野村友里×UA 暮らしの音

野村友里さん「職業って、生き生きできるものであってほしい」

  • 文・写真 野村友里
  • 2018年5月14日

東京・原宿のrestaurant eatrip

 フードクリエイティブチームeatripを主宰する野村友里さんと、歌手のUAさんが往復書簡を交わす連載「暮らしの音」。前回の「島」に続き、今回お二人が選んだテーマは「職業」です。

 料理の仕事をしながら、映画を撮ったり、イベントを主催したり、ラジオでパーソナリティーをつとめたりと幅広く活躍してきた野村さんにとって、職業とは?

    ◇

>>UAさんの手紙から続く

うーこ、お返事ありがとう!

うーことのやりとりは勉強になるなぁ。。
私が感覚的に気になったり、興味を持ち始めたことに
たいていあなたは知識と経験をすでにたくさん持っていて、
自分の意見として返してくる!

縄文より前にあったサヌキ性とアワ性かぁ
でも陰と陽、男と女、黒と白
世の中バランスで成り立っているのであれば、
どっちが正解というわけでなく、両方持ち合わせつつ、
愛をもって受け入れて
目の前の事に一つずつ向き合いながら
たくましくこの生を全うしていくべきなのだろうなぁとも思う。
故に、このうーこ節が余計に響いたわ。

“島に暮らしながらしばしば、世界の縮図を見ているように感じる。
物理的に限りあることも多い島暮らしでは、侘びや寂やの感性も育まれるように思う”

目の前の日常に、たくさんの世界の縮図なるものがあるのだろうな~と
そして今を生きる私たちのアドバンテージは
過去から学ぶことがたくさんあること。
やるべき事、時代を経ていてもお手本になることがそこにあるから、
よりクリアに、進むべき道筋が見えてくるのではないだろうかと思うの。

職業としての“歌手”って意識したことある??

そういえば、学生の時うーこは仏像に関してもだいぶ熱心だったのよね?
私のお茶の師匠、武者小路千家の若宗匠のお宅にお邪魔させて頂く機会があった時
ずいぶん仏像について盛り上がっていたものね。

一方で、ずっと映像に興味があって歌手よりも役者の方に進みたかった、
なんていう言葉も飛び出してくるし。。。

本当にあなたは才女!
というか
自分の中に芽生える好奇心と才能が合致している人。
だから“歌手”という天職を見つけながらも
その中にいろんな要素やメッセージがどんどんプラスされていくものだから、
より深く、そして終わることがない。
そうか! だから天職といえるのかもしれないね!

うーこは自分の職業としての“歌手”って意識したことある??
私はどうなのだろう。

よく肩書を問われるので、
以前は前職のボスがつけた
フードディレクターなんてカタカナ横文字の長ーい肩書を使っていたけれども
どんなことをやられるのですか?って必ず質問もくる。

料理教室や料理番組、レストランを開くとか
わかりやすい内容だったらいいのだけど、
映画を撮らせてもらったり
まだ続けさせていただいているラジオ番組もあって。

ますます
私自身はずっと “食”一貫!のつもりで動いているけれど、
わかり難い部分もあるかなと感じ始めて
最近は、職業は?と聞かれると“料理人”ですと答えているの。

  

ケータリング

“職業”って言われると
改めて考えてしまう人、多いのではないかしら?

というのも、今ある職業が
50年後には半分になってしまうとも言われているのですって。

いや10年先でもきっとずいぶん変わってくるのでしょうね。
代わりのきかない、オリジナリティーあふれるその人なりの仕事だったら
なくならないのかもしれない。

つまり、これから感性や人とのコミュニケーションなど
パーソナルな仕事がもっと求められるのだとしたら、
やっぱり一人ひとりの人間力が問われるし
判断力も問われるのかなとも思う。

ちなみにね、私が料理をなりわいにするようになって
“あぁ~天職だな~”って思えた瞬間は
映画を撮り終えた後に向かったカリフォルニアのレストランの
厨房に入って働いた初日のこと。

30代半ば過ぎにもなって、
異国の地で知り合い誰もいない中ドキドキして入ったキッチン。

そこで最初に与えられた仕事はバケツいっぱいのアーティチョークの皮むき。
Chez Panisse(シェ・パニース)というそのレストランは、
アリス・ウォータースの考えに則った40年以上も続く人気店で
”生産者に近づこう”
”旬のものを食べよう”
”地元のものを食べよう”
がスローガン。
そのフィロソフィーを体感したくて、全米からこぞってシェフやサービス、
裏方として支える人と、世界中からくるインターンでなりたっているレストランでね。

Chez Panisse 40周年を記念した書籍『40 Years of Chez Panisse:The Power of Gathering』

書籍の中に、私が働いていたときの1枚が

みんな経歴のステップアップの為だけにそこで働いているのではなく
そこに届く元気いっぱいの虫と一緒に届く野菜やお肉や魚と一緒に
誇りをもって働いているの。

だから働いた瞬間から、皮むきだったとしても、
それがいたるところから感じられたのでしょうね。

細胞単位で、あ~楽しい!
皮むきでこんなに体中が喜んでいるなら天職なんだわ~って
自分で思えたことがうれしかったの。
たとえ料理の抜きんでた才能がなかったとしてもね。

あとから考えると、そこにあるストーリーや環境から伝わるもの
全てに反応していたと思うのだけれどもね。

というわけで
“私にキッチンの中で何かできることあるかしら?何でもします!”
っていう気持ちで、初日から本当に生き生きと仕事できたのね

その時の縁がいまだにつながり、
カリフォルニアの人たち日本の人たちが輪になって、行ったり来たりしている。
本当にぐるぐるぐるぐる緩むことなく。

カリフォルニア出身の写真家、トッド・セルビーがレストランや食材生産者を撮り下ろした『Edible Selby』(おいしいセルビー)

セルビーの本には、ケータリングチーム「pekopeko」のシルバンと私が料理する様子が掲載された

セルビーの本に掲載された、もう1枚(左ページ)

職業は、作るものでもあるのかしら?
コミュニティーの循環の中にあるとも思う。

お金!という文字が入ってきたり
人工知能で代替えできることもたくさんあるかもしれないし、
時代によって必要とされることは変化するかもしれない。

でもまず自分がプライドをもっていきいきできるものであってほしいとは思う、職業って。

ちなみに私の母はちょくちょく料理家として媒体に載せていただくのだけど
肩書は?と聞かれると“主婦”っていうの。
主婦にプライドをもっているのですって。

うーこは職業についてどう思っているのだろう??

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PROFILE

野村友里(のむら・ゆり)フードディレクター

野村友里

フードクリエイティブチーム「eatrip」を主宰。おもてなし教室を開く、母・野村紘子さんの影響を受けて料理の道に。主な活動に、レセプションパーティーなどのケータリングフードの演出、料理教室、雑誌の連載、ラジオ番組など。2009年、初の監督作品『eatrip』を公開。11年、「シェ・パニース」のシェフたちとともに、参加型の食とアートのイベント「OPEN harvest」を開催。その経験を経て日本のシェフたちとともに「nomadic kitchen」プロジェクトをスタート。12年、東京・原宿に「restaurant eatrip」をオープン。著書に『eatlip gift』(マガジンハウス)がある。http://www.babajiji.com/

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