相棒と私

ミムラさん、「同じタイプとチームを組むと楽だねぇ」お互いの感謝の反射

  • 文・ミムラ
  • 2018年1月30日

ミムラさん

 友だちとも、恋人とも違う、同じ目的を共有する「相棒」とはどんな存在?
「私と“相棒”との大切なエピソード」をうかがう連載、今回は女優であり、書評やエッセーなどでも活躍するミムラさんが登場。ご本人に執筆いただきました。

   ◇

私:ミムラ(女優)
相棒:夫

 相棒というと、一番は人生の伴侶たる夫だ。当たり前のことすぎて、ツマラナイ回答に聞こえるかもしれない。しかし学校や会社などでほかの人とチームを組んだことのある人、それでうまくいかなかった経験のある人には、この貴重性もわかっていただけるのではないだろうか。

 そして、何より「私がやるよ」「いやいや僕が」を、延々と続けられる人が居ることに驚いた。言葉だけではなく行動で、相手のために動くことを厭(いと)わない。自分が多忙だろうが、体調が少し優れなかろうが、気がつくと常に私の負担を減らそうと行動してくれている。
 お互いの実感としては、「同じタイプとチームを組むと楽だねぇ」ということだ。

 これまでは生活面でも仕事面でも「こちらがやるよ」「えー、悪いなぁ、じゃあお願いするね」「はーい」という感じで、自分が引き受けることが多かった。

 そうこうするうち、やっていけばどんな仕事・家事・雑用でもスキルが上がっていくので、負担ではなくなる。軽くこなしていく自分を尻目に、相手は「悪いね」も言わなくなり、「こちらがやる」一択になっていく。

 それで体調不良やその他のやむを得ない事情で休んだ時に、「なんでやっていないの!」と怒られ、「こんなことで怒られるなら全部1人でやったほうが良いな」と、ついに決別するのだ。
 去りゆく背中に、さらなる心ない言葉を投げてくる人も居る。急に足元に縋(すが)ってくる人も居る。相手の思うところも色々あるだろうが……。

 こんなことが多かった者同士なので、相手からやってもらうことに破格の喜びを感じるのだ。

「えー! 洗濯物、畳んでおいてくれたの?」「ボタンがついてる、ありがとう!」「あ、〇〇さんへお礼の品? 助かる〜」などなど。

 こうして並べるといい歳をして“新婚さんごっこ”のようでお恥ずかしいが、これが結婚5年目に入りまだ続いている。お互いの感謝の反射で、何の苦もなく物事が進むので、本当に楽だ。

理科の先生と理科大好きの生徒という感じの私たち

 そうはいっても実は「同じタイプ」だけでなく、まったく逆の部分もある。

 私は美術・文系であり、役者という技術職……と言いたいが、多くの部分が水物の商売だ。絶えず勉強も必要だが、娯楽と切っても切れない職業である。対して夫はばりばりの理系職で、人の命に関わるシビアな現場を歴任した人だ。

 夫曰(いわ)く、私には理系の話がすんなり通じるので「理系の頭もあるよ」とのこと。確かに、高校へは美術の推薦で入ったが勉強は苦手でない(模試でもずっと志望校A3判定)。しかし夫を見ていると、どうしても具体的に社会のためになる理系知識に憧れる。持て余す悩みも夫の手にかかるとあっという間にプチサイズになり、なんならチャンスに転じることも可能。感謝しつつ、自分でももう少し効率のよい思考ができるよう自己トレーニング中だ。

 夫は夫で、“人の心の機微の表現”という科学では計れないジャンルである私の仕事を、とても応援してくれている。「医療で体は健康に出来て、心の安定もある程度は与えられたとしても、楽しさや心の元気さは、やはりエンターテインメントに敵(かな)うものなしだよ」という。

 少し落ち込んだ日や、無力感に苛(さいな)まれた日は、夫からの言葉を聞いて気力を出す。「医療や科学で追いつけない部分でも、芝居なら救えるかもしれない」と自分の仕事の大義を掲げ直すことができる。

 夏に2人で行った渓流釣りの合間、こんなことがあった。

 「旦那さん見て!」と泥にまみれたライターサイズのものを掌に乗せ、草むらをかき分け見せに行く私。ちょっと目を細めた後「お〜、オニヤンマのヤゴの抜け殻! レアだよ〜やったね!」と、生態解説含め称賛してくれる夫。理科の先生と理科大好きの生徒というこの感じが、いつもの私たちである。

 帰り支度の最中、「ねぇ、これなら抜け殻を潰さず持って帰れるんじゃない?」と笑顔で空の菓子箱を差し出してくれる夫。性格的に同じタイプであり、まったく逆の属性も持つ、最強の相棒である。

  ◇

ミムラ
埼玉県出身。2003年「ビギナー」(CX)の主演でデビューを果たし、TVドラマ・映画・舞台・CMなど幅広く活躍を続けている。近年の主な出演作は「5人のジュンコ」(WOWOW)、「トットてれび」(NHK)、「そして、誰もいなくなった」(NTV)、「ソースさんの恋」(NHKBSプレミアム)、映画「後妻業の女」(東宝)、「彼らが本気で編むときは、」(スールキートス)、舞台「人間風車」(PARCO&CUBE)など多数。執筆活動も行い『ミムラの絵本日和』(白泉社)、『文集』(SDP)などを出版。現在も、『日経プラスワン』(日本経済新聞 )で「なやみのとびら」、『週刊エコノミスト』(毎日新聞出版)で「読書日記」、『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)で「読み逃し厳禁 発見!角川」を連載中。

ミムラさんからのお知らせ

BS時代劇「大岡越前4」ミムラさん

テレビ出演情報
BS時代劇「大岡越前4」※雪絵役
NHK BSプレミアム 毎週金曜20時~放送
HP:http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/oooka4/

 義をもって罪を罰し、情をもって人を裁く。長きにわたってTBS系で放送されていた時代劇の名作シリーズ。2013年より東山紀之さんが大岡越前守忠相を演じ、人情と理性を兼ね備えた名裁きと、笑いと涙、そして爽やかな感動をよびました。 シリーズ4作目は、名裁きをかげで支える大岡ファミリーの温もりあふれる家族愛にもスポットを当て、普段は冷静沈着な大岡忠相の、ほっとする意外な魅力を描いています。
【その他の出演】
NHK大河ドラマ「西郷どん」※大久保満寿役
(NHK総合 毎週日曜20:00~)
第41回創作テレビドラマ大賞「デッドフレイ~青い殺意~」
(NHK総合 3/23(金)22:00~22:48)



ふたり芝居「家族熱」(左)ミムラさん(右)溝端淳平さん

舞台
ふたり芝居「家族熱」※朋子役

 向田邦子さんの脚本で1978年に放送された連続ドラマ「家族熱」。今作では設定を3年後に移して2人芝居で上演します。
日程&劇場:
【東京公演】2018年5月29日(火)~6月5日(火)
 東京芸術劇場 シアターウエスト
【茨城公演】2018年6月9日(土)
 水戸芸術館ACM劇場
【大阪公演】2018年6月11日(月)
 近鉄アート館
【兵庫公演】2018年6月12日(火)
 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

出演:ミムラ、溝端淳平
原作:向田邦子
企画・台本・演出:合津直枝
(敬称略)

HP:http://www.tvu.co.jp/product/stage2018/


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