猫と暮らすニューヨーク

デザイナー夫婦と犬&猫。19年過ごした猫はベストフレンド

  • 文・仁平綾、写真・前田直子
  • 2018年2月5日

センスよく設えられた部屋は、さすがデザイナーの二人。街で拾ったラグ、ケリーさんのお父さんがDIYしたコーヒーテーブル、ヴィンテージのもらいものなどを上手に利用&ディスプレイしています

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Cricket(クリケット)19歳 メス 三毛トラ
飼い主・Kelly Thorn(ケリー・ソーン)さんとSpencer Charles(スペンサー・チャールズ)さん夫婦。ケリーさんはイラストを、スペンサーさんはタイポグラフィを得意とする共にデザイナーで、ブルックリンにて猫のクリケットと、1歳になるメス犬のMoonie(ムーニー)と暮らす。

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 「よく跳びはねる子猫だったから、バッタって名付けようと思ったんだけど、私もまだ子どもだったから勘違いしてcricket(コオロギの意味)って名前にしちゃった。でもかわいいから、まあいいかって」。猫のクリケットをなでながら、そう話すのは、もう19年来の飼い主であるケリーさん。

 出会いはケリーさんが9歳のとき。旅行にでかける友人家族の飼い猫(母猫と数匹の子猫)の面倒を、母親とみることになった。なかでも「一番オレンジ色が濃くて、スイートな子猫だった」という当時のクリケットに、母娘でひと目ぼれ。猫のお世話と交換に、友人家族から譲り受けたという。

 「歯磨き中は、そばでずっと待ってるし、夜は私の頭の上で寝る。私は3姉妹の末っ子なんだけど、クリケットは3人のなかで、私のことが一番好きだった」とケリーさん。いつしか強い絆で結ばれたケリーさんとクリケット。「大学に通うため実家を出て暮らしたけど、クリケットなしの生活なんてありえなかった。お願い、クリケットと一緒にいさせて。そう両親に頼んで、しぶしぶ認めてもらった」という。

 再び一緒に暮らせることを喜んだのもつかの間、クリケットに受難の日々が訪れる……。
 ケリーさんがフィラデルフィアでルームメイト8人と暮らしていた頃、そのうちの一人がキングという名の大きなオス猫を飼っていた。その後、ケリーさんがブルックリンに引っ越すと、今度は別のルームメイトが、チャーリーという名の、やはりオス猫を飼っていた。

 「どのオス猫も、クリケットを追いかけまわすし、ケンカはふっかけるしで、いじめてばかり」とケリーさん。哀れなクリケットは、ストレスからかケリーさんのベッドの上でおしっこをするように。「床に財布を置き忘れると、その上にも必ずしちゃう。だから掛け布団も財布も、1年で10個はダメにしたかも…」(ケリーさん)。

 幸いにも、ケリーさんの夫となったスペンサーさんは、飼い猫がおらず、ようやくクリケットはオス猫から解放され、“家で唯一の猫”の座を奪還、オシッコ問題もすんなり解決したという。

 さて、そんなクリケットの安穏とした日々に変化が訪れたのは、約10カ月前のこと。犬のムーニーが家族に加わったのだ。
 犬猫の譲渡情報を発信するウェブサイトで、ケリーさんがたまたま見かけた保護犬は、くしゃくしゃの白い毛で覆われた、モップみたいな風貌(ふうぼう)。韓国で食肉用として育てられていたところ、保護団体に助けられアメリカに渡った犬だった。
 NYでちょうど譲渡イベントがあることを知り、ケリーさんとスペンサーさんは、ただその犬に会いたい一心でイベントに足を運んだ。あまりにも無力な、その犬を抱き上げた瞬間、「なんておとなしくて、優しい犬なんだろう」(ケリーさん)、「いとおしくて胸が張り裂けそうになった」(スペンサーさん)。

 というわけで、二人は犬を譲り受けることに。猫のクリケットとはトラブルもなく、心配していたおしっこ問題も再発せず、今のところそれぞれのペースで平和に暮らしているという。

 ケリーさんいわく、「子猫のころからずっと変わらない、彼女は私のベストフレンド」というクリケットは、間もなく20歳を迎えるおばあちゃん猫。体の不調も増え、寝ている時間は長くなり、子猫のときのように跳びはねることも、もうない。

 「このまま永遠に一緒にいることはできない。そんなことは、わかってる。でも、いざそのときの心の準備なんて、まだとてもできるわけがない」

 こんなにも猫が長生きする秘訣(ひけつ)ってなんだと思う? そんな質問に、ケリーさんは朗らかにこう言った。「もちろん、私! 飼い主から、たっぷり愛されること。それしかないと思う」。

 どうか、クリケットとケリーさんが共に過ごせる時間が、少しでも長くありますように……。仲むつまじく顔を近づけ、ケリーさんのおでこに何度も何度も顔をすり寄せるクリケットを見ていたら、そんなふうに願わずにはいられないのでした。

>>つづきはこちら

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クリケットとムーニーのインスタグラム https://www.instagram.com/cricketandmoonie

夫妻のデザインスタジオのインスタグラム https://www.instagram.com/charlesandthorn

ケリーさんのインスタグラム https://www.instagram.com/jellythorn

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連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

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PROFILE

仁平綾(にへい・あや)編集者・ライター

仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.ayanihei.com
http://www.bestofbrooklynbook.com
photo by Naoko Maeda

前田直子(まえだ・なおこ)写真家

前田直子

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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