ADウォッチ

「行くぜ、東北。」W受賞 <カンヌライオンズ2015>

  • 2015年7月1日

JR東日本「行くぜ、東北。」キャンペーンのポスターの一つ=JR東日本のウェブサイトから

写真:「行くぜ、東北。」で、デザイン部門の金賞を受賞した電通の八木義博さん=仏・カンヌ 「行くぜ、東北。」で、デザイン部門の金賞を受賞した電通の八木義博さん=仏・カンヌ

写真:「行くぜ、東北。」キャンペーンで、「カンヌライオンズ 国際クリエーティビティー・フェスティバル」デザイン部門の金賞を受賞した電通の八木義博さん(中)ら=仏・カンヌ 「行くぜ、東北。」キャンペーンで、「カンヌライオンズ 国際クリエーティビティー・フェスティバル」デザイン部門の金賞を受賞した電通の八木義博さん(中)ら=仏・カンヌ

[PR]

 2011年から続くJR東日本のキャンペーン「行くぜ、東北。」は今年、カンヌライオンズの金賞に加え、やはり世界三大広告祭の一つ「One Show」のデザイン部門でもグランプリを受賞した。このキャンペーンを一貫して手がけ、12年にはカンヌライオンズの審査員も務めた電通のクリエーティブディレクター・八木義博さんに話を聞いた。

 ――「行くぜ、東北。」キャンペーンについて教えてください。

 3・11に震災があって、クリエーティブディレクターの高崎卓馬さんと「何かできることをしよう」と話し合っていて、「行くぜ、東北。」の言葉が出てきました。かけ声が大事だと思っていて、東北に行くことが最大の復興支援だ、という思いで5年間続けています。

 震災直後、東京でも駅は節電モードで真っ暗。ふさがった気持ち、何か重たい空気がみんなにあった。とにかく目が覚めるようなカラフルな表現にして、刺激的でポップに、気持ちを変えようというメッセージを発信しました。

 「行くぜ、東北。」がみんなの合言葉になってきた実感があって、ポスターも季節の風物詩になってきたように思います。世の中の反応が見やすい時代なので、こっちもインタラクティブに、柔軟に応えていきたい。みんながマネしてくれるのがうれしい。実際に自分たちでポスターを作って、「行くぜ、東北。」と書いてSNSで投稿する人も出てきて、みんなが遊んでくれるようになりました。女子高生が電車を「かわいい」と言ってくれるようになって、そんな手応えが面白かったですね。

 ポスターは2、3週間で捨てられてしまうものですが、お客さんの反応を見て、驚かせ合いをしながら楽しんで作っています。

 ――今回、ローカル線を主役にしたのはなぜですか。

 当初「行くぜ、東北。」では、人気があってかっこいい、新幹線を主役にしたビジュアルを作りました。キャンペーンで車両基地を撮影したときに、整備士さんが「この赤い汽車を『赤鬼』って呼んでるんだよね」とか「ブレーキの効き方に癖があるんだよ」などと、我が子のようにいろんなエピソードを話してくださって、ローカル線への感情を感じました。

 電車が本来持っている魅力、価値を掘り起こしたいと思いました。乗り物はヒーロー。海外の感覚でも本質的には変わらないと思います。ローカル線にもっといい気持ちで乗ったら、さらにいい旅になる。そう思いました。

 ――どのように撮影したのですか。

 電車の撮影はすごく難しい。とにかく安全第一なので運転士さんらの勤務を変えるわけにはいかないので、広告のために夜中に電車を走らせたりするわけにはいかない。普段の運行中に、太陽光のタイミングを待って、一日がかりで何度も撮影しました。朝から夕方まで何度も。

 写真は割とそのまま使っています。よく見ると汚れていたりするんですが、あえて手をいれていません。人のポートレートのように自然のままにしていて、生き物みたいに感じられる写真にしました。

 ――今年のカンヌライオンズ、どう感じていますか。

 今年は僕らの言葉で言うと、「For Good」、世の中にとっていいことをする、問題解決をするようなデザインクリエーティブが評価されるようになってきています。でもこの傾向が続けば、下手をすると無理が生じてくるのではないかと感じています。クリエーティブの仕事によって世の中にいいことをしようという目的で競い合うと、ひずみが生まれると思います。

 サイズの小さなモノも評価してほしい。パンフレットやポスターなどにはそれぞれの働きがあります。たとえ世界を救うような表現ではなくても、デザインの力で誰かが笑顔になることで、十分その役割を果たしていると思います。

 ――日本のデザインは毎年、カンヌで高く評価されています。

 日本のクラフトは繊細な技術、センス、美意識……海外にない表現をやってきたことが大きい一方、「デザイン」という言葉の意味が、海外とは違うところにあると感じています。日本は美術寄りで鑑賞し楽しむもの、海外は実用的なもので、計画性のある手法としてとらえられているのではないでしょうか。

 今年は大きいテーマを持ったデザインが響いていますが、「行くぜ、東北。」では無理のない表現ができたのが良かったと思います。震災後、ハッピーな表現は難しかったけど、「春が来た」とか「夏だ」とか、季節感を出して、駅の景色を変えて、無理なく「出かけたいな」という思いを演出できたのかな。

 ――八木さんが心がける、「プロの仕事」とはどんな仕事ですか。

 見た目をかっこよくする手法はいっぱいあって、すぐマネできるけど、いくらかっこよくても世の中に響かなければ意味がないと思う。表面上のデザインは見透かされる。そのクライアントや商品、ブランドの話をちゃんと聞いて理解し、本質に近づけたい。広告の表現は、その企業や商品の血液で動いていると思うので。(カンヌ=林亜季)

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

&wの最新情報をチェック


&wの最新情報をチェック

Shopping