川島蓉子のひとむすび

<35>震災を経て、広尾から青山へ。桐島かれんさんの「ハウス オブ ロータス」(後編)

  • 文・川島蓉子 写真・鈴木愛子
  • 2018年2月7日

カラフルな刺繍が施されたキッチュな雑貨類

>>ハウス オブ ロータス 前編からつづく

 前回は、表参道の交差点近くにオープンした「ハウス オブ ロータス青山店」をご紹介しました。「Happiness of Life」をテーマに、クリエイティブディレクターを務める桐島かれんさんが、“好きなものに囲まれて暮らす幸せ”を提案しているブランド。服から雑貨まで、暮らしを取り巻くものがぎっしり詰まっています。お店は他に、二子玉川のショッピングセンターの中にあるのですが、青山店はブランドの世界観を建物全体で表現しています。

 今回は、桐島さんがどうやってビジネスをここまで切りひらいてきたのか、これからをどう見ているのかについて、つづりたいと思います。

大好きなチャーム

 「ハウス オブ ロータス」で気に入ったもののひとつに、カラフルな極細の毛糸を300本くらい束ね、房状にしたチャームがあります。楽しい色使いと温かそうな質感にひかれて買いました。トートバッグに付けているのですが、チャーミングなアクセントになり、歩く度に揺れる房が、心地よい気分を醸し出してくれます。異国の良さを残しながら、モダンさやおしゃれ感が加わることで、日常使いできる一品になっています。

ニューヨークからのペーパーフラワーアート

 その他、ベトナムのプラスチックのカゴバッグや、同じくベトナムのビーズ刺繍(ししゅう)が付いたスリッパは、カジュアルな素材と手仕事の組み合わせが魅力的だし、ニューヨークから届いたペーパーフラワーアートは、咲きこぼれそうなあでやかな風情――こうやって並んでいる品々は、桐島さんがさまざまな国で出会った中で、魅力を伝えたいと感じたものなのです。そのまま持ってきたり、少しアレンジしたり、新たにデザインしたりと、いくつかのパターンがありますが、いずれも桐島さんの「Happiness of Life」というフィルターを通しているので、ぎゅっとしたまとまり感があるのです。

 しかも、お店の人たちが、それぞれの商品のルーツについて、押しつけがましくなく説明してくれるのもいいところ。「このカゴは、市場に山のように積まれていて、現地の人が買い物カゴとして使っているのです」など、お国柄に触れたエピソードを聞くと、商品の奥に異国の風景が広がり、ネットでなくリアル店舗で買い物する意味は、こんなやりとりにあるのだと感じます。

2階は主に洋服がずらり。幅広いラインナップです

 「ハウス オブ ロータス」のルーツは2002年、自宅として住んでいた麻布の洋館を使い、アジアを中心にさまざまな国で買ってきた家具や雑貨を売ったところからのスタートでした。「素人ながら始めたのは、美しいものが好きで伝えたいと思ったこと。家で子育てという日常から少し離れたかったところもあったのかもしれません」という話に、潔さとかっこ良さを感じました。

 アジアをはじめとする外国の地へ、子連れで買い付けに行ったこともあったとか。大変だったろうと想像する一方で、外国の空気を吸いながら、商品を買い付ける喜びやうれしさは大きかったに違いないと、自分の子育て期を振り返って想像します。

 宣伝もせずサロンのように始めたショップでしたが、クチコミなどで評判をよんで固定客もついてきました。が、東日本大震災後、もろもろの事情があってやめることに――。

 ところがある日、伊勢丹新宿店から「ポップアップショップをやってみませんか」と声がかかったのです。桐島さんは「多くの人に見てもらえる良い機会」ととらえ、引き受けたところ大成功。定期的に開催するようになりました。

 桐島さんも、幅広いお客さんと接する機会を得て、「買ってくださる人にもっと喜んでいただけるように、選ぶものや付ける価格を考えるようになりました」。ビジネス的な視点を養いながら、ブランドとして成長していったのです。とともに、雑貨や家具で始めた領域を服へと広げ、アジアの作り手と連携して、「ハウス オブ ロータス」オリジナル商品を作るようになりました。

 「服作りについて素人だったのですが、服が大好きでファッションデザインを学んだ経験もあり、工場の人と話し合って作っていきました」

オリジナルに加え、桐島さんが欧米で買い付けてきたものも

 服やオリジナル商品にファンが付き、ポップアップショップも伊勢丹新宿店だけでなく、阪急梅田店をはじめ、各地で広がり始めました。それで2013年、改めて広尾に路面店を構えたのです。「期間限定でなく、いつもお店に行けば買える」と喜んだファンは多く、地方からわざわざ訪れる人もいました。

 お店は好調、桐島さんが手がける服も人気と順風満帆に見えましたが、常設店を持つことは、予想以上にエネルギーを要することでもありました。やるべき仕事が物理的に増えていく中で、「モノ作りの精度を高め、クオリティを良くしていくには、やはりプロに入ってもらうことが必要」と感じるようになったのです。

豊かな色の波は、身にまとったら楽しくなりそうです

 そんな折、「ロンハーマン」「アフタヌーンティー」「カナダグース」をはじめ、数々のブランドを手がけているサザビーリーグとの縁ができて、2015年「株式会社ハウスオブロータス」を設立し、タッグを組むことになりました。「ハウス オブ ロータス」にとっては、服の企画・生産と品質管理など、モノ作りのノウハウを導入することができ、サザビーリーグにとっては、さまざまなかたちで行ってきた「ライフスタイル提案」の切り口を、またひとつ増やせる。新しい会社の設立を機に、服の比率を7割に広げ、モノ作りの基盤を整えたといいます。

 「ゼロから育ててきた『ハウス オブ ロータス』が、より多くの人に広まることを願ってきました。ここへ来てプロの後ろ盾を得ることにより、自分が育ててきたペースを守りながら、『大人』としてのさらなる成長を目指しての、旗艦店オープンでもあったのです。だからこそ、コロニアル風の一軒家を探し、1年かけてここと決め、内装も徹底してこだわって作りました」という言葉に、ブランドの「本店=顔」を構える強い意思を感じました。子育てを一段落し、さらなる成熟に向かう桐島さんの横顔と、「ハウス オブ ロータス」が開く新しい扉が重なって見えました。

ブランドをここまでに育てた桐島かれんさん

 ブランドは新しいステージに入ったのですが、桐島さんの思いは、当初からブレるところがまったくありません。「いずれなくなりそうなものに強い魅力を感じ、伝えたいと思って始めた『ハウス オブ ロータス』を、たくさんの人に丁寧に広めていきたい」と語る桐島さん。少しずつ増やしていく予定というショップや商品を通じ、「Happiness of Life」は着々と広まっていくに違いないと感じました。

■ハウス オブ ロータス青山店
 東京都港区南青山3-18-4 1・2F

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PROFILE

川島蓉子(かわしま・ようこ) 伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト

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伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。多摩美術大学非常勤講師。 日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。
ifs未来研究所 http://ifs-miraiken.jp

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