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もうすぐ夏休み!今回のテーマは「珍道中」です。夏には旅の小説やエッセイがよく売れますが、おススメは珍道中もの。旅にはその人の人生のすべて――育ちや性格や今後までがあらわれると思いませんか? まず紹介するのは、角田光代さんのエッセイ『世界中で迷子になって』。
旅好きには2タイプあって、ひとつは何十回も出かけるうち旅の達人になれるタイプ。もうひとつは、何度出かけて行っても旅迷人でしかないタイプ。人気作家であり本書をはじめ旅エッセイを何冊も出している角田さんは、意外にも後者だそうです。
自分が生きてる場所が世界のぜんぶだと思いがちな子供時代。感性が豊かな子供は本から外国のようすを知ってゆきます。角田さんもさぞ幼いころから本で想像力を高めてきたのだろうと思いきや、彼女は別世界といえば「あの世」と「この世」の区別しかできず、ピッピもメリー・ポピンズもトム・ソーヤもひらたく言えば日本人だと思い込んで読んできたのだそうです。
四国がわからなかった大学時代、初の海外で飛行機の窓から「赤道は見えるの?」と尋ねたことをはじめ、今でも旅は迷子の連続。それでも彼女を世界へ駆り立てるものとは?
旅で迷うこと、行き先を知らないということは、感受性の全開につながります。入念な下調べにより「知ってることのおさらい」にしかならない旅に、なんの魅力がありましょう。おおいにあきれたり笑ったりしながら、読み手の心を広げてくれる本です。
もう一冊はこれまた人気作家の町田康さんの小説『告白』。作家のほか「パンク歌手」という肩書きを持つ町田さんですが、この外国から入ってきた音楽の前に、彼の根っこには、昔から好きだったという都々逸、講談、落語、なにわ節など、日本古来の大衆芸能のリズムがあり、それが文体にあらわれています。
町田作品にはよく「行っては行けない方へ、行けない方へと進んでしまう人」が出てきますが、まさに人生珍道中。本書は明治時代に実際起きた大量殺人事件「河内十人斬り」の犯人を描いた異色作です。悲惨な事件が待っているとわかっているのに、ヘンテコな旅まじりの物語は町田さん独特のリズムで明るく進み、ページをめくる手が止まりません。
夏休み、これら2冊の珍道中に、あなたも同行してみませんか?
代官山 蔦屋書店の文学コンシェルジュ。雑誌などで書評連載を多数持ち、年間700冊以上読むという「本読みのプロ」。お店では、間室手書きPOPが並ぶ「間室コーナー」が人気を呼ぶ。
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