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“丁寧な暮らし”との向き合い方。『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』ほか

  • 文・嵯峨山瑛
  • 2018年4月16日

撮影/馬場磨貴

  • 『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』佐光紀子 著 光文社新書 821円(税込み)

  • 『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』一田憲子 著 SBクリエイティブ 1490円(税込み)

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 「丁寧な暮らし」、またはひらがなで書かれた「ていねいなくらし」という言葉をいつの頃からか目にするようになりました。

 オーガニックな衣類をまとい、生産者の顔が見える野菜を味わいながら時間をかけて食事を行う。使い古しの布で掃除をし、シンクに水滴は残さない。確かな審美眼で選ばれたストーリーのある日用品とインテリアに囲まれた理想の家で、日常を過ごすのではなく、暮らす「丁寧な暮らし」は、環境にも配慮した「正しさ」にあふれています。

 雑誌やSNSでそんな記事を見るたびに、丁寧な暮らしを理想に思う一方で、現実との乖離にうんざりしたり、非の打ち所のない「正しさ」を息苦しく感じてしまいます。

 『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』という穏やかではないタイトルの本書は、日本人の「完璧な家事」や「ていねいな暮らし」「ミニマリズム」の流行が、特に母親への見えない圧力となっていることを示し、その圧力が国や学校からどのように生まれたのかを紐解き、合理的な海外の家事の状況を提示し、比較することで日本の家事と女性の社会進出が進まない現状を嘆きます。

 著者はこれまでに重曹や酢を使った家事の紹介や、掃除講座で知られるいわば暮らしのプロ。そんな彼女が、女性は家事ができて当たり前という呪縛から、男も女も離れてもいいのではないかと語りかけてくれます。

ズボラで気分屋でも大丈夫?
『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』

 雑誌「暮らしのおへそ」を立ち上げ12年間編集ディレクターを務めてきた一田憲子さんの『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』。

 「暮らしのおへそ」といえば、「丁寧な暮らし」をおくる人々が登場し、それをまとめる一田さんは、さぞ丁寧に暮らしているかと思いきや、実は面倒くさがりで取材や執筆で時間に追われており、文中では、自らをズボラで気分屋であると告白します。本書はそんな一田さんが、忙しい日々のなかで試行錯誤しながらつくってきた自分らしい暮らしのコツをこっそり教えてくれるような1冊でした。

 「丁寧な暮らし」はそれ自体が目的になってしまうと、SNSで消費されるだけの表層的なものになってしまいますが、その暮らしの先にある「おいしい」「楽しい」「気持ちいい」という体験をそれぞれのやり方で重ねていくことで、暮らしが豊かになるのではないでしょうか。

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PROFILE

嵯峨山瑛(さがやま・あきら)

写真

二子玉川 蔦屋家電、建築・インテリアコンシェルジュ。
大学建築学科卒業後、大学院修了。専門は都市計画・まちづくり。
大学院在学中にベルギー・ドイツに留学し建築設計を学ぶ。
卒業後は、出版社やリノベーション事務所にて、編集・不動産・建築などの多岐の業務に関わる。
>>二子玉川蔦屋家電 ホームページはこちら

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