インタビュー

米・ミシガンの暮らしが教えてくれること ジョンソン祥子さん(後編)

  • 2016年9月15日

ジョンソンさん一家(撮影 石野明子)

  • ジョンソンさん一家(撮影 石野明子)

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  • クリスマス(米国ミシガン州 撮影/ジョンソン祥子さん)

 人気のブログ「Maru in Michigan」。思わず笑顔がこぼれる「お茶丸コンビ」のほっこり写真に加え、ミシガンでのシンプルな暮らしぶり、パーティーやイベントのときのワクワクするようなインテリアやテーブルコーディネートが多くの読者の心をつかんでいる。ミシガンでの暮らし、子育てについて、ジョンソン祥子さんが語る。(文・中津海麻子)
前編から続く

ジョンソン祥子さん撮影 ミシガンの写真はこちらから

     ◇

――愛犬マルちゃんがやってきて4年後、一茶くんが誕生します。心配や不安はありませんでしたか?

 ありましたね。マルちゃんはちょっと意地悪なところがあるので(笑)、生まれてくる子とうまくいくためにはどうしたらいいのか、夫ジャスティンとたくさん話し合いました。でも、答えはわかっていました。マルちゃんを一番かわいがってあげれば、子どもとも必ず仲良くなれる……と。

 そして、一茶が生まれました。一茶は初めて会ったときからマルちゃんが大好き。でも、マルちゃんはやっぱりちょっと苦手だったみたい。それでも私は、子どもと犬は兄弟になれると、ブログを通じて伝えたいと思いました。そして「お茶丸」(一茶くんとマルちゃん)の写真を撮り始めました。マルちゃんは終わればおやつがもらえると我慢してくれたけれど、こちらが欲張って撮りすぎると一茶に「ガウッ!」ってすることも。けっして一茶に対して怒っているんじゃなくて、そうすれば私がやめるとわかっているんです。「お母さん、しつこい!」って(笑)。

――成長とともに、一茶くんとマルちゃんはまるで兄弟のような関係になっていきます。

 私の中では「こういう絵が撮りたい」という明確なストーリーがあって、あのブログは、実はその私の空想に現実を近づけていくファンタジーなのです。でも、あるときから、私が思い描いていたストーリーを超える瞬間が起きるようになった。一茶とマルちゃんがお互いを思い、心の距離が少しずつ少しずつ近づいていったんですね。そんなお茶丸に導かれるようにシャッターを切ることがどんどん増えていきました。

 「マル兄貴と弟分の一茶」という関係でしたが、一茶が幼稚園やお稽古事など家以外で過ごす時間が増え、最近はすっかり兄弟が逆転しました。一茶が外で覚えてきたことをマルちゃんに教えたり、いたずらをしてみたり(笑)、絵本を読んであげたりしています。

――お茶丸の心温まる写真に加え、ミシガンの美しい四季、クリスマスやハロウィーンなどのイベントを楽しむ様子もブログにつづられています。ミシガンで暮らしてみて発見したことはありますか?

 日本に住んでいたころは、家族の誕生日もクリスマスも、ケーキやプレゼントを買ってきたりステキなレストランに行ったりしてお祝いするのが当たり前でした。一方、ミシガンにはケーキ屋もおしゃれなレストランも近くにありません。クリスマスも東京のようにイルミネーションを見に行く場所がない。だから「どうやって楽しもうか」とゼロから考えるところから始まります。秋のうちに森でもみの木を探しておいて、雪が降ったらそれを切りに行き、枯れた木片を拾ってきて白いペンキを吹きかけてオーナメントにして……。そうやってクリスマスを迎えるのです。ミシガンの人たちはみんなそういうことがとても上手。子どもも大人も一緒になって楽しみます。

 私の先生は、ジャスティンのお母さんです。家で過ごす時間が長いので、家に対する愛着も深く、季節ごとのインテリアをあれこれ考えるのも楽しい。生きているという実感を、ミシガンで暮らしていると感じることができます。

 あとは、シンプルなモノ選びができるようになりました。着飾ることは自分のためという人もいるとは思いますが、以前の私は「周りからこう見られたいから」という意識が強かった。だから、好みじゃない流行に乗り、来年は着ない洋服を買ったりもしていました。ミシガンでは周りの目を気にして虚勢をはる必要がないので、本当に自分にとって必要なもの、好きなものってなんだろう? と考えるようになりましたね。そして、「シンプルなものが好き」と気づくことができたんです。自分自身を知ったことで、なんだかとても自由になれたように思います。

――子育てで日米の違いを感じることはありますか? 心がけていることは?

