食べておいしく見て楽しい 達人が選んだ「東京のたい焼き ほぼ百匹」

  • 2015年12月28日

たいやき神田達磨の「羽根付きたい焼き」(撮影:イワイサトシさん)

写真:イワイサトシさん イワイサトシさん

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 3000匹のたい焼き店を食べ歩いたデザイナーが、都内のおいしいたい焼きを厳選した「東京のたい焼き ほぼ百匹手帖」(立東舎/リットーミュージック)を出版した。味の紹介はもちろん、全てのたい焼きの「魚影」も掲載。グルメガイドであると同時に多彩な和のデザインの妙も楽しめるユニークなたい焼き図鑑となっている。

>>イワイさん撮影のたい焼き図鑑

 筆者のイワイサトシさん(47)は子どものころから大のあんこ好き。大福、どら焼き、金つば、上生菓子……と和菓子を食べまくる生活を続けてきた。一時は体重が100キロを突破し、一念発起して30キロの減量に成功。甘味断ちであんこへの渇望がピーク状態だった3年前、甘味処の店頭のたい焼きと「目が合ってしまった」のが巡礼の旅の始まりだった。

 味はもちろん、店ごとに異なる姿かたちに引きつけられた。評判の店をネットで探しては足を運んだ。職場や取引先に差し入れるうちに、イワイさんのたい焼き好きはすっかり有名に。同僚の勧めで匿名ブログで食べ歩きの記録を始めたところ、知人の編集者の目に止まり書籍化が決まった。

 本には23区内と多摩地区、そして書籍用に取材した伊豆大島と歌舞伎座の店の逸品102匹を収録する。巷のたい焼き屋にはクリームや味噌バター、チーズやトマトといった塩味系など多彩なフィリングが次々登場しているが、本書で紹介するのは「基本のき」のあんこ限定。最寄り駅から店への道筋を記したプロローグに続き、手にした時のボリューム感、皮の焼き具合や質感、あんの甘さや香り、外観のデザイン、アツアツと冷めてからの味の違いなどを微に入り細をうがって報告する。

 「『たい焼き一匹でよくあんなに書くことがあるね』と言われるけれど、実際に食べるとけっこう違いがあるんです。特にあんこは得意分野。和菓子屋さんのたい焼きは、上品で舌触りもなめらか。たい焼き専門店は粒が立ってちょっと塩気もきいたキリッとした味や、のどにクッと張り付くような甘さがあったりします。あん専門店から取り寄せてたものはふっくらとしている。お年寄りが副業でやっているような店はペースト状に近い業務用のものを使っていることが多いですね」

 逆に皮の表現にはてこずった。慎重に味わっているつもりでも、いつしかあんの印象にかき消されてしまいがち。まずあんこをメインに味わい、次は皮に集中、といった具合に、1度に2匹食べるのが取材の基本になった。

 現在のたい焼きのルーツは、明治42年に大阪から東京に出てきた職人が始めた「浪花家」だとされる。ここからのれん分けした麻布十番の「浪花家総本店」、そして人形町の「柳屋」と四谷見附の「たいやき わかば」がたい焼き通に定評のある”御三家”。「ざっと調べたところ都内のたい焼き屋は300件前後。他都市の倍以上の店がある。西日本では今川焼きや回転焼きが一般的なので、たい焼きは東京名物と言っていい」とイワイさん。

 その名物も、時代とともに様々に変化している。うろこやひれの模様がソフトフォーカス気味の鯛は、焼き型が使い込まれて角がとれた老舗のあかし。テフロンやレーザー加工の登場で、複雑な絵柄の表現も可能になった。同系列の店でも、焼く人によって皮の質感や色目は変わって来る。「ひとつとして同じものがないから見るたびに楽しい。たい焼きは『食べる民芸品』なんですよ」

 ”魚種交代”も盛んだ。最近のトレンドは、鯛の外周部分にも薄く生地を流した「羽根付き」。外側はカリカリ、身の部分はふわふわと、食感の違いを楽しめる。「プレーンのたい焼き2枚であんこをはさむサンド型も増えている。あんをはさんだ分厚いたい焼きを鉄板の上に立てて側面を焼いて仕上げるんです。その手順も面白くて、見ていて飽きません」。タピオカ粉を使った白いたい焼きは、ブームが去って見かけなくなった。代わってクロワッサンたい焼きのチェーン店が台頭し、パイやデニッシュ風の油分の多い生地のたい焼きも増殖中。一方で、昔ながらの薄皮もじわじわと復権しているという。

 「『およげ!たい焼きくん』ブームの頃に始めたお店は、高齢化で閉店するところも。後継者問題が心配だったのですが、屋台でやっていた若手が店舗を構えるなど、新世代の店もあちこちに出てきた。いまはちょうど転換期。新旧の味がいい具合で共存し、面白いことになっています」

 そんな東京スイーツの魅力をじっくり楽しむために、イワイさんは「5回にわけて食べてほしい」と勧める。その手順とは――
 ①焼きたてをはふはふ言いながら食べる
 ②5分程度待って持つのに苦労しない程度に冷めた皮とアツアツのあんのバランスを味わう
 ③皮もあんもほどよくホカホカのところをガブッと
 ④常温を和菓子としていただく
 ⑤冷えたものを焼き直す。水分が飛んだ皮はトーストのようにクリスピー、あんは周囲がほんのりと温かく「焼きたてとはまた違うおいしさです」。オーブンやトースターで片面を3分程度焼いた後、レンジに30秒ほどかけて芯を温めるのがイワイさん流。

 ホカホカのたい焼きがひときわおいしい季節。正月休みに食べ比べを試してみては?

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