ADウォッチ

革命的な動画広告がグランプリを受賞 <カンヌライオンズ2015>

  • 2015年8月26日

  

  •   

  •   

  •   

  •   

  •   

 「プレロール広告」の革命的な作品と言われ、今年のカンヌライオンズのフィルム部門でグランプリを獲得したのが、米保険会社「GEICO」の動画広告。「そもそも、プレロール広告って何?」という方でもこの動画を見れば、その意味を理解してもらえるはず。

 この作品のすごいところは「スキップせずについ見てしまう」。これに尽きる。YouTubeなどの動画プラットフォームでは、無料で動画が見られる代わりに動画の前に広告が流れることがよくある。その動画こそ「プレロール広告」であり、その多くはスキップできるよう、数秒間見た後にスキップボタンが画面上に出てくる。目当ての動画を少しでも早く見たい視聴者は、広告が始まるとすぐにスキップボタンを押す。

 そのため、制作側は最初の数秒にインパクトを置いた作りにしたり、情報を詰め込んだりする。だがこの動画は、プレロール広告の「邪魔なもの」という概念を払拭し、新境地を切り開いた。

   ◇

 両親と男の子、女の子の4人暮らしの食卓にはナポリタンだろうか、おいしそうなパスタの皿が一人一皿ずつ並ぶ。お母さんが「Don't thank me, thank the savings」(私に感謝するのではなくて、貯金に感謝して)と話し、「いただきます」とばかりにみんなが口に運ぼうとする。ここで画面は止まり、中央に「GEICO」のロゴが出てきた。CMはここでいったん終わりなのだ。

 さあスキップしようと思っていると、突然大きな犬が画面の中に入ってきた。何かを物色するように近づいてきて、テーブルの上に登り始めたではないか。画面がストップしているように見えているのは、実は、役者たちが必死で動きを止める演技をしているのだった。犬はまず、お父さんのパスタをペロリ。続いてしっぽを降りながら女の子のパスタもペロリ。さらに、男の子のパスタを食べながら机の上のミルクやサラダをひっくり返すなどやりたい放題。最後にお母さんが手にしているボウルの中身まで平らげた。

 結局、次に何が起こるのかと気になっているうちに、スキップしないまま見終わってしまった。強烈に印象に残っているのは暴れ回る犬とGEICO社のロゴだけ。カンヌの表彰式でこの動画が流れると、会場は笑いに包まれた。このほかにも、「ハイタッチ」 「清掃員」 「エレベーター」などの動画シリーズがあり、どれも思わず吹き出してしまうシチュエーションだ。

 世界最大級の広告祭であるカンヌライオンズ。映画館での劇場コマーシャルの創造性を競う大会として1954年に始まった歴史の長い広告祭だが、現在はメディアやコミュニケーションの変化に伴い、アワードは他部門化。今年は計17部門で審査が繰り広げられた。そんな激しい競争がある中、劇場CMの時代から始まった最も歴史と伝統あるアワードである、フィルム(動画)部門のグランプリを獲得したということが、この作品のすごさを物語っている。

 フィルム部門の審査員を務めた博報堂エグゼクティブクリエイティブディレクターの長谷部守彦氏は、「オンラインフィルムの分野で、Unskippable(スキップさせないこと)の挑戦を成し遂げた作品」と話した。嫌がられがちなプレロール広告を、最後までスキップさせないで見せるアイデアが「Game Changing!」と評価されたという。

 同様に、視聴者心理の裏をかいたことで評価されたのが、ふせんのポストイットで有名な「3M」がロシアで行ったキャンペーン。あるサイトを訪れた人にだけ、何度も再訪を促すようなバナー広告を配信する「リターゲティング広告」のわずらわしさを払拭し、劇的に便利なツールへと変えた。

 この作品は、メディア部門で金賞を受賞。バナー広告の中のポストイットに何かメモを書き込んでおけば、再度リターゲティング広告として表示されたときに書き込んだメモがそのまま出てくるという、備忘録のように使える仕組みだ。これもまさしく「Game Changing」と言える例だろう。

(メディアラボ・林亜季)

[PR]
このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

&wの最新情報をチェック


&wの最新情報をチェック

Shopping