モードな街角

ジャンフランコ・フェレの白いシャツ展

  • 文 高橋 恵
  • 2015年4月8日

「私にとっての白シャツ―ジャンフランコ・フェレ」展。王宮内の華麗な広間に、白いシャツが浮かび上がってドラマチック
写真:L. Salvini

写真:各シーズンを代表する白シャツを展示。シャツにはすべて名前が付けられている<br>写真:L. Salvini 各シーズンを代表する白シャツを展示。シャツにはすべて名前が付けられている
写真:L. Salvini

写真:ジャンフランコ・フェレ。いつもジレ(ベスト)を身に着けた、ダンディーかつシャイな人だった ジャンフランコ・フェレ。いつもジレ(ベスト)を身に着けた、ダンディーかつシャイな人だった

写真:1886年秋冬コレクションのショーより。シャツの名は「CANONE INVERSO(カノネ・インヴェルソ)」 1886年秋冬コレクションのショーより。シャツの名は「CANONE INVERSO(カノネ・インヴェルソ)」

写真:1982年春夏コレクション「SAILOR GLAM(セーラー・グラム)」<br>写真:L. Stoppini 1982年春夏コレクション「SAILOR GLAM(セーラー・グラム)」
写真:L. Stoppini

写真:流れるような曲線に特徴のあるデザイン画。1994年秋冬コレクション「SCOMPOSTA(スコンポスタ)」 流れるような曲線に特徴のあるデザイン画。1994年秋冬コレクション「SCOMPOSTA(スコンポスタ)」

写真:会場の天井に投映された白シャツのX線写真。1990年秋冬コレクション「CLASSIC GLAMOUR(クラシック・グラム-ル)」 <br>写真:L. Salvini 会場の天井に投映された白シャツのX線写真。1990年秋冬コレクション「CLASSIC GLAMOUR(クラシック・グラム-ル)」
写真:L. Salvini

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 3月10日から4月1日までミラノの王宮で、「私にとっての白シャツ―ジャンフランコ・フェレ」展が開催された。デザイナー、ジャンフランコ・フェレのコレクションショーに必ず登場した白いシャツ。そのシャツへの想いとこだわりをテーマに構成された展覧会だ。

 ちなみに、ミラネーゼはシャツの着こなしが格段にうまい。私もイタリアに来た当初は、白シャツと紺のブレザーをさらっと着ただけなのに格好いい彼女たちにあこがれて、襟の立て方や3つボタンを開ける時のちょうどよいボタンホールの位置などを研究し、その粋な着こなしをまねしようとしたものだ。

 白シャツとはミラネーゼにとって何なのだろう?そんな問いを胸に展覧会へ足を運んでみた。

 さて、まずジャンフランコ・フェレについて軽くご紹介する。彼は1978年に自身の名を冠したブランド「ジャンフランコ・フェレ」を創立し、ミラノでデビューコレクションを発表。同じ時期にミラノで活動を開始したジョルジオ・アルマーニ、ジャンニ・ヴェルサーチとともに「ミラノの3G」と呼ばれ、ミラノがファッション都市となる礎を築く。1989年から1996年まで「クリスチャン・ディオール」のクリエーティブディレクターも務めた。惜しくも2007年に62歳で死去。もともとミラノ工科大学で建築学を修めた彼のデザインのベースには常に、ファッションと建築の対話があった。

 王宮内の展覧会場は、カリアティディの間。18世紀末に作られた大広間で、壁面上部には40体の彫刻が配され、訪れる者を見下ろしている。戦災で半壊したが、あえて完全には修復せず、デカダンスなムードを醸し出す。その広間の暗闇の中に白いシャツが浮かび上がるドラマチックな空間演出だ。

 天井中央には、X線写真のように透けたシャツの画像が投映され、空中をシャツが浮遊しているように見える。流れるような線で描かれたアーティスティックなデザイン画と、綿密に構造を説明した設計図のような指示書も展示され、彼のデザインへのアプローチ方法も見てとれる。

 ここでは20年以上におよぶデザイナー活動の中でフェレが追求してきた、“詩的なテーラー仕立てとクリエーション”が、白いシャツというひとつのシンプルなアイテムの中で最大限に表現されている。
 「白いシャツについて語ることは、私にとってあまりにも簡単なことだ。私の創造活動の根底に常に流れる白いシャツへの愛を宣言することも簡単だ。白いシャツは、私が常に追い求めてきた革新追求と、それに劣らずに追い求めた伝統への愛情を宣言する“記号”である。」と、フェレは自筆のメモに記している。

 「男性のワードローブに不可欠な白いシャツ。それをベースに、独自のプロポーションを追い求め、エレガンスとスタイルの規範を再読していく。魅惑と詩を用いて自由に再読した白いシャツは無限に形を変える。それは今日のフェミニティに不可欠な存在である。襟元、肩や袖を意図的に強調したり縮小したり、フリルやギャザーでうねりと動きを与えたり。それはボディーを彫刻し、まるで第二の皮膚となるように変化していく」

 潔い“白”という色と、“シャツ”という伝統的でベーシックなアイテム。だからこそ、知的にそして詩的に考察する余地がある。ミラネーゼが全員フェレのようだとは言わないが、白いシャツを着る時、多かれ少なかれ、シンプルゆえに着る人そのものを際立たせてしまうという程よい緊張感をまとい、その中でどのように仕立てや着こなしのディテールで自分らしさを出せるかと考えるはずだ。

 この展覧会は、フェレの仕事を理解させてくれたと同時に、白シャツの持つ魅力と可能性を再認識させてくれた。
 もちろんこの後、白シャツをクローゼットの底から引っ張り出していろいろな着方を試したことは言うまでもない。

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PROFILE

高橋 恵(たかはし・めぐみ)

ジャーナリスト。立教大学文学部日本文学科卒。日本とイタリアの新聞・雑誌にファッション、ライフスタイルに関する記事を寄稿。ファッションビジネス専門紙「繊研新聞」ミラノ通信員。北イタリア外国人記者クラブ会員。イタリアジャーナリスト連盟所属。尊敬するファッションジャーナリストは故アンナ・ピアッジ。趣味は各地の青空市場めぐりとB級グルメ探訪、裏路地探検。

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