ファッションニュース

手が届く上質を求める時代 高田賢三、クリストフ・ルメールに聞く

  • 2016年12月26日

セットプルミエ・バイ・ケンゾータカダの16年秋冬商品

写真:1939年、兵庫県生まれ。70年からパリ・コレ参加、93年、「ケンゾー」ブランドを大手グループに売却。自身の創作活動を続ける。=パリ、大原広和氏撮影 1939年、兵庫県生まれ。70年からパリ・コレ参加、93年、「ケンゾー」ブランドを大手グループに売却。自身の創作活動を続ける。=パリ、大原広和氏撮影

写真:ユニクロ・ユーのコート。他の商品も店舗により売り切れも ユニクロ・ユーのコート。他の商品も店舗により売り切れも

写真:1965年、フランス生まれ。2010年から14年までエルメス婦人服のアーティスティックディレクター。=パリ 1965年、フランス生まれ。2010年から14年までエルメス婦人服のアーティスティックディレクター。=パリ

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 今年のファッション界では、時計や宝飾品など高額商品が人気の一方で、中低価格帯の服のデザインや質を底上げする動きが強まった。格差社会が指摘され、服が売れない時代、新たな民主的な服とは何か。セブン&アイ・ホールディングスと協業した世界的デザイナーの高田賢三と、ユニクロから新ラインを出したクリストフ・ルメールに聞いた。

色柄もの、気軽に挑戦して 高田賢三

 ――高田さんがデザインしたイトーヨーカ堂などで販売する「セットプルミエ」。値段がこれまで手掛けてきた服とはひと桁違いますが、何か違和感は?

 「価格は別に気にしませんでした。パリでケンゾーを始めた頃も安かった。安い綿やネル地しか使えなくて、シルクで服が作れたのはデビューして何年も後だった。安過ぎでも高過ぎでもない値段が、今の時代に合っていると思います」

 ――今年8月の東京でのお披露目の時、怖かったと小声でおっしゃっていましたね。

 「服作りから十数年間も離れていたので、本当にできるのかと戸惑いがあった。2年前に打診されて最初は断ったけれど、1964年からずっとフランスで、そろそろ日本のことをもっと考えなくてはという気持ちもありました」

 ――商品は満足できる出来栄えになりましたか?

 「近年は多様な面白い生地が開発されていて、僕の望みに近い素材を見つけてくれたし、縫製もきちっとしていた。自分らしいシャクヤクの花柄やカラフルな民族衣装の要素を取り入れた。最近は飾り気のない“ノームコア”が流行中ですが、女性がきれいな色柄を着ていると街が華やいで活気が出る。そこがファッションのいいところです。この服で、気軽にそれに挑戦してもらえたらうれしい」

 ――約50年間の経験から、今のファッション界の状況をどうとらえますか。

 「ネットで服を買う人が増えたのに、店の数が30年前の10倍はあるのでは? 似たような店で同じようなレベルの服を置いている。ファストファッションでは刺繍(ししゅう)入りのドレスがかつての何十分の一の値段で買える。試着しないで買う人が増えているのも、服に対する意識が変わって、食器やクッションと一緒の感覚なのかもしれません」

 「便利で豊かな生活だけどあまりに速度が速すぎて、服もぱっと作って、ぱっと売って。うかうかしていると時代に取り残される。すごいことになってきたなと、ドキドキしてしまう。若い人は色々選べていいかもしれないけれど、自分が着るとすると何か安心できませんね」

    ◇

10年着ても新鮮な服、作る クリストフ・ルメール

 ――新ライン「ユニクロ・ユー」を監修。一昨年まで担っていた仏高級ブランド、エルメスからの大転換ですね。

 「全ての人のためのベーシックな生活着、というユニクロの発想には前から興味があった。僕はデザイナーとしてずっと、人々の日常生活を今より良くしたいと思ってきた。より広い層に提供できるチャンスだと思ったのです」

 ――ユニクロでどんな服を作りたいと思ったのですか。

 「人々がいま求めているのは、シンプルさの中にもちょっと特別なフォルムやディテールがあるもの。クラシックなのに個性的でかっこいいもの。そこがこれまでの商品には足りなかったと思う。僕が率いることになったのは、ユニクロがパリに設立した商品研究開発センター。そこでは、そうした物づくりができそうだった。5年、10年と着ても新鮮で、考えて作られたものを提供していきたい」

 ――そうした品が低価格でも生産が可能だと?

 「ええ。人々はお金をかけなくてもいい物を欲しいと思うようになってきている。今こそ多くの人の手が届く値段の商品の品質に目を向けるべきです。格差が広がり、世界中で中間層が減って、服にお金を使う余裕がなくなってきた。少し前までは、食でも車でも大金を払わないと本物は楽しめなかったけれど、今後はB級でもC級でもない本物を作る時代だと思う」

 ――本物を作るために必要なこととは?

 「最近、服があまり売れないのは、ファッションのシステムや作り手の感覚が現実社会や人々の気持ちから大きく離れてしまったからです。まず、社会に起きていることを理解することが大事だと思う。技術はあくまでも道具。情熱的で精神的なアプローチが大切だと感じるのです」

 (編集委員・高橋牧子)

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