モードな街角

NYで注目、仕事場の新しいかたち

  • 文 池田桃子
  • 2014年4月30日
「ノイエハウス」のエントランスから広がる共有スペース。ここでは入居企業が自由に仕事に取り組める。賃料はさまざま。共有スペースだけ、または週末と夜間だけ利用、というオプションもあるという
(c)Don Freeman

写真:カフェスペースではヘルシーなメニューに加え、ワインなどのアルコールも(c)Don Freeman カフェスペースではヘルシーなメニューに加え、ワインなどのアルコールも(c)Don Freeman

写真:地下の「The library」は、少し大人な雰囲気の憩いの場。バー部分は、日中はテクニカルサポートのコーナーに姿を変える(c)Don Freeman 地下の「The library」は、少し大人な雰囲気の憩いの場。バー部分は、日中はテクニカルサポートのコーナーに姿を変える(c)Don Freeman

写真:2~4階は、シェアオフィスのフロア。ブースに仕切られたプライベートオフィスのほかに、打ち合わせスペースも備わっている(c)Don Freeman 2~4階は、シェアオフィスのフロア。ブースに仕切られたプライベートオフィスのほかに、打ち合わせスペースも備わっている(c)Don Freeman

写真:創始者のアラン・マレー氏とジョシュア・エイブラム氏(c)Don Freeman 創始者のアラン・マレー氏とジョシュア・エイブラム氏(c)Don Freeman

 仕事場のあり方が多様化するニューヨークで今、「Neuehouse(ノイエハウス)」というコレクティブ・ワークプレイス(集合オフィス)が話題だ。場所は、マンハッタンのフラットアイアン地区、軽工業の会社跡地。5フロアからなるビルに、映像、ファッション、建築、ホテル業などを営む1~20人の小規模のクリエイティブな企業が集まっている。現在、約750人のクリエイターが働いているが、募集を開始した昨年9月から3カ月間で定員の倍に達したほどの人気ぶり。今も順番待ちの状況が続いているという。

 ニューヨークでもかねてから「シェアオフィス」はあったが、このノイエハウスはあらゆる点でそれをグレードアップさせたものだ。

 共有スペースは広々として、まるでホテルのロビーのようなデザイン性の高い空間。カフェでは、農家直送のヘルシーな食材で作る料理が提供される。地下には、高性能音響システムがそろったシアタールームや、人びとが憩えるダイニングスペース。さらには、撮影スタジオ、放送ができるブロードキャスティングシステムまで整っている。

 「目指したのは、ブティックホテルのようなファッショナブルで心地いい空間です。いいデザインや刺激的な人たちに囲まれた『仕事場のユートピア』のようなものを追求しました」。そう語るのは、創業者の1人であるアラン・マレー氏。

 400人もの従業員を抱えるテクノロジー企業のトップに長年いた彼が、ミッドライフ・クライシス(中年の危機)を経験し、テクノロジーから逃れて、アートなどカルチャーに囲まれたクリエイティブな生活を求めるようになったのが、この事業を始めたきっかけだ。

「20年前までは大手企業に勤めることをよしとする人が多かったですが、今では小さな“ブティック企業”で働くことが理想とされています。かつては5%しかいなかった独立系の企業で働く人も、今では35%にも達したと言われています」。

 マレー氏はこう続ける。

 「今の時代に合った新しい働き方のスタイルとは何なのか。そして、従来型の働き方で見失ってはいけないものは何なのか。『ノイエハウス』を作るうえで、それらを一から再考する必要がありました。これは実験的な試みです」

 マレー氏が特に力を入れたのは、コミュニティーを作ること。ここでは、クリエイティブな人たちが交わることで新しいプロジェクトが生まれたり、著名なクリエイターと交流したりするチャンスがある、というのが特徴だ。

 ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズを発掘した「Island Records」やバーニーズで長くファッションディレクターとして活躍したジュリー・ギルハート、ケリー国防長官の娘であるアレキサンドラ・ケリーがプロデューサーを務める映画会社「Locomotive」なども、メンバーとして名を連ねる。

 トップクリエイターや高い志をもつ若い起業家と一緒にワインを飲んだり食事をしたりしながら、リラックスして意見交換し刺激を与え合う――そんな場が、マレー氏の理想とする職場の形だという。

 今年1月からノイエハウスに入ったというデジタルエージェンシー「Ivory Digital」を営むアイボリー・チェイフィン・ブランチャード氏は、入居後の変化をこう話した。

 「私たちのようなベンチャー企業にとっては、仕事に追われ、身の回りのことがおろそかになりがちです。そんな時、いい食事が近くにあり、同じような境遇の人たちがまわりにいるのは心強いです。日ごろ情報収集するひまがなくても、ここで開かれるイベントに参加することで、新しいことに触れられるのもいいですね。クライアントからは、オフィス空間だけで会社を判断されることがありますが、このようないい雰囲気を提示できるのも、私たちにとって理想的です」

 今の時代を反映する場所として、仕事場のかたちに今後も注目が集まりそうだ。

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PROFILE

池田桃子(いけだ・ももこ)

日本での雑誌編集者としてのキャリアを経て、2007年に渡米。FIT(NY州立ファッション工科大学)留学し、現在はファッション中心とした雑誌への取材執筆とファッション撮影を担当している。また、NYからグローバルな視点でアジアの最新のクリエーティブについて考えるニューメディアプロジェクト「yellow new media」も展開中。http://www.yellow-newmedia.com/


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