今、「まちの書店」が必要な理由 内沼晋太郎

  • 2014年9月29日
内沼晋太郎さん(撮影 石野明子)

  • 内沼晋太郎さん(撮影 石野明子)

  • 「B&B」の店内

  • 「B&B」の店内

  • 内沼晋太郎さん

  • ガラスに刻まれたロゴマーク

 ブック・コーディネーターの内沼晋太郎さん(34)が東京・下北沢に書店「B&B」をオープンさせて2年になる。店を開いた理由は明快だ。

「単純にそういう本屋がないと嫌だから」

 それまで、本をめぐるさまざまな企画を仕掛けてきた。たとえば、雑貨や洋服の店に本の売り場を作ったり、カフェで「文庫本と飲み物」をセットにして出したり。あるいは、売り物の古本に自由に書き込みができるようにして“世界に一冊しかない本”として売ってみたり――。

 内沼さんは、小さな書店が次々と消えていく中、あえて「まちの書店」を作りたいと思った。

「僕だってamazonで本を買うこともあります。でも、自分が暮らしたり、働いたりしている駅の前にあって、何か新しい発見をしたり、知的好奇心をそそられたりするような場所としての本屋が好きですし、そういう店があってほしいと思うんです」

 ただ、本の売り上げだけで経営を成り立たせるのは難しい。利益を確保するために、本を商品としてとらえ、売れるラインナップを揃えなくてはならなくなるからだ。

「売れる本がいい本とは限らないだけに、売れるものをメインにした売り場を作るのは嫌なんです。だから別のことで収益をあげながら、本は自分たちがいいと思えるものをじっくり選んで売っていく。それを続けることで、『あの本屋にはこんな本がある』とか、『あそこに行けば面白い本が見つかる』と思ってもらえるようになります」

 店名の「B&B」は「Book & Beer」の略。その名の通り、客はビールやドリンクを飲みながら本を物色でき、夜になれば有料のトークイベントを楽しめる。ほろ酔い気分で個性豊かな棚を眺めるのは心地がいいし、イベントで新たな発見や出会いがあると幸せな気分になる。「B&B」とは、そんな楽しみ方ができる書店なのだ。

 とはいえ、毎日イベントを開き続けるのは大変ではないだろうか。

「本は毎日200~300冊、1年間で8万冊も刊行されています。本が出版され続ける限り著者がいて、その本についてしゃべってもらえる。ネタがなくなることはないんです」

 イベントの入場料と、ドリンク代は店の収益となる。実際、本、イベント、ドリンクの売り上げは三位一体で、どれが欠けても成り立たないという。ただ、そのため、売れる本に縛られることなく、本のセレクトにこだわりを持つ自由を得ることができている。

 内沼さんが「B&B」を始めるにあたって意識してきたのは「メディアとしての本屋」という視点だった。店の棚にどんな本を並べるか。売り場自体を編集し、それに関連したイベントを行う。本の品揃えやイベントのラインナップによって、ほかの店にはない価値を打ち出すことができれば、足を運んでくれる人が増えるはずだと考えてきた。

「この2年で、これまで下北沢にゆかりがなかった人たちを呼んで来ることもできるようになってきました。彼らは下北沢で食べたり買い物をしたりして、この街が好きになるかもしれない。それは、下北沢に店を構えている僕らにとっても意味のあること。街が元気になれば、ここに暮らし、働いている人たちにとってもいい相乗効果が生まれます」

 まちの本屋が人を集める装置となる。それが「メディアとしての本屋」という意味でもあるという。

    ◇

内沼晋太郎(うちぬま・しんたろう)
ブック・コーディネイター/クリエイティブ・ディレクター。1980年生まれ。本とアイデアのレーベル「numabooks」代表。著書に『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(朝日新聞出版)、『本の逆襲』(朝日出版社)。

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