エシカルごころ

未来を示唆する、三宅一生×男子新体操の一夜

  • 文 生駒芳子
  • 2013年7月26日

写真:青森大学男子新体操部のショー。三宅一生氏が企画し、コスチュームをデザインした。ステージの幕開けには、空気をはらんだ大きな布が登場=18日、東京・渋谷区の国立代々木競技場 Photo:Masaya Yoshimura青森大学男子新体操部のショー。三宅一生氏が企画し、コスチュームをデザインした。ステージの幕開けには、空気をはらんだ大きな布が登場=18日、東京・渋谷区の国立代々木競技場 Photo:Masaya Yoshimura

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写真:Photo:Takao FujitaPhoto:Takao Fujita

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 7月18日の夜、国立代々木競技場第二体育館の客席がほぼ満席になった。まるで、ライブコンサートか、スポーツの人気競技の決勝戦か――といった熱気と緊張感が会場にあふれている。

 パフォーマンスが始まる前、2600人ものの観客は皆、「いったい何が始まるのか」という期待感に胸を膨らませていた。何しろ、届いた招待状に掲げられたタイトルは、「青森大学男子新体操部」。しかもこれを企画したのが、デザイナーの三宅一生氏というのだから、まるで謎解きゲームだ。

 定刻になると、光が落とされ、暗闇が広がった。一瞬の沈黙は次の瞬間、歓声に変わった。「わあああーーー」と誰もが、叫び声を上げた。アリーナの暗闇の中から、突如として巨大な布の山が姿を表したからだ。見れば、布の端を大勢の男子が持っている。空気をはらんだ布は、男子たちの手さばきで、山ができたり、海の波のようなうねりができたり。それはまるで、地球の天地創造の歴史を眺めているような、神秘的な光景だ。

 この魂を揺さぶるような壮大なドラマは、約1時間続いた。27人の選手がカラフルなコスチュームに身を包み、スティックやリング、ロープ、クラブを使って繰り広げる個人競技や、6人の選手がタンブリングを行う団体競技のアクロバティックなパフォーマンス。そこに光、グラフィック、音、巨大な布が加わり、めくるめく「未来の絵巻物」のような世界が次々と表れた。途中、オープンリールアンサンブルのライブ演奏や、モーショングラフィックスも加わり、五感に訴えかけるわくわくするような空気感が、終始会場を満たす。終わると、鳴り止まない拍手が体育館の巨大な空間に響き渡った。

 このプロジェクトは、三宅氏がテレビの報道番組で青森大学男子新体操部の演技を目にしたことがきっかけで生まれた。コーチや選手たちのひたむきな取り組みや美しい演技が何より心に残り、このエネルギーが東北復興のパワー、そして未来に向かう希望の光となることを願って、企画したという。

 その思いに応えて演出を手掛けたのは、振付家ダニエル・エズラロウ氏。三宅氏とはこれまで何度かチームを組んできている。今回、エズラロウ氏は、テーマとして「舞い上がる身体、飛翔する魂」を掲げた。

 会場を巨大な水のかたまりにたとえ、選手たちは、自然界に棲むさまざまな生物たちを描きだした。海に見立てた布から、まるでイルカのように選手たちが跳ねる、ユーモラスな演出などが、観客を沸かせた。選手たちが身を包んだカラフルなコスチュームは、衣服とはもはや人工物ではなく、自然界に存在する葉っぱや貝殻、雲や木々であるかのように思わせた。今年秋からメンズ新ブランドとして展開する予定の「HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE」が手がけたという。

 衣服の原点である「一枚の布」という発想、東洋でも西洋でもない衣服の本質を問う「EAST MEETS WEST」の精神、機能性と美しさとを融合させファッション史上「発明」と呼ばれた「PLEATS PLEASE」の開発など、70年代から現在に至るまで一貫して、未来に向かうデザインを模索し、形に表し、新しい地平を開拓し続けてきた三宅氏。今回のショーからも、「衣服は人のからだを、魂を自由にするためにある。人に希望や感動を与えるためにある。クリエーションはエネルギーである。そして美しいことは希望である!」という大きなメッセージを我々は受け取った。

 着ることとは、生きること、弾むこと、笑うこと、泣くこと、愛すること――詩を吟じるような、魂を揺さぶるそのビジュアルメッセージは、観客の心を瞬時にわしづかみにした。帰り道、心がどきどきしてハッピーな気持ちに包まれていたのは、私だけではなかったはずだ。

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PROFILE

生駒芳子(いこま・よしこ)

ファッションジャーナリスト。『VOGUE』『ELLE』での副編集長を経て、2004年より『マリ・クレール日本版』編集長に就任。2008年11月独立後は、ファッション、アート、ライフスタイルをテーマの核として、社会貢献、エコロジー、社会起業、女性の生き方までについての講演会出演、プロジェクト立ち上げ、雑誌や新聞への執筆にかかわる。クール・ジャパン審議会委員、公益財団法人三宅一生デザイン文化財団理事、NPO「サービスグラント」理事、JFW(東京ファッションウィーク)コミッティ委員等。エスモード・ジャポン、杉野服飾大学で講師、東京成徳大学経営学部ファッションビジネスコースの特別招聘教授を務める。

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