MUSIC TALK

バンドからソロへ。本当にやってみたかったこと ハナレグミ 永積 崇(前編)

  • 2016年12月19日

撮影/篠塚ようこ

  • 撮影/篠塚ようこ

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 聴く者を優しく包み、ときに切なく響き、かと思えばファンキーでポップな世界にも連れていってもくれる。ハナレグミとして活動する永積 崇さんに聞いた、バンドとソロとコラボレーションと。(文・中津海麻子)

  ◇

山の中でカルチャーショックを受けてた

――幼いころの音楽の思い出は?

 僕が小さいころ、家族そろって車で出かけると、親がカーステでカセットテープをかけていました。伊東きよ子さんの「花と小父さん」とか覚えてるなぁ。井上陽水さんとかビリーバンバン、太田裕美さんも。両親がフォークソングが好きだったんです。

 あと、よく歌ってました。車の中でも家でも。両親は「静かにしなさい」なんて言わず、熱唱する僕をおもしろがってくれて(笑)。

――ボーカリストの原点はそのころにあったんですね?

 ホントそうですね。正月やクリスマスで親戚が集まると、うれしくてみんなの前で歌ったり。リサイタルですよ(笑)。たまにギターが弾けるおじさんがやってくると、おじさんのギターに合わせて歌ったり。あと、小学校のころ、実家の裏にあった団地の夏祭りではカラオケ大会によく参加してました。地元のおじいさんやおばあさんたちがニコニコして聴いてくれたのがうれしくて。歌うことはもちろん、僕の歌を誰かが聴いて喜んでくれるっていうのが、なんかすごく楽しかったですね。

――好きな曲や歌手は?

 それはもう、マイケル・ジャクソン! 親戚に新しいもの好きのお兄ちゃんがいて、遊びに行ったとき「おもしろいのがあるぞ」と、「スリラー」や「Beat It」が収録されたビデオを見せてくれたんです。雷に打たれたような衝撃だった。もっと見たくて見たくて仕方なくて、「僕、お兄ちゃんの部屋から出ない!」って(笑)。それも小学校のころのことです。

――自分で演奏するようになったのは?

 高2ぐらいから。同級生に楽器弾いてるやつらがいっぱいいたので、コードの押さえ方とかを教えてもらいました。学園祭ではバンドを組んでライブをしたり。ザ・ブーム、ボ・ガンボスにディー・ライトなど、ジャンルとか関係なく、かっこいいと思っているものをメンバーそれぞれが持ち寄って、やってました。ちょうどそのころはクラブシーンが盛り上がってて、周りも僕もいろんな音楽に興味があった。ブルースやレゲエも好きで、ボブ・マーリーなんかもよく聴きましたね。

――ちょうど「渋谷系」が盛り上がってきた時期で。

 でしたね。でも、僕の高校は埼玉県の山奥の、駅から歩くと2時間ぐらいかかるような場所にあったから、渋谷なんて遠くて遠くて(笑)。実家は東京だけど、渋谷も新宿も別世界。都心に出て遊ぶことはなかったですね。詳しい子たちから「フリッパーズとか超かっこいいよ」なんて教えてもらって聴いたり、六本木のクラブの写真を回し見して「イエローってこういうところなんだ、スゲー!」って感動したり。山の中でカルチャーショックを受けてました(笑)。

専門学校時代の出会い

――高校卒業後は音楽の専門学校に進みます。

 当時ブルースがすごく好きで、インプロヴィゼーションを高3ぐらいで知り、学校でまねごとみたいなことをやっていたんです。それがおもしろくて、音楽がやりたいなぁと。ブルースが勉強できる学校はなかったけれど、その専門学校にはジャズ科があって。一つ上に通っている先輩がいて「スゲーおもしろいよ」と聞いていたので、じゃあ行ってみようかな、と。

――その専門学校時代にたくさんの出会いがあったとか?

 そうですね。クラムボンの3人しかり、その後バンドとしてデビューするスーパーバタードッグのメンバーしかり。仲間と会えたことは本当に大きかったし、今があるのはあの時代におもしろいやつらと出会えたからだと思います。音楽の理論的なことは全部忘れちゃったんですけど(笑)、ただただ楽しかった。おもしろいことやればいいじゃん、それで音楽ができるんだっていうことを、あの時代に知ることができたのです。

――在学中の1994年にバンド「スーパーバタードッグ」を結成します。

 別の学科だったギターの竹内朋康くんと仲が良くて、ブラックミュージックのバンドをやりたいね、という話になったんです。まず一つ下でベースのTOMOHIKOを誘い、キーボードとドラムは竹内くんの地元・福井で一緒にやっていた仲間、沢田(周一)くん(ドラム)と池田(貴史)くんに声をかけました。当時、池田くん(=レキシ)は大阪にいたんだけど、興味を持ってくれて参加することになって。

――プロを目指していた?

 全然。実家が東京なのであんまり追い立てられもせず、デビューしたいなんていう野心もなく、ライブハウスでライブができるようになってきて「うれしいなぁ」ぐらいの。ふわっとしてました(笑)。でも、そういうスタンスがよかったのかな、と。

 そんな僕らをおもしろがってくれた音楽プロデューサーのs-kenから声をかけてもらい、インディーズのコンピレーションアルバムに参加するようになりました。さらに、s-kenの事務所の人がバタードッグを気に入ってくれて、「CD出そうよ」と言ってくれた。それでメジャーデビューすることになったのです。

――デビューして、いかがでしたか?

