life+design

靴べらの収納場所問題を解決

  • 文 杉江あこ
  • 2015年7月16日

  

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 玄関で靴を脱ぎ履きする日本の暮らしに必須のアイテム、それは靴べら。でも、収納場所が定まっていないという家は多いはず。山田佳一朗(41)がデザインした「コトリ」はそんな問題を新しい視点で解決した製品だ。

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 きっかけは自宅の玄関にある靴べらでした。壁のフックに引っ掛けるタイプだったのですが、靴べらを使った後は面倒なのか誰もフックに引っ掛けず、常に床に置きっぱなしの状態になっていたんです。片付けられていない状態はだらしなく、来客時には格好悪く思えて、いつも嫌だなと思っていました。

 これには問題が二つあります。まず、一つ目のモノに対する人の振る舞いが直らないのであれば、二つ目のシステム自体が良くないのではないかと思ったんです。そこで、置かれる環境も含め、靴べらのデザインを考え直してみました。また、靴べらをどこかに掛けるか掛けないかについて、その場所は壁だけとは限りません。玄関を見渡した時、私が改めて注目した場所は靴箱でした。

 試作品を二つ作りました。掛けて美しく見えるものと、掛けなくても美しく見えるものです。前者は靴箱に掛けるタイプで、当初は鳥の止まり木を意味する「パーチ」と名づけました。後者は靴箱の上に置くタイプで、ポンと置いておいてもだらしなく見えないものとして花をヒントにしました。形が似ていることから「カラー」と名付けました。

 2008年の国際見本市「インテリアライフスタイル」の若手デザイナーブースでこの二つを発表。私を推薦してくれたアッシュコンセプトの名児耶秀美さんが初日の朝にブースを見に来てくれて、「全部うちで商品化したい」と言ってくれました。

 お陰さまで、たくさんのメーカーからも商品化のオファーをいただき、紆余曲折を経てアッシュコンセプトでの商品化が決まりました。いずれのメーカーからも商品化の声がかかったのは「パーチ」の方。靴べらを靴箱にかけるというシンプルなアイデアが当時は新しかったのでしょう。しかし商品名が「パーチ」では分かりにくいということから、「コトリ」へと変更になりました。

 試作品作りの段階ではそれぞれに仮説を立ててスケッチをし、紙の模型で検証することを繰り返しました。今回は機能から形を考え、さらに「共感の領域」まで踏み込んだのが特徴です。紙を円すい形に丸め、下方を工夫して靴箱に載せてみると、まるで鳥が止まっているように見える。場所が場所だけに、外から鳥が入ってきたようでいいかもしれない。これが鳥に見えることで、人はつい靴べらを靴箱に掛けたくなるはず。そんな、人の感情に訴えるデザインにしたんです。

 自分の身の回りには問題解決すべきことがまだたくさんあると感じます。デザイン、製造、販売に関わる人々が「生き活きと」生活できること。それが私の目標。デザインはそのための手段の1つだと思っています。

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山田佳一朗(やまだ・かいちろう)
1997年武蔵野美術大学を卒業後、同研究室助手を経て、2004年よりKAICHIDESIGNを主宰。考える人、作る人、伝える人、使う人と共に考え、関わる人が生き活きと生活できるよう活動している。主な作品に「コトリ」のほか「酒器だるま(セラミック・ジャパン)」「クモノス(かみの工作所)」などがある。

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PROFILE

杉江あこ(すぎえ・あこ)

1973年、愛知県生まれ。95年から、デザイン、アート、文芸、暮らし、食、自然環境などを専門に、雑誌、書籍、ウェブマガジンの編集・執筆に携わる。2014年、「意と匠研究所」を下川一哉と共に設立。http://www.itoshow.co.jp

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