ファッションニュース

回顧2016 自然体、枠を超えていく

  • 2016年12月30日

写真:[1]16年秋冬バレンシアガの作品=大原広和氏撮影 [1]16年秋冬バレンシアガの作品=大原広和氏撮影

写真:[2]バーバリーの16年セプテンバー・コレクション=RUNWAY|PHOTOGRAPHIE撮影 [2]バーバリーの16年セプテンバー・コレクション=RUNWAY|PHOTOGRAPHIE撮影

写真:[3]ボーダー柄に軽いコートを羽織った女性=5月、東京・表参道=大原広和氏撮影 [3]ボーダー柄に軽いコートを羽織った女性=5月、東京・表参道=大原広和氏撮影

写真:[4]16年春夏のグッチ=大原広和氏撮影 [4]16年春夏のグッチ=大原広和氏撮影

写真:[5]ポール・スミスの展覧会=岡田晃奈撮影 [5]ポール・スミスの展覧会=岡田晃奈撮影

写真:[6]クリスチャン・ディオールの会場入り口でもボディーチェックが徹底された=1月、パリ [6]クリスチャン・ディオールの会場入り口でもボディーチェックが徹底された=1月、パリ

写真:[7]17年春夏のクリスチャン・ディオール=大原広和氏撮影 [7]17年春夏のクリスチャン・ディオール=大原広和氏撮影

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 性差の境のない「ジェンダーレス」に、パーソナルな日常着。ショーで発表後にすぐ売る流れの加速……。世界的なアパレル不況の中、20世紀以前から続いてきたファッションの仕組みや考え方の基準が、せきを切ったように決壊し始めた年だった。

性差・販売時期、壊れる基準

 今年のファッション界を静かに、だが圧倒的な勢いで先導したのは、3月のパリ・コレクションでバレンシアガ=[1]=のデザイナーに就いたデムナ・ヴァザリア(35)だった。

 パリモード界では珍しいジョージア(グルジア)出身。体が泳ぐほどのオーバーサイズや、男女どちらも着られる服。その多くはトレンチコートやボンバージャケットといった見慣れた形を、独自の仕立て技術で幾通りにも着られるように変身させた。ヴァザリアが見せたオーバーサイズ、ジェンダーレス、細部に凝ったベーシックウェアは、多くのブランドを巻き込んだ大潮流になった。

 ショー後に半年の製作期間を取らずにすぐ販売する動きが、今年はバーバリー=[2]=やラルフ・ローレン、トム・フォードなど著名ブランドにも広がった。買った服を即着られるようにと、ジャストシーズンの服を発表するブランドが出てきた。

 レディースとメンズの同時発表も急増。来季はグッチやボッテガ・ヴェネタといった人気ブランドが、レディースの時期にメンズも発表する。戦後の大量生産消費の時代から長く続いたシステムが大きく変わろうとしている。

 全体的なデザイン傾向は、昨年の「エフォートレス(頑張らない)」や「スポーツ」の要素を軸に、ややフェミニンに。社会のスピード化や人々の働き方を問い直そうとするかのように、ゆったりとした夢見がちなスタイルや癒やし系の動物柄が登場した。

 日本の街では、初夏に淡い色の透けるプリーツスカートやコートが人気に=[3]。親子や友人、カップル同士のペアルックも。空想的な作風のグッチが人気で、男女共に“スリッパ”=[4]=が流行した。

 格差の広がりなどを背景に、低価格帯の商品のデザインや質の向上が進んだ。「パーソナル化」の流れなのか、通販ブランドやユニクロもオーダーの要素を取り入れた。

 一方で、サンローラン、クリスチャン・ディオール、ランバンなど老舗ブランドのデザイナー交代が話題になった。8月、パリ風の粋とエレガンスを体現したソニア・リキエルが他界。20世紀のファッションアイコンだったデビッド・ボウイやプリンスもこの世を去った。

 ファッションとアートの枠を超えるようなファッションデザイナーの展覧会も今年は相次いだ。3月の三宅一生を皮切りに、ポール・スミス=[5]、山本耀司と続いた。ルイ・ヴィトンやパリ・オートクチュールなどファッション関連の展覧会も観客を集めた。

 昨年11月の大規模なテロ事件以降、パリ・コレ会場では未曽有の厳重な警戒が続いた=[6]。そんな中、秋のパリ・コレでは、これまでのように花や明るい色で反戦などを唱えるのではなく、直接的な文字でメッセージを伝えるブランドが目立った。なかでも初めて女性デザイナーが就任したディオール=[7]=が、「革命」や「私たちは皆フェミニストであるべきだ」と胸に描いたTシャツを登場させたことが印象的だった。

 いまの「ジェンダーレス」のスタイルは、20世紀初めのココ・シャネルのように女性が男物を借りる感覚や1980年代のアンドロジナス(両性具有)などとも違う。レディースとメンズという垣根を低くして男女それぞれが自由に選べる服、との発想だろう。しかし現実には先進国でも政治や社会での性差の垣根はいまだに高い。

 その「ジェンダー」をあえて魅力的に表現してきたファッションの世界でこうした動きが出てきたことは、現代社会の様々な基本的な枠組みが一気に崩れかけていることの先駆けのようにも思えて興味深い。(編集委員・高橋牧子)

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