アイデアの生まれるところ

東京タワーでの初心の記憶 「アンリアレイジ」森永邦彦

  • 2015年5月25日

森永邦彦さん (撮影 喜多村みか)

  • 森永邦彦さん (撮影 喜多村みか)

  • 東京タワー大展望台からの風景

  • 森永さんが着ているコートは2015年春夏コレクション「SHADOW」から。パンツは「ケイスケカンダ」

  • 「東京タワー界隈にはよく来ますが、実は、この大展望台にのぼるのはデビューコレクションぶりなんです」と森永さん

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  • ブランド設立10周年目を迎えた2012年12月に出版した『A REAL UN REAL AGE』

  • 2013年春夏コレクション「BONE」

「ブランド名は、A REAL(日常)、UN REAL(非日常)、AGE(時代)という3つの単語を組み合わせた造語です。僕たちがいう『非日常』というのは、改めて考え直されることのない、日常生活で見落とされてしまっていることを指します。その非日常を突き詰めて洋服で表現し、新しい時代の服を作り上げていきたいという思いを込めています」

 そう語るのは、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」のデザイナーである森永邦彦さん。

「洋服で革新的なことに取り組みたいという気持ちは、常にブランドの根幹にあります。それぞれのコレクションのテーマは、色やサイズ、季節感といった洋服の常識や既成概念を問い直すことからスタートすることが多い。僕は、洋服が今までにない価値観を生み出し、それが時代を動かすということもあると思っていますし、ファッションにはそういう力があると信じています」

 服作りを始めたのは、早稲田大学在学中の2003年。大学の先輩である「ケイスケカンダ」のデザイナー神田恵介さんとの出会いが、森永さんをデザイナーの道に導いたという。

「神田さん自身と、彼が作る洋服への憧れが、服作りを始めた動機ですね。特に、まだ大学生だった神田さんが、京王井の頭線の車内で決行した最初のショーは衝撃的でした。毎日通学に使っている電車という日常的な場面が、力強い服をまとったモデルが歩いてくるという一つのアクションだけで、僕にとってそれまでに経験したことのないような光景に変貌した。この原体験の驚きは今も忘れられません。たとえそれが1分間だったとしても、“ある人の日常を変えられる洋服”というのがあるんだと感動して、自分もそういう服を作りたいと強く思うようになったんです」

 大学卒業後も神田さんとの交流は続き、2005年、東京タワー大展望台を会場に、東京コレクションのデビューショーをケイスケカンダと共同開催した。「東京コレクションで初めて作品を発表するなら、自分たちが生きてきた東京を最も象徴する場所で発表したいと思い至ったんです」

 森永さんは今でも、コレクション制作で思い悩んだ時に東京タワー周辺をよく散歩するという。

「服を作り始めた時や最初のコレクションを発表した頃、どうしたら人に伝わるのか、どうやって新しい洋服を作るかを、試行錯誤しながら一つひとつ丁寧に、熱中して考えていた初心を思い出して、気持ちを改めるんです」

 10周年の2013年春夏コレクションで発表した「BONE」は、「もし洋服に骨があったら」という仮定で、形をとどめる最低限の構造線だけで服を表現。ショーの音楽には、デビューコレクションで使用した曲を高音化したものを選んだ。ラストルックの“服の骨”が暗闇の中で蛍光オレンジ色に発色したイメージはまるで、夜景に悠然と浮かび上がる東京タワーの鉄骨を彷彿(ほうふつ)させるものであった。

「神田さんと一緒にやったショーから10年が経とうとしていますが、自分のクリエーションの指針を反芻(はんすう)するたびに、あの日は本当に大切な1日だったと思い返します。今後どんなに完成度の高いコレクションができたとしても、命をかけてショーをやったと言っても過言ではないあの日の気持ちは取り戻せないし、再現することはできないですから」

(アンリアレイジの作品については、次のページへ)

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