリスは、一時スランプになるが、それを乗り越えて本来の持ち味を出すようになった。マノロの靴は魔法のかかったシンデレラの靴のよう。一度履いてみたくなる特殊なオブジェだ。

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