インタビュー

ブログ「Maru in Michigan」が始まるまで ジョンソン祥子さん(前編)

  • 2016年9月13日

ジョンソン祥子さん(撮影 石野明子)
この夏、一家で日本で過ごした。東京・新宿区の新潮社で

  • ジョンソン祥子さん(撮影 石野明子)
    この夏、一家で日本で過ごした。東京・新宿区の新潮社で

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  • 一茶くんと愛犬マル(米国ミシガン州 撮影/ジョンソン祥子さん)

  • 撮影/ジョンソン祥子さん

 元気いっぱいのやんちゃ少年一茶くんと、のんびりマイペースで笑顔がチャーミングな柴犬マルちゃんのほのぼのとした日々の暮らしが、アメリカ・ミシガン州の美しい四季とともにつづられる、ジョンソン祥子さんの大人気ブログ「Maru in Michigan」。今年3月、『すっきり、楽しく、自由に暮らす~Maru in Michigan~』(新潮社)を出版した。
 “一番の親友”である夫との出会いから、ミシガンでマルちゃんと暮らすことになるまでを、ジョンソン祥子さんが一時帰国中に振り返った。(文・中津海麻子)

ジョンソン祥子さん撮影 ミシガンの写真はこちらから

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――祥子さんはどんな家庭で生まれ、育ったのですか?

 普通のサラリーマン家庭です。母が編み物が好きで、プロのニッターをしていたので、小さい頃着ていたセーターはすべて母の手編みでした。

――大学ではアメリカ文学を専攻されていたそうですが、アメリカや英語に興味を持ったきっかけは?

 英語が好きで、中学生の頃から海外に行ってみたいと思っていました。自由な雰囲気に憧れていたのかもしれません。大学に進むと、大きな休みには海外旅行に行きました。映画も「ひとりで見たいときに見る」というタイプだったので、パッケージツアーなどは使わず、自分で計画を立ててタイに貧乏旅行したり、アメリカにいる友人を訪ねたり、一人旅を楽しみました。

――大学卒業後は?

 海外のハイブランドに就職し、セールススタッフの仕事に就きました。とても規律が厳しい職場でしたが、ハイブランドであるがゆえに売り上げのノルマなどはなく、そのブランドの歴史や夢を売るのが主な仕事でした。たとえばトランク。革製で重くて値段が高く、現実的に使うことを考えたら最先端の軽量のもののほうがいいのですが、「この部分は手縫いで、釘もすべて手作業で打ち込まれています」「バゲージクレームで受け取るときには、必ずビニールがかけられて一番最初に出てくるんですよ」というような、商品ブランドにまつわるストーリーをお伝えするのです。そんなふうに、私自身が心ひかれること、紹介したいと思うことを伝えるのが好きだった。それは、今のブログや本を書くことにつながっているな、と感じています。

――仕事でフランスに3カ月ほど行ったことが転機になったとか。

 本国で研修する機会を得たのです。ブランドのことをさらに深く知り、極めようと思いました。ところが実際に行ってみると、世界の広さと大きさを目の当たりにし、自分ってなんてちっちゃいんだろうと思い知らされた。ステップアップしようと渡った海外に、私の居場所なんてないと感じてしまったのです。

 帰国し、落ち込んだ気持ちのまま以前から通っていた英会話スクールに顔を出しました。すると、久しぶりに会った担当講師がいきなり「どうだった?」と。ストレートすぎる質問に心がえぐられるようでした。事情を知らない彼に他意なんてなかったんですけどね(笑)。でも、一緒におすしを食べに行き、私の話に真剣に耳を傾けてくれました。正直、答えを求めているわけじゃなく、ただただ誰かに聞いてほしかった。だから、すごく救われました。相手が外国人だから英語を使わなければならず、日本語よりも素直に話せたこともよかったのかも。そのときの講師がジャスティン、今の夫です。

 このことがきっかけで付き合うようになり、結婚。ジャスティンの故郷であるアメリカ・ミシガン州に渡りました。

――ミシガン州の印象は?

 ものすごい田舎! 夫が生まれ育った村は人口が300人ぐらいで、半分は親戚みたいな(笑)。正直、とんでもないところに来ちゃったな、と思いました。夫の家族が歓迎してくれて、裏表のない人たちだったことは救いでしたが、とはいえ言葉の壁は高かった。今は「まあ、いいや」と思えるようになりました。言葉が通じても理解し合えない人はいるし、逆に、言葉がわからなくても心が通じることはあるから。ただ、あのころは話せないことが惨めで。もっと自分を伸ばそうと、夫と二人、ニューヨークへ移住したんです。

 ニューヨークは、精神的な自由はあるけれど、モノの値段がとにかく高いし、人の心が渇いている印象でした。約2年、二人で仕事をしながらアッパーイーストサイドの小さなアパートで暮らしました。そして気付いたんです。街は「舞台」で、それ以上でもそれ以下でもない。夫という一番の友だちがいれば、舞台はどこだっていい。だから、ミシガンに帰ろうと思えた。ニューヨークに住んでよかったのは、もうニューヨークに住みたいと思わなくてよくなったことですね。

――ミシガンに移り住むのと同時に、柴犬マルちゃんを迎え入れます。きっかけは?

 ジャスティンとはずっと、「引っ越したら犬を飼いたいね」と話していたんです。夫の実家にいるイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの「マック先輩」がブログに時々登場しますが、夫は幼いころから犬がいるのが当たり前という中で育ってきて。私はパグやフレンチブルドッグなどの鼻ぺちゃ犬がいいなと思っていましたが、夫は日本にいるころに柴犬にほれ込んでいたみたい。体は大きくないけれど大型犬みたいに思いっきり遊べそうなところが気に入ったようです。

 ある日、「子犬が産まれた」とブリーダーから写真が送られてきました。その中で一番かわいげのないのがマルちゃんだった(笑)。ほかの子はニコニコして尻尾を振っている様子なのに、一匹だけ、なんだかシュンとして写っていた。すぐに「この子にしよう」と夫と意見が一致しました。初対面なのに愛想のよすぎる人は信頼できないし、私自身いきなり愛想よくなんてできない。この子は私だ――。そう思ったんです。

――そしてブログ「Maru in Michigan」がスタートします。

 きっかけは携帯電話を買ったことですが、ちょっと日本語に飢えていたんですね。そして、私が撮りたいものを撮った写真を通じて、「私はここにいるよ」と伝えたかった。その「撮りたい被写体」がマルちゃんでした。写真は初心者で、趣味で一眼レフを使いこなしていた夫に手ほどきしてもらいました。普通はカメラの仕組みや撮影のノウハウを勉強してから撮るんでしょうけれど、私は「もっと明るく撮りたい」「走るマルちゃんを撮るにはどうしたらいいの?」と、逆引き辞書のように夫に質問できたことで、効率よく自分が撮りたい写真が撮れるようになっていきました。

後編へつづく

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ジョンソン祥子(じょんそん・さちこ)

アメリカ人男性との国際結婚を機に渡米。在米12年目。現在は夫と息子の一茶君、柴犬のマルとともに、アメリカ・ミシガン州に暮らす。2008年からブログ「Maru in Michigan」で写真を公開。日本のみならず、海外の雑誌等でも取りあげられる人気ブログとなる。著書に『ことばはいらない~Maru in Michigan~』『ぼくのともだち~Maru in Michigan~』『いつもとなりに~Maru in Michigan~』『すっきり、楽しく、自由に暮らす~Maru in Michigan~』(いずれも新潮社)がある。

ブログ Maru in Michiganはこちら

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