いのちのつながり心に深く 映画『2つ目の窓』河瀬監督

  • 2014年7月30日
河瀬直美監督 (撮影 家老芳美)

  • 河瀬直美監督 (撮影 家老芳美)

  • 河瀬直美監督 (撮影 家老芳美)

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  • 河瀬直美監督 (撮影 家老芳美)

  • 河瀬直美監督 (撮影 家老芳美)

  • 『2つ目の窓』©2014“FUTATSUME NO MADO” JFP, CDC, ARTE FC, LM.

 カンヌ国際映画祭となじみの深い日本人監督と言えば、河瀬直美だろう。1997年、自身にとって初の35ミリ作品「萌(もえ)の朱雀(すざく)」でカメラ・ドール(新人賞)を受賞。2007年に出品した「殯(もがり)の森」では2席のグランプリ(審査員特別賞)に輝く。さらに、09年には映画祭に貢献した監督に贈られる「金の馬車賞」を女性、アジア人で初めて受賞。昨年はコンペティション部門の審査員に選出されたが、これまた日本人の映画監督としては初めてのことだった。

 今年のカンヌ国際映画祭に出品された最新作「2つ目の窓」が公開された。奄美大島を舞台に、高校生の少年少女の恋と成長を通して、つながっていく命を描く。

 出身地である奈良にこだわって映画を撮って来た監督だが、今回は自身のルーツとなる奄美大島を舞台に据えた。聞けば、監督自身、奄美がルーツだと知ったのはまだ数年前のこと。実の母と養母と旅行中、途中一緒になった祖母と4人で夕食をとっている際に知った。祖母や母、自分自身、そしてお腹にいた子供……。いのちのつながりを感じずにはいられなかったという。その旅行から数年後、2008年に初めて奄美大島に立って圧倒された。

 「その時にお祭り(八月踊)があると聞いてまた行ったんですが、『これを映画に残したい!』と思いました。ただ、八月踊は地元の人たちとの交流がないと絶対に撮れません。奈良ならコミュニティーがあるのでつくりやすいですが、奄美はルーツがあるとはいえ初めて撮る場所。“絵”につなげていくには、地元の方々と交流を重ねていく必要があった。そこは時間をかけて丁寧に関係を築いていきました」

 生命の源である海が見せるさまざまな“顔”は、映画の見どころの一つだ。穏やかな凪(なぎ)もあれば、たけり狂う恐ろしい顔もある。少年と少女が魚のように自由自在に泳ぎ回る澄んだ海中と光の輝きは、まるで海が2人を祝福しているかのように美しい。

 「奄美の海では、なぜ生き物は海に上がってきたんだろうなあ、ということも考えました。常田富士男さん演じる亀爺(じい)は、波打ち際でずっとそういうことを考えながら生きている。『海の生命にとってみれば、浜辺は墓場なんだよね』という彼の言葉に、確かにそうだなと。海が育んでいるものは人間には見えづらい。ですが、地球のほとんどが海で覆われている。私は海がすごく怖かったんですが、みんなと一緒に素潜りをして海がすごく豊かな場所だと知った。人間はもっとこのことを知ったほうがいいなと思ったんですよね」

 そこかしこに感じる命のつながり。中でも監督が絶対に入れたいと思った場面がある。ヤギの屠畜(とちく)シーンだ。 「すごく繊細ですが、私たちは命をいただくのだから絶対に必要でした。奄美の文化ではヤギと豚は映画のようにしめて食べる。2度出てきますが2度目は子供たちを立ち合わせることに意味がありました。彼らに命のありようを伝えていかなければなりませんから。1頭1頭解体して命をいただくことは、すごくありがたいこと。逆に今、私たちがパックで食べている肉は、機械でパーンパーンと解体されていく。(そのシーンを見たら)そちらのほうが違和感を感じるはずです。(こんなことをしている)人間ってなんなんだろう? そんな“気持ち悪さ”があると思います」

 初めてづくしの撮影だったが、満月が撮れたのも台風シーンも思惑通り。スケジュールは「まるで神がかり」だったという。神がかりといえば、映画になる前、12年の暮れにユタ神様にスタッフが見てもらったら突然、ユタ神様が監督のほうを向いて「あなたです! あなたが奄美に縁があるんですよね。奄美に来ることになるから」と言われたそうだ。「まだ資金も集まっておらず、キャストも決まっていないような段階でしたが、年が空ければ徐々に動き出すからと。春になってから動き出すと言われて、実際にそうなりました」

 奄美にはものすごい数の神様がいるという。それは波だったり石ころだったり風だったり。草の葉1枚1枚にも神様が宿っているらしい。監督自身、奄美に行くとそんな気配をすごく感じやすくなっていたそうだ。

 本作を撮って、「新たなものに出会えたこと、自分と先祖とつなぐことができる作品をこの世に残せたことがうれしかった」と監督。「次作が楽しみですね」と声をかけると、「もう始まってます」と力強い答えが。新たな窓が開いたのは間違いなさそうだ。

(文・坂口さゆり)

   ◇

『2つ目の窓』
2014年7月26日全国ロードショー
公式サイト:http://futatsume-no-mado.com/
監督・脚本:河瀬直美
出演:村上虹郎、吉永淳、杉本哲太、松田美由紀、渡辺真起子、村上淳、榊英雄、常田富士男
企画・制作プロダクション:組画
配給:アスミック・エース
©2014“FUTATSUME NO MADO” JFP, CDC, ARTE FC, LM.

【作品紹介】
 神の島・奄美大島を舞台に、二人の少年少女の初恋と成長を通して描かれるのは、限りある時間の中で人が持つべき「生きる覚悟」と、人生に真摯に向き合う者たちの愛と無常。
 魂が浄化されるような壮大な自然の中で、生きとし生けるものすべてに宿る「希望」が胸を打つ。
 カンヌ国際映画祭・公式上映作品。
 世界が絶賛した河瀬直美の最新作にして最高傑作が、日本公開へ。
 「この世界は、美しい」と語る河瀬直美が贈る、繋がっていく命の奇跡。

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