川島蓉子のひとむすび

<39>和食の基本、さけ茶漬とごはんのコラボ~「加島屋」×「アコメヤ」

  • 文・川島蓉子 写真・鈴木愛子
  • 2018年4月11日

東京・銀座の「AKOMEYA TOKYO(アコメヤ トウキョウ)」

 銀座の大通りから一本入った閑静なロケーションに「AKOMEYA TOKYO(アコメヤ トウキョウ)」があります。ここは、全国のおいしいお米を厳選し、ごはんのお供になる食品や、ごはんまわりの生活雑貨を置いている、いわば「お米を中心としたライフスタイルショップ」。銀座本店の他に、新宿や大宮にも店を構えています。そこで3月31日と4月1日の2日間、あるコラボレーションイベントが開催されました。

手仕事で作られた、おいしそうな瓶詰の数々

 入ってすぐの冷蔵ケースの中に、「さけ茶漬」や「いくら醤油漬」をはじめ、「鮭の味噌漬」や「鮭の昆布巻」などがずらり。その横には、ごはんと一緒に試食できるコーナーがしつらえてあり、“おいしそうな空気”がいっぱい――新潟で“郷土の味”を作り続けてきた「加島屋」と「アコメヤ トウキョウ」がコラボレーションしたイベントです。店頭での特別販売に加え、奥にある「アコメヤ厨房」で特別メニューを提供しました。

加島屋の「さけ茶漬」とたたき山芋の黄身焼き

 「アコメヤ厨房」の特別メニューは、「加島屋の『さけ茶漬』とたたき山芋の黄身焼き」――「さけ茶漬」に、歯ごたえを残した山芋とだし、卵を合わせてオーブンで焼き上げたもので、一見するとグラタンのようですが、さけのうまみが卵のまろやかさと一体となって、たたき山芋と抜群の相性です。

 新潟出身の私にとって、地元の「加島屋」のさけ茶漬は、贈答品でいただく憧れの品のひとつ。甘みのあるお米とさけの塩気とうまみが、口の中で一緒になるおいしさ――「やっぱり違うね」と家族で言いながら、少しの特別感と一緒に、幼い頃から親しんできた一品です。

 今回のコラボレーションのご縁は、ひょんなことから始まりました。サザビーリーグで「アコメヤ トウキョウ」を立ち上げた新道薫さんと取材を通して知り合い、折に触れてお話しする間柄でした。一方、生まれ故郷である新潟で加島長八社長とお会いし、「ブランドをもう少し広めていきたい」とうかがったのです。
 新道さんにお会いした時、その話に触れたところ、「実は長年のファンなのです」と聞いてびっくり。「アコメヤ」の主役である「おいしいお米」と、「加島屋」の看板商品「さけ茶漬」の相性は抜群というのです。それで加島社長を紹介し、新道さんに新潟の工場と本店を訪ねてもらいました。

幼い頃からの憧れの品、加島屋の「さけ茶漬」

 「加島屋」は1855年創業で、手作りの味を届けたいという思いから、新潟の風土や食文化の中で育まれた郷土の味を作り続けてきました。

 看板商品である「さけ茶漬」は、一見するとさけフレークのように見えるのですが、極上のさけに手で塩をすり込んだものを、紙に包んで低温で1カ月じっくり熟成。それを強火の遠火でじっくり香ばしく焼き上げ、熱いうちに手で骨を抜きながらほぐしたもの――すべて手仕事で作っているのです。

 「手間ひまはかかるし効率は良くないのですが、創業来の手作りの味にこだわり続けてきました」と加島社長。熟練した手わざを持った職人さんたちが、精緻(せいち)で真面目な手仕事を重ね、愛情いっぱいで生み出された一品なのです。丁寧に作ったさけ茶漬は、香ばしい香りと脂のうまみ、ちょうどいい塩加減で、極上の味わいとなっています。

加島長八社長と新道薫さん  

 作る現場、売る現場を目の当たりにした新道さんは、「丁寧なモノ作りをされているのに加え、それを当たり前としている姿勢に感動しました」。加島さんも「何かご一緒にできることがあれば」ということから、コラボレーションがスタートしたのです。

 そこから打ち合わせを重ね、何をやるかを一緒に考えた結果、新道さんが感動した「加島屋」の「丁寧なモノ作り」と「上等なおいしさ」をどう伝えるかということになりました。そして、「実際に食べてもらうこと」と「モノ作りのプロセスを伝えること」に行き着いたのです。

「さけ茶漬」ができるまでのプロセスをまとめたパンフレット

 そこでイベントでは、まず「実際に食べて」もらうために、試食コーナーと、冒頭の「アコメヤ厨房」の特別メニューを、「モノ作りのプロセス」については、「加島屋のさけ茶漬」ができるまでのプロセスを、コンパクトなパンフレットに仕立てました。写真とイラストに短い文章が添えられていて、パタパタめくっていくと、確かに「モノ作りのプロセス」が伝わってきます。

きりりとした深紅の帯が、チャーミングな印象を与えます

 また、オリジナルのギフト包装商品も提案することになりました。とは言っても、おおげさなものでなく、「加島屋」のクラシックな緑の包装紙の上から、金色のさけが刻印された深紅の帯をぐるりと巻いた姿かたち。豪勢ではない上等さがある、こびていないチャーミングさがある、思わず誰かに贈りたくなる、何より自分が欲しくなるたたずまいです。

 これは、数多くの料理本などを手がけているグラフィックデザイナーの若山嘉代子さんに依頼したものです。今後、「加島屋」のウェブサイトで販売していくことになりました。

店頭でのイベントには、たくさんの人が集まりました

 さて成果はどうだったのでしょうか。

 「やや敷居が高めという印象があった『加島屋』さんの商品に、気軽にコミュニケーションを取りながら、多くのお客様に触れていただけて良かった」と新道さん。

 「今までのお得意様ではない方々に、知っていただいたり食べていただいたことは大きな収獲」と加島さん。「今後も商品開発や売り場環境づくりについて、コラボレートしていければ嬉しいです」と新道さんは笑みを浮かべていました。

 世の中、コラボばやりではありますが、異色な組み合わせそのものを売りにしたり、著名デザイナーの名前を冠しただけだったり、本来的なコラボ=協業とは、少し違う文脈で行われるものも少なくないと感じてきました。が、今回のコラボレーションは、両者にとって役立つことがあって、しかもお客にとっての価値もあるものに仕上がりました。「これからも開発やイベントなどを、両者でやっていきたい」という話を聞いて、「今後が楽しみ」とうれしくなりました。

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PROFILE

川島蓉子(かわしま・ようこ)

写真

伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。多摩美術大学非常勤講師。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。
ifs未来研究所 http://ifs-miraiken.jp

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