太陽のまちから

水素・燃料電池がつくるエネルギー未来地図

  • 文 保坂展人
  • 2014年4月1日

写真:ホンダが米ロサンゼルスのショーで披露した燃料電池車(FCV)のコンセプトカー=2013年11月20日 ホンダが米ロサンゼルスのショーで披露した燃料電池車(FCV)のコンセプトカー=2013年11月20日

写真:2015年に市販化される燃料電池車(FCV)。フロント部の中央下と両脇につく大きな口が特徴的 2015年に市販化される燃料電池車(FCV)。フロント部の中央下と両脇につく大きな口が特徴的

写真:トヨタ自動車は東京モーターショーで、FCVの床下を紹介した。車両後部の黄色い円筒2本が水素タンク。中央にある箱形の「燃料電池スタック」で酸素と反応させ、動力を生み出す トヨタ自動車は東京モーターショーで、FCVの床下を紹介した。車両後部の黄色い円筒2本が水素タンク。中央にある箱形の「燃料電池スタック」で酸素と反応させ、動力を生み出す

写真:名古屋市内のガソリンスタンドに併設された「神の倉水素ステーション」 名古屋市内のガソリンスタンドに併設された「神の倉水素ステーション」

 燃料電池車の発売が2015年に迫り、社会的な関心も高まっているようです。日本のみならず世界にとって、エネルギー問題は避けて通ることのできない課題であり、現在私たちの目の前にあるわずかな情報や技術が10年後には大きな進化を遂げて世界を変えていく可能性があります。

 水素を充填する燃料電池車は、大気汚染の原因ともなる排ガスを出しません。排出されるのは水だけという究極のエコカーとも呼ばれています。また、日本の技術水準は世界トップレベルにあり、これまでの長い研究開発期間を通して次世代エネルギーとして注目を集めてきました。

 実験用の燃料電池車は1億円以上の高額なものでしたが、いよいよ500万円台で一般市場に登場する日が近づいています。日本で普及が早まれば、化石燃料の輸入に頼るエネルギー地図が大きく塗り替えられる可能性があります。

 昨夏に訪れたデンマークのロラン島は、島で使う電力の5倍の発電量を持つ「風車の島」でした。この風車の余剰電力という再生可能エネルギーで、水を電気分解して水素をつくりだし、燃料電池で家庭内発電所を立ち上げるという実験をしていました。製造した水素をガス管のような水素管で地域供給するという取り組みです。

 デンマークからの帰国後、画期的な実証実験をしている日本の現場にも出向きました。環境省の委託を受けたホンダが埼玉県庁で行なっている 「ソーラー水素ステーション」です。10キロワットのソーラーパネルで発電した電気で水を電気分解し、高圧水素にして貯蔵し、燃料電池車へ充填するシステムです。

 風力や太陽光等の再生可能エネルギーを使って水から水素を取り出し、その水素を使って燃料自動車を走行させる。グリーンエネルギーだけで動く自動車がすでに実用化されているのは「目から鱗(うろこ)」でした。

 ほかにも、水素をめぐる目立った動きがあります。川崎市は昨年、千代田化工と水素社会の実現をめざして包括協定を結びました。世界初の水素発電所をはじめ、製造した水素を安全に輸送することのできる技術の開発など、時代の先端を行くものです。その内容は報道ステーションでも紹介されました。

 世田谷区は電力自由化時代をみすえて、全国の多くの友好交流都市と連携して再生可能エネルギーの提供を受けるネットワークづくりを進めています。住宅都市という特性から、小規模分散型のエネルギー源を活用していきたいと考えています。さらに、再生可能エネルギーで水を電気分解して水素を取り出して活用する家庭内発電所や燃料電池車の稼働も視野に入れています。

 4月18日には、「エネルギー革命最前線――地域が創る水素・燃料電池の新市場」と題したビジネスセミナーを開きます。昨年の「世田谷発、電力を選べる社会へ(ビジネス編)」に続く第2弾です。私も呼びかけ人のひとりとなっている「世田谷新電力研究会」が主催し、意欲的な企業やNPOに参加していただきたいと思います。

 このセミナーには、「水素・燃料電池」をめぐる各界のキーパーソンが集まります。経済産業省資源エネルギー庁燃料電池推進室長による基調講演の後、燃料電池車や水素ステーションを手がける本田技研、岩谷産業、東京ガス等の企業、そして神奈川県川崎市、世田谷区による自治体の事例発表と続きます。そして、水素・燃料電池の技術や制度の最新情報を共有するだけでなく、自治体がエネルギー革命の舞台に躍り出るステップにしたいとも考えています。

 私たちの社会は、自治体は、企業は、市民はどんな制度を描けるのか。再生可能エネルギーとのマッチングの実現可能性はどうなのか。また、都市と地方をつなぐ自治体同士のネットワークを生かして何ができるのか。互いの垣根をこえて大いに語りたいと思います。

 新しい時代を、これまでになかった発想でインスパイアする場をこれからも提供していこうと考えています。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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