瀧本幹也 OFF SHOT

(1)三つのカメラで撮りわける極意

  • 短期連載 瀧本幹也「OFF SHOT」
  • 2013年6月24日
瀧本幹也さん(撮影 篠塚ようこ)

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  • 瀧本幹也さん

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 カンヌ映画祭審査員賞を受賞した「そして父になる」(是枝裕和監督)で撮影監督を務め、CMではトヨタの「ReBORN」やダイワハウスなどの話題作を手がけ、スペースシャトルと地球の姿を収めた写真集「LAND SPACE」も発表した。映画・CM・写真という三つのカメラを使い分ける気鋭のカメラマン、瀧本幹也さん(38)。撮影秘話をはじめ、映像の可能性や創作の根源について語った、90分にわたるインタビュー。5回にわたって、お届けする。

  ◇

――「そして父になる」の受賞おめでとうございます。映画の撮影は初めてだったそうですね。

 1昨年の秋、突然、是枝さんからメールをいただいたんです。「ご相談があります。お願いしたい作品があります。映画です」って書いてあって。僕は映画を撮ったことがないから、びっくりして。ふつう、初めての人に頼まないじゃないですか(笑)。
 あとから聞いたところでは、リリー・フランキーさんと深津絵里さんが出ているダイワハウスのテレビCMを是枝さんがたまたま見て、「これ撮ったのだれ?」って。調べたら、僕だったということのようです。

――是枝さんとは面識はなかったんですか。

 じつは、是枝さんのことは一方的に存じ上げていたんです。接点はずいぶん古くて、僕が師事していた写真家の藤井保さんが、是枝さんの「幻の光」(1995)という作品のポスターを撮ったときに、アシスタントしてかかわらせていただきました。その後、「ディスタンス」(2001)に出演していた4人の俳優を雑誌で撮影したことがあります。そして、「空気人形」(2009)のときにようやく、ポスターやパンフレットを撮らせてもらったんですけど、仕事の接点はそれぐらいで。僕はあくまでファンとして是枝さんを見ていたんです。

――もともと、スチールのカメラマンですよね。

 はい。98年に独立して、最初は雑誌やCDジャケットなどを撮っていました。いまは映像(CM)が増えてきましたけど。映画はまったくの素人で、単純な娯楽として観る側にいるだけで。だから、最初にお話をいただいたときは、うれしいというより、できるのかなあと思いましたね。

――やはり、映画とCMではかなり違うものですか。

 映画は観たくなければ劇場に行かなければいいけど、CMは違います。見たくなくても目に入ってきますよね。しかも、広告って、悪い言い方すると、強制的に見せて、商品を売り込むためのものだから、洗脳力がある。
 1億もの人の脳の細胞のどこかに、無意識のうちにでも僕の撮った映像が蓄積されていくことになる。それだけに粗悪なものだったり、暴力的なものだったりしていいわけがないと思うんです。責任を取ることはできないけど、せめて責任感はもってないといけないんじゃないかなと思って、やっています。
 CMって、15秒なり30秒なりで伝えたいことを盛り込まなきゃいけない。でも、その手法で2時間の映画をつくると、たぶん要素が多すぎて、見てる方は疲れちゃうと思うんです。だから、重要なシーンをのぞいてはなるべく絵づくりをしないように心がけました。ただ、できるだけ登場人物たちの心の揺らぎを伝えるようには撮りたいな、と。

――「そして父になる」は、生まれた赤ん坊を取り違えられてしまった父親が次第に、本物の父親になっていく姿を描いた映画ですが、どんなシーンが印象に残ってますか。

 ひとつ挙げるとすれば、家に帰ろうとする母と息子が並んで座席に座っている、電車の中のシーンでしょうか。電車がある駅に止まったとき、ホームにかかる陸橋の影で一瞬真っ暗になるんです。座席に残ったふたりのすごく哀しげな表情がぎりぎりの光に浮かび上がって。撮りながら、ゾクゾクッとしました。最初は、電車が走っているところで撮ろうと思っていたので、偶然でした。
 映画も写真もそうなんですけど、頭のなかではそこまで完成したイメージはなかなか描けるものではありません。自分で予測できるイメージってたいしたことなくて。むしろ、そこからどれだけ飛躍できるか、その自由度をどれだけもっているか、なんだと思います。
 是枝さんは、偶然のようなハプニングが起こる状況をあえてつくろうとするんです。たとえば、ある場面を撮り終えたとしてもカットをかけないで、そのまま回し続ける。そうすると、演じている役者さんたちは何か言わなきゃいけなくなる。そのうち、演じているのか、なりきっているのかわからないような自然なセリフが出たりするんです。化学変化を取り込むというか。あえて、つくりこまないようにつくる。そうして、リアリティとフィクションの境目を行ったり来たりするんですね。だから、あまりお芝居を撮ってるという感じがしませんでした。(つづく)

(次回は6月25日に掲載する予定です)


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