bookcafe

<7>手に取ることのできる本というアートを

  • 文 吉川明子 写真 石野明子
  • 2015年1月8日

 思わず「おじゃまします~」と漏らしてしまいそうなたたずまいだ。「MOTOYA Book・Cafe・Gallery」は、東京・初台の商店街から奥まったところにある一戸建て。家の造りは昭和っぽいが、白い壁に映える空色のポストとドアからはヨーロッパらしさが漂い、1階のフリースペースにはインスタレーション・アートが飾られている。

 パラレルな世界に迷い込んでしまったかのように思ってしまうのは、この不思議なギャップのせいかもしれない。

 白を基調としたリビングルームのような空間の壁には、個性的な洋書がディスプレーされている。ときにはギャラリースペースとして、アーティストの作品が展示されることもある。

「“日常にアートを”がコンセプトで、自宅や友達の家でアートや本を見てもらうような空間を作りたかったんです」

 オーナーの本屋(もとや)暁子さんは言う。

 元々、デザイン関係の仕事をしていた本屋さん。かつて1年間ロンドンで暮らした時、気軽にアートを楽しめるギャラリーが多く、個人宅で作品を展示しているところもあったのが印象的だった。帰国後、自分でもそんな場所を作ってみたくなった。

「アート作品を自宅に飾るときと同じように、ここにもスポットライトがないんです」

 本棚に並ぶ約200冊の本はアート系の洋書が中心。自宅のソファでくつろぐような感覚で、じっくり本の世界に浸ることができる。その一角には手製本の本も並ぶ。マッチ箱よりも小さな本、和綴(と)じの本、蛇腹のように広がる本……。世界にひとつの作品だ。

「凝った装丁や、丁寧に製本された本が好きなんです。装丁に惹(ひ)かれて衝動買いすることも多くて」

 手製本の魅力を多くの人に広めたいと、ブックバインダーの津村明子さんを講師に迎える、製本ワークショップを定期的に開催している。

「電子書籍が普及しつつありますが、本には手に取ってページをめくって、何かを感じられる魅力があります。そんな良さを伝えていきたいんです」

 随所に工夫が凝らされた装丁の本を手に取ると、所有したい衝動に駆られる。本は最も身近なアート作品の一つなのだろう。

(次回は1月22日に掲載予定です)

■オススメの3冊

『Ballad』(Blexbolex)
 フランス人グラフィックアーティストの絵本。カラフルなイラストにシンプルな言葉が連なる。「絵がかわいらしくて、色もきれい。子ども向けなのですが、大人も思わず読み進めてしまうんです」

『The Night Life of TREES』(Bhajju Shyam、Durga Bai、Sirish Rao)
 インド・ゴンド族のアーティストによる緻密なイラストを、インドの小さな製本工場がシルクスクリーンで印刷し、手作りで作った絵本。「手漉きの紙の質感もよく、部屋に飾っておきたい一冊です」

『Supplemento al Dizionario italiano』(Bruno Munari)
 イタリア人がよく使うジェスチャーを紹介したビジュアルブック。「イタリア・デザイン界の巨匠、ブルーノ・ムナリが作った本で、友人がイタリアで買ってきてくれたものです」

    ◇

MOTOYA Book・Cafe・Gallery
渋谷区初台2-24-7
03-6362-2082
http://www.mo-to-ya.com/

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