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走り出す前に読みたい2冊。『世にも奇妙なマラソン大会』『ららのいた夏』

  • 文・羽根志美
  • 2016年12月5日

撮影/猪俣博史

写真:『世にも奇妙なマラソン大会』高野秀行・著 集英社文庫 562円(税込み) 『世にも奇妙なマラソン大会』高野秀行・著 集英社文庫 562円(税込み)

写真:『ららのいた夏』川上健一・著 集英社文庫 720円(税込み) 『ららのいた夏』川上健一・著 集英社文庫 720円(税込み)

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人は何のために走るのか
『世にも奇妙なマラソン大会』

 高野秀行さんのようなノンフィクション作家は体を張って小説のネタ探しをされているので、特に「フルマラソン」に対する概念が他の一般的な「マラソン好きな人」とは違うのだろうと思う。また早稲田大学探検部卒業、辺境愛好家が選択した奇妙なマラソン大会だけに、無謀にも「サハラ砂漠の大会」が選択されたのであろう。
 フルマラソンをいかに攻略するか……、などはほとんど触れていない。

 日本人は、記録、健康、自分のために走る人が多いけれど、欧米ではマラソンに対する考え方が全く違う。チャリティーとかボランティアの精神が根付いている。そのボランティア精神は開催地の人々にも浸透しており、読み進んでいくと人間関係の中に「奇妙なマラソン大会」の意味があることが分かる。

 フルマラソンは記録と闘っている人以外は、5時間前後走り続ける過酷なものだ。事前に体を調整することが一番大事な走りきるコツだが、走る前にこの書を読み、回想しながら走れるくらいリラックスして大会に臨めたら完走間違いないと思う。

湘南の風景も楽しめる
『ららのいた夏』

 すがすがしい青春ラブストーリーである。
 走ることが大好きでいつも笑顔の「坂本らら」とプロ野球選手を目指す「小林純也」の共通の好きなことが「マラソン」であり、いつも2人で湘南を背景に走る様子が描かれ、地元民だけに「あそこか、あそこだ」と風景を思い浮かべながら読み進めることができた。

 地元でない方も何となく2人が走った軌跡をたどりたくなるような、文章に青春のまぶしさを感じることができる。しかも主人公2人とも各スポーツ業界で記録をぬりかえるほどの名のある選手になっていく。

 しかし題名からもわかるように「ららのいた夏……」は過去形である。
 突然ららが病魔に襲われる。どんな物語か想像ができるくらいかもしれない。
 分かっていても終わりにかけて涙が出る。
 主人公と同世代の方よりも「あのころの気持ち」を思い出したいときに読んでほしい。

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PROFILE

羽根 志美(はね・ゆきみ)

湘南蔦屋書店 アウトドアコンシェルジュ。
前職はアウトドアメーカーの知識を生かし、
選書を行い、自らとにかくアウトドアが大好きな2児の母。
子どもから大人まで楽しめるアウトドアイベントも多く企画運営している。 >>湘南T-SITE 湘南蔦屋書店ホームページはこちら

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