生駒芳子エシカルごころ

エチオピア産 羊革の美しいバッグ

  • 文 生駒芳子
  • 2013年10月18日

写真:「andu amet」のバッグ「andu amet」のバッグ

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写真:「andu amet」代表・デザイナーの鮫島弘子さん「andu amet」代表・デザイナーの鮫島弘子さん

写真:エチオピアの生産者を訪ねてエチオピアの生産者を訪ねて

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 私が雑誌『マリ・クレール』の編集長を務めていた2007年当時、来日したケニアの女性環境保護活動家、ワンガリ・マータイさんにインタビューする機会を得た。マータイさんといえば、「もったいない」という日本語を世界的に広めた人だ。当時、同誌では「エコ・リュクス」という言葉を使っていたのだが、「エコを、リュクス(贅沢)に楽しもう」という言葉は、果たして正しいか? 都合のよい解釈ではないだろうか?という疑問を、マータイさんにぶつけてみた。すると彼女は、すぐさま「その考えは正しいわ。だって私たちはいまある状況をすべてすぐに捨てることはできないから。少しずつ、エコロジカルになっていけばいいのよ」と答えた。「エコ・リュクス」に太鼓判を押された気がして、それ以来、胸をはってこの言葉を使ってきた。

 その「エコ・リュクス」な精神そのものを感じさせるのが、エチオピアのシープスキンを使ってフェアトレードで作られているバッグブランド「andu amet(アンドゥ・アメット)」だ。羽のように軽く、柔らかな極上のシープスキンを使って作られたバッグは、カラフルな色使いと、働く女性たちにとって使いやすい機能性を伴ってデザインされているため、エシカルな意識の高い人々だけでなく、お洒落で上質なバッグとしても広く人気を得ている。

 ブランドの代表でありデザイナーでもある鮫島弘子さんは、もともと、日本のメーカーでプロダクトデザイナーとして働いていたときに、大量生産で安価に作られるものがものすごい勢いで消費され、廃棄されていく様子を見て、ものづくりのあり方を根底から考えねばと強く思ったことがあったという。

 そう考えていた折に、彼女は青年海外協力隊に応募し、エチオピアにデザイン隊員として派遣された。「最初は、エチオピアのあまりもの貧しさにショックを受けましたが、人々と寝食をともにし、仕事をするうちに、ものづくりをする情熱は一緒なのではないかと思い始めたのです」と鮫島さん。協力隊として活動しているときに、いくつものデザインに関するプロジェクトを実施し、エチオピアで出会った職人さんたちとファッションショーも立ち上げたという。

 そこで出会ったのが、世界最高峰と言われるクオリティのシープスキン、羊の革だ。まるで赤ちゃんの肌のようにすべすべ、ふわふわで、ぬれたようなしっとり感もある。欧米では、高級外車のシートに使われ、ラグジュアリーブランドでも多く使われているという、まさにリュクスな革素材だ。

 この素材を使って、鮫島さんのクリエーティブなデザインセンスが生んだのが「andu amet」。2010年から準備をはじめ、今年4月から販売を開始した。ちなみにブランド名は、エチオピアの言葉であるアムハラ語で「一年」を意味するand ametをもじった言葉だという。「一年一年使い込むほど、違った表情に変化する革という素材を使って、長く愛してもらえるものを作りたいと思いました。エチオピアの生産者や日本の消費者と一緒に年を重ねながら、丁寧にものを作っていきたいと考えています」

 デザインのコンセプトは“HAPPY”。その言葉どおり、カラフルで、ポップかつシックでジオメトリックなデザインが、モダンな絵画のように美しい。抱きしめると、ふわっとあたたかい感触から、「HUG(抱きしめる)」というシリーズ名も生まれ、人気だ。3万円代から10万円台と、一般の基準から考えればけっして安くはないが、クオリティを考えれば、むしろ手頃であり、適正価格といえる。

 今年の9月、その功績が認められ、インドネシア・バリ島で開催された「APEC女性と経済フォーラム2013」において、APEC女性イノベーター賞を受賞。ファッション×ビジネス×社会貢献を実現させたモデルとして脚光を浴びることとなった。

 最近、都心に誕生した「安価」を売り物にするショップに長蛇の列ができる現状を見ると、まだまだ消費者の意識は、価格の安さにだけ走りがちだとつくづく思わされる。価格の裏に、何があるのか?  丁寧なものづくりとは? 本当の意味で美しいものとは何か? そんな問いかけを、「andu amet」のようなブランドを通して、投げかけていけたらと思う。

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PROFILE

生駒芳子(いこま・よしこ)

ファッションジャーナリスト。『VOGUE』『ELLE』での副編集長を経て、2004年より『マリ・クレール日本版』編集長に就任。2008年11月独立後は、ファッション、アート、ライフスタイルをテーマの核として、社会貢献、エコロジー、社会起業、女性の生き方までについての講演会出演、プロジェクト立ち上げ、雑誌や新聞への執筆にかかわる。クール・ジャパン審議会委員、公益財団法人三宅一生デザイン文化財団理事、NPO「サービスグラント」理事、JFW(東京ファッションウィーク)コミッティ委員等。エスモード・ジャポン、杉野服飾大学で講師、東京成徳大学経営学部ファッションビジネスコースの特別招聘教授を務める。


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