ほんやのほん

衰退した都市を、創造的にリノベした8例。『CREATIVE LOCAL』

  • 文・嵯峨山瑛
  • 2018年1月22日

撮影/馬場磨貴

  • 『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』馬場正尊、中江 研、加藤 優一 著・編集ほか 学芸出版社 2376円(税込み)

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 当店で取り扱っている「住」関連の本の中には、「住まい」「建築」「グリーン」などのジャンルがありますが、もう一つユニークな名称のジャンルに「都市・コミュニティ」というジャンルが存在します。

 「都市・コミュニティ」の棚では、都市計画やコミュニティデザインはもとより、江戸・東京がどのような成り立ちで出来上がったのか、というような本も取り扱っています。自分の住む部屋をよくしたいと思うように、自分の住む場所や都市のことを考えてもらいたいと思いながら棚をつくっています。

 今回は、その棚で長く売っていきたいと考えている『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』(学芸出版社)をご紹介します。

衰退をポジティブにとらえ
新たなスタイルを生み出す

 日本は、世界の中でも比較的早く人口減少社会の時代を迎えています。これから先、空洞化の進む地方都市をどうするか、都心においても高齢化の進む場所をどうするかなど、オリンピック後の社会の作り方に関する議論がにぎわっています。

 そんな、世界に先駆けて問題に突入しそうな日本よりも先に、このような問題に取り組んできた都市があります。それは、産業が破たんしたデトロイトや、社会構造の変化で人口が大量に流出した東ドイツの都市など、何らかの衰退を経験してきた都市です。彼らがそのような衰退から創造的に再生した地域を「CREATIVE LOCAL」と名付け、その魅力的な風景がどのように生まれ、成長しているのか、抱えている問題点まで含めて生の現場の声を伝えているのが本書です。

 彼らがそのような衰退をどう乗り越えてきたか。本書を読むと、彼らが衰退をある種ポジティブに捉え、オルタナティブな価値観やライフスタイルを生み出していることがわかります。

 簡単に例をあげてみれば、旧東ドイツでは、ベルリンの壁崩壊後、人口が急激に流出し、都市中心部は空き家だらけになってしまいました。そのようなエリアが現在は、アーティストたちによる魅力的なアトリエや劇場に変わっています。また、イタリアの街全体をホテルにする新しい観光の試みや、2015年英国のターナー賞を受賞したアッセンブルがとったコミュニティと地域を再生する方法など8つの魅力的な現場が紹介されています。

 先日、本書の刊行を記念して当店で著者のトークイベントを開催しました。
 チリのソーシャルハウジングに取り組む、アレハンドロ・アラヴェナ率いるエレメンタルに勤務し、取材を行ったツバメアーキテクツの山道さんは、
 「都市から離れ、郊外に行くにつれてビルディングタイプ(建物のタイプ)と人間のタイプが似てくる。そういった場所だからこそ、一番おもしろく、建築に取り組んでいきたい」
 と語られていました。世界の裏側の活動が、日本にも伝播(でんぱ)しているようで頼もしく思いました。

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PROFILE

嵯峨山瑛(さがやま・あきら)

写真

二子玉川 蔦屋家電、建築・インテリアコンシェルジュ。
大学建築学科卒業後、大学院修了。専門は都市計画・まちづくり。
大学院在学中にベルギー・ドイツに留学し建築設計を学ぶ。
卒業後は、出版社やリノベーション事務所にて、編集・不動産・建築などの多岐の業務に関わる。
>>二子玉川蔦屋家電 ホームページはこちら

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