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<83>マンガを応援したいから、3巻までしか置きません。『トリガー』

  • 文 吉川明子 写真 山本倫子
  • 2018年2月8日

 「マンガって1カ月に1000冊以上もの新刊が出て、年間にすると約1万2000冊。全部本屋に並ぶことはなく、埋もれてしまう良作も多いんです」

 そう話すのは、渋谷にあるマンガサロン『トリガー』の発起人兼オーナーの小林琢磨さん(33)だ。同店はまだ出合っていないマンガと読み手を引き合わせる場所。2014年2月に、堀江貴文さんが代表となってインターネット上に立ち上げた書評サイト「マンガHONZ」(現・マンガ新聞)が原点で、もっと多くの出合いの場を作りたいという思いから、リアルな空間を作ろうと考えた。クラウドファンディングで支援金を集めたところ、2カ月で800万円の目標を大幅に上回る、1260万円もの資金獲得を達成した。

 「予想以上の反響でした。世の中には思っている以上にマンガ好きな人がいて、こういう場への需要があることに驚かされました」

 2015年6月にオープンした店は、渋谷駅から徒歩約5分の雑居ビルの4階にある。エレベーターが開くと、そこには3面がマンガに埋め尽くされた空間が広がっている。最大の特徴は日本最大級のタイトル数の多さで、5000作品・1万2000冊以上もある。棚を見てみると、ありとあらゆる世代や年代、時代のマンガが並んでいるのだが、なぜかどの作品も1~3巻までしかない。

 「うちはマンガ読み放題の『マンガ喫茶』ではなく、まだ知らないマンガと出合う“トリガー”、すなわち“引き金”のような場だからです。古い作品も、まだ読んだことのない人にとっては新しい作品ですから、出版時期も関係ありません」

 マンガ好きにとって、作品数が増えることで読む選択肢が広がっていくのは喜ばしいことだ。しかし、刊行点数があまりにも多くなってしまい、どれが自分にとってハマる作品なのかがわかりづらく、そもそも作品の存在を知ることすら難しくなっている。しかも、インターネット上で発表されるウェブマンガも増加しており、これらは必ずしも単行本として刊行されるとは限らない。

 だから、まずはこの場所で読んだことのない作品や、気になっていた作品を数巻読んでみて、「続きが気になる!」と思った人には、単行本や電子書籍を買って続きを読むことを勧めている。

 「面白いと思ったら買ってほしい。なぜなら、面白い作品を描く作家さんを応援し、マンガ業界を盛り上げたいからです」

 マンガ好きの中には、マンガ喫茶で全巻を読破する人もいるかもしれない。だが、本当にその作品が素晴らしいと感じたならば、単行本であれ電子書籍であれ、お金を出して買うべきだと小林さんは言う。

 「マンガに限らず、映画やアニメなども同じですが、ファンであればあるほどコンテンツにお金を払うべき。マンガが売れなくなれば出版社や作家は新しい作品を作って世に出せなくなります。つまり、まわりまわって私たちが新しいマンガ作品を読めなくなっていくんです」

 だからこそ小林さんは、客のマンガ読書遍歴や好みを聞いてその人が興味を持ちそうなマンガを紹介するコンシェルジュを常駐させ、マンガ関係のイベントも積極的に開いている。また、「読んで飲んで語りあう」というコンセプトを掲げ、客同士が好きなマンガについて飲みながら語らうことも歓迎している。

 小林さん自身も、小学生の頃からマンガを読み続け、“魂がふるえる”ような作品に数多く出合い、「大切なことは全てマンガから教わった」というほどマンガが好きだ。それだけに、今のマンガを取り巻く状況に危機感を覚えている。

 「個人的には人生に爪あとを残すような作品に惹(ひ)かれます。小説ならともかく、『マンガを読んで人生変わった』という人は少ないかもしれません。でもマンガにもそういう力があると思うんです」

■おすすめの3冊

『G戦場ヘヴンズドア』(著/日本橋ヨヲコ)
マンガを愛する高校生の鉄男と、人気マンガ家の父を憎む高校生・町蔵。正反対なタイプのふたりは運命的な出会いを果たし、やがて、合作で漫画大賞に応募することに……。「大学生の時に読んだ作品ですが、人生で一番好きな漫画! 作家さんが魂を削って書いたもので、本気でやることの大切さを教えてくれた。まさに魂がふるえる作品です」

『左ききのエレン』(原作/かっぴー、漫画/nifuni)
天才になれなかった全ての人へ――広告代理店を舞台にした、心をえぐるクリエイター群像劇。ウェブサイト「cakes」でかっぴーさんが連載していた作品が、ジャンプコミックスとして登場。「この作品には世の中が少しでもよくなる力があると思っていて、ものすごく好きな作品。ひとりでも多くの人に読んでもらいたくて自腹で100冊購入し、ツイッターで公募して希望者にプレゼントしました。第2巻も読みたいし、これからも応援していきます」

『大東京トイボックス』(著/うめ)
ゲームクリエイターを目指す元気な関西娘・モモを中心とした、熱いセリフが胸を打つ、熱血ゲーム業界物語。「ゲーム会社を舞台にした作品なのですが、仕事にかかわるすべての人に読んでほしい。これも魂をゆさぶられる力強さがあります」

    ◇

マンガサロン『トリガー』
東京都渋谷区渋谷3-15-2 コンパルビル4F
http://mangasalon.com/

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