日常を そっとまなざす ~STILL LIFE

写真

 写真家の一之瀬ちひろさんが11年間にわたって、縁があった部屋を撮り続けてきた写真をまとめた『STILL LIFE』。その一部は、『暮しの手帖』でも、巻頭ページで連載されていました。東京・銀座に「一冊の本を売る本屋」として生まれた書店「森岡書店」で、3月1日から展覧会とトークイベントも開かれます。「語るべき言葉を持たない出来事たち」からそっと切り取られた一瞬の光を、一之瀬さんからのメッセージと共にお届けします。
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 ここに集めた写真は、2004年から2015年にかけて約11年間、撮り続けてきた十数都市(ロンドン、NY、アムステルダム、バンクーバー、ウィーン、バーゼル、南相馬、陸前高田、東京など)の部屋の写真です。このシリーズを暫く続けた後、なぜ私は些細な日常の、誰の注意もひかないような光景を撮りためるのだろうと、問いなおしました。部屋の写真は、すべて私という個人を起点に、そこからつながって出会った人たちの部屋です。私は、私のまわりにはどんな日常があるのか、私や彼らの日常はどのように保たれているのか、私個人のつながりをたどって、知りたいと思っています。そして私たちの日常は、見えないくらい薄く透きとおる布でつつまれるように、この社会におおわれていると感じています。

 私たちの日常には、見落としてしまいそうな些細なこと、または理解や把握ができないくらい大きなことが日々起こり、これらの出来事に対して、語るべきふさわしい言葉をみつけることができません。私は説得や腕力とは違ったかたちで、この語るべき言葉を持たない出来事たちを、写真に現したいと思いました。
 写真集のタイトル『STILL LIFE』は「静物画」という意味です。静物画は17 世紀のオランダで始まりました。17世紀オランダの画家たちははじめて日常の生活風景をまなざす、という新たな視点を発見しました。「日常をまなざす」ことは現代の私たちにとっては当たり前のことのように思われますが、ある時代では発見しなければ得られないものだった、ということに気づかされます。 (一之瀬ちひろ)

一之瀬ちひろ写真集『STILL LIFE』出版記念展示
日時: 2016年3月1日-3月6日 (5日のみトークイベントのため17:00まで)
会場: 森岡書店 銀座店(東京都中央区銀座1−28−15 鈴木ビル1階)
営業時間:13:00~20:00 月曜休

出版記念トークイベント「写真集を届けること」
日時: 2016年3月5日(土) 17:00 受付開始 17:30 開始
場所: 森岡書店 会費: 2000円
お申込み:info@prelibri.com /PRELIBRI http://prelibri.com/

一之瀬ちひろ写真展『STILL LIFE』
日時: 2016年4月5日-4月18日
場所: 新宿ニコンサロン(東京都新宿区西新宿1丁目6−1新宿エルタワー28階)
営業時間: 10:30~18:30 会期中無休

写真をクリックすると、大きな画像が表示されます。環境によっては表示に時間がかかる場合があります。

    BOOK

    『STILL LIFE』

    『STILL LIFE』(PRELIBRI)
    一之瀬ちひろ

    注目の写真家一之瀬ちひろが、約11年間にわたり撮り続けてきた、東京、ロンドン、バーゼル、アムステルダム、ウィーン、バンクーバー、ニューヨーク、陸前高田などの日常。そこで出会った人々の部屋。生暖かく、拭えない人の営みの痕跡。強く声を荒げるのではなく、ささやくように、その一瞬をそっと留めた、「まなざす」行為が収録された写真集。(解説文:松浦弥太郎)  3780円

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