 いやぁ……どうだったっけな。相変わらず野心もなくふわっとしていたような(笑)。でも、カメラマンやデザイナーと一緒にあれこれアイデアを出しながらジャケットを作ったりは楽しかったですね。それに、すごくいいレコーディングスタジオを使わせてもらえた。あのころってインディーシーンがちょっと熱くて、レーベルもまだメジャーに上がっていない人たちにすごく目を向けていた。ありがたい時代でした。

 ギターの竹内くんはクラブで働いていたので、そういう熱さみたいなものを肌で実感していたと思うんだけど、僕は相変わらず地元にばかりいたので、大きな音楽シーンの流れにはあまりとらわれていなかった。その感じは今も変わらないですね。自分が気持ちいいかどうかだよなぁ、っていう関わり方だったように思います。

「ハナレグミ」として、ソロ活動へ

――2002年には「ハナレグミ」としてソロ活動を始めます。どんな思いで?

 バンドだけでは消化しきれないものが増えたんです。あのころ聴いていたフォークとかに重きを置きたかったというか。今だったらもっといろんなものが書けると思うんだけど、当時はダンスミュージックの中で言葉を紡いでいくことに限界を感じて。僕の書く言葉って、前後の余韻がすごく重要だと思うんです。たとえばハナレグミとしての最初のシングル「家族の風景」も、たくさんのことは言っていないけれど、言葉の前後に何か余白のようなものが立ち上がってきて、その世界に聴き手に入ってもらう曲。そういうものに向かいたかった。テンポが速くて、その分たくさんの言葉が必要になるダンスミュージックより、スペースの空いた言葉で歌いたかったんだと思うんですよね。

――バンドからソロへ。一人になってみていかがでしたか?

 楽チンでしたね(笑)。僕はソロプレーヤーの気質が強いのかもしれない。うまく人に合わせられないところもあるし、わがままだし。でも、今になってみるとバタードッグをやっていたことはすごく大きくて。結局、今も音として求めているのはバンド的なものなんです。ハナレグミでも、サポートミュージシャンとどれだけバンドになれるかは常に自分の中に目標としてある。ソロしかやったことのない人だとなかなか気づけないことだろうけど、僕はバンドのミラクルを知っているから。バンドの熱量、っていうのかな。それは、アレンジする上でも、どういうステージにするのかメンバーとディスカッションする上でも、すごく大きなヒントになっているんです。

――これまで、数多くのアーティストやバンドと共作やコラボレーションをしてきました。誰かと組む、誰かと作るということは、ご自身の中ではどういう意味を持つのですか?

 それもまた、バンド的な意味合いなんですよね。自分一人から出てくることよりも、誰かがパッと弾いたフレーズや発した言葉に感化されて曲が生まれる、それが好きなんです。一人で全部構築することも嫌いじゃないけれど、誰かの音やアイデアを聞いてるのが好きなんですね、きっと。

 あとは「シンガー」という側面も僕の中にはあって。人が書いた世界に声で関わる、歌うことに徹して物語を作る、ということも、ハナレグミにとっては大きな意味を持つことなんです。

後編へつづく

  ◇

永積 崇(ながづみ・たかし)

1974年、東京生まれ。1997年、「スーパーバタードッグ」でメジャーデビュー。2002年、バンドと並行して「ハナレグミ」名義でソロ活動をスタートし、同年、ファーストシングル「家族の風景」とファーストアルバム「音タイム」を発表。
2015年、自身の楽曲に加え、野田洋次郎(RADWIMPS)、YO-KING(真心ブラザーズ)による楽曲提供や、池田貴史(レキシ)、大宮エリー、辻村豪文(キセル)、堀込泰行(元キリンジ)との共作楽曲を収録した通算6枚目のアルバム「What are you looking for」をリリース。
2016年5月、是枝裕和監督映画「海よりもまだ深く」の主題歌「深呼吸」をシングルとしてリリース。また、「What are you looking for」を披露した公演を収めた配信限定ライブアルバムを、2016年9月から配信している。

ハナレグミ公式サイト:http://www.hanaregumi.jp/

【ライブ情報】
ハナレグミ ライブハウスツアー「名前のないツアー」

3月3日(金)HEAVEN'S ROCK Kumagaya
3月5日(日)郡山HIP SHOT JAPAN
3月17日(金)浜松 窓枠
3月19日(日)岐阜CLUB ROOTS
3月21日(火)京都磔磔
3月22日(水)京都磔磔
3月24日(金)富山MAIRO
4月2日(日)旭川 CASINO DRIVE
4月4日(火)小樽 GOLDSTONE
4月7日(金)盛岡club CHANGE WAVE
4月9日(日)石巻 BLUE RESISTANCE
4月14日(金)鹿児島 CAPARVO ホール
4月15日(土)長崎 DRUM Be-7
4月17日(月)周南 RISING HALL
4月19日(水)神戸 Harbor Studio
4月21日(金)高松 MONSTER
4月23日(日)和歌山 SHELTER
5月12日(金)横浜BAY HALL

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