 日本と一番違うと感じるのは、周りの目がゆるいこと。しつけはアメリカのほうが厳しいと感じますが、日本は周囲の目が厳しい。叱らなくてもいい場面でも、しつけをしていないと思われないように叱らなきゃいけないときがある。狭い国だから人との距離が近く、迷惑をかけないように、人の邪魔にならないように育てていかなければなりません。それに対して、ミシガンは物理的に広いので、バタバタしても大きな声を出しても大丈夫。許してあげられることが多いのは自由で気持ちいいな、と感じます。

 私は、犬と子どもが世界で一番素晴らしい存在だと思っているので、お茶丸から学ぼうという気持ちが強いですね。もちろん主導権を渡すわけではないですし、彼らに危険が及ぶときや人に危害を与えそうなときにはきちんと叱りますが、基本は私が彼らに近づきたいと思って育てています。

 あと、マルちゃんの存在は大きいかな。いつも一茶に「マルちゃんに優しくしてあげようね」と言っているのに、忙しさから私がマルちゃんに声を荒げてしまったことがあったんです。そしたら一茶が「ママ、ダメでしょ!」と。ハッとしました。そんなふうにお茶丸から教えられることは本当にたくさんあります。

 以前は、一茶に「こうなってほしい」という思いもありましたが、これまでも、これからも、この世の中に彼のような人はいない。たった一人の特別な人です。そんな一茶がまっすぐに自分の行きたい道、行くべき道を歩いていけるように、私は私の楽しい道を見つけ、邪魔をしないようにしたいですね。

――一人の女性として、この先に見ている風景は?

 あまり先は見ずに、「明日幸せならいいな」というふうに暮らしていきたいと思っていますが、ひとつ、やらなければいけないことがあります。それは、次の被写体を見つけること。もちろんお茶丸は撮り続けたいし、私たちから旅立っていくところも描きたいんだけど、それに頼っているときっと深い喪失感に襲われてしまうから。彼らは私の所有物ではない、と思っています。

 お茶丸もそうですが、私が撮りたいと思う被写体、それはつまり、自分自身です。今は母親の割合がとても大きいから「お母さん」というタイトルでブログや本を書いていますが、だんだん母親としての役割は必要なくなっていく。だから、「お母さん」以外の自分のタイトルを探したい。何より、夫婦仲良く健康で、日々の暮らしを大切にしていきたいですね。

おまけ:
一茶氏、特別インタビュー!

――今ハマってるのは?

 ウルトラマン! 一番好きなのはね、ウルトラセブン。アイスラッガー!(ジェスチャー付き)。歌だって歌えるよ。ウルトラマンゼロとかウルトラマンオーブとか平成ウルトラマンもいいけど、ボク的には昭和ウルトラマンの方が好き。昭和の怪獣もたくさん知ってるんだ。
(「昭和好きの少年です(笑)」と祥子さん)

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ジョンソン祥子(じょんそん・さちこ)

アメリカ人男性との国際結婚を機に渡米。在米12年目。現在は夫と息子の一茶君、柴犬のマルとともに、アメリカ・ミシガン州に暮らす。2008年からブログ「Maru in Michigan」で写真を公開。日本のみならず、海外の雑誌等でも取りあげられる人気ブログとなる。著書に『ことばはいらない~Maru in Michigan~』『ぼくのともだち~Maru in Michigan~』『いつもとなりに~Maru in Michigan~』『すっきり、楽しく、自由に暮らす~Maru in Michigan~』(いずれも新潮社)がある。

ブログ Maru in Michiganはこちら

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