太陽のまちから

子どもの尊厳守るため、大人にできること

  • 文 保坂展人
  • 2014年4月28日

写真:「せたホッと」のキャラクター「なちゅ」(世田谷区提供) 「せたホッと」のキャラクター「なちゅ」(世田谷区提供)

 子どもたちが追い詰められて途方に暮れた時、私たちの社会は何を提供できているだろうか。私が20年前、「いじめ問題」の取材で訪れたロンドンで知ったのが「チャイルドライン」でした。

 1980年代にBBCの特別番組として子どもたちの声を電話で受け付けたところ、あまりにも大きな反響があったために常設化されたものです。イギリスの子どもたちのほとんどが、フリーダイヤルのナンバーを空んじていました。

 帰国した私は、世田谷区で教育問題に取り組む仲間にこの取り組みを知らせました。国会議員となってからは、チャイルドラインを日本に設立する超党派の議員連盟をつくりました。こうして、チャイルドラインは98年、世田谷で始まりました。

 その世田谷で区長に就任して3年目を迎えます。選挙で掲げた公約にはこう書きました。

<国会で児童虐待防止法を提案し、いじめの被害を放置しないチャイルドラインをつくった経験を生かして、保育の充実、子どもの生命を守ります。そのために、子どもオンブスマンを導入します>

 この1年、「子どもの人権擁護機関」を設立する準備を進めてきました。議論のなかで、世田谷区子どもの人権擁護機関の機能は次のように定義されています。

<子どもの立場で、子どもに寄り添い問題の解決をめざす第三者機関として、子ども自身の人権侵害に関する相談を受けて、助言や支援を行います。また、個別救済の申し立てによって、関係機関に調査・調整を行い、問題の解決をはかります」として、「いじめ」や「暴力」「脅迫」等、子どもが直面する身体や生命の危機に迅速に対応できるようにします>

 まずは、子ども(あるいは保護者)の話を聞き、必要な助言と支援を与えるとともに、問題によっては、学校等の関係機関の現場に出向き、調査と調整を行います。そして、是正が必要な場合には「要請」「意見」等を出して改善を求め、公表します。また、相談者である子どもの問題が解決した後も見守り続けます。

 区立学校、幼稚園、保育園、児童館等は調査や調整に協力する義務を負います。また私立学校や民間施設等については、協力の努力義務をうたっています。第三者機関としては他にあまり例のないケースですが、区長部局と教育委員会の共管としました。双方が責任をもって運営するという考え方です。

以上の役割を3人の委員と4人の専門調査員、さらに事務局員4人で担うことになります。小田急線・経堂駅近くの「子ども・子育て総合センター」に設置することとなります。

 これに先駆けて昨夏、愛称「せたホッと」(せたがやホッと子どもサポート)が活動を始めました。正式名称は「世田谷区子どもの人権擁護機関」ですが、あまりにも馴染みにくいので、子どもたちから名称・愛称を公募して決めました。また、「せたホッと」のキャラクターも公募の末、「なちゅ」に決まりました。小学6年生の作品です。

 昨年7月から今年3月までの相談者は、子ども67人と大人69人を合わせて136人でした。延べ相談人数では756人。そのうち子どもからの相談が約54%と、ほかの相談機関に比べて高いことが特色です。相談内容で多かったのは「いじめ」(28人)、「対人関係」(24人)、「学校・教職員の対応」(20人)でした。

 子どもの立場から「子ども最善の利益」(国連子どもの権利条約)を実現する第三者機関を設けることによって、繰り返し起きている「いじめ」をめぐる子どもの悲劇を回避する防波堤の役割を担いたい、と考えています。「いじめ」「暴力」の被害から逃れて身体と生命を守ることが最優先ですが、子どもたち自身が「いじめ」「暴力」等の多発する環境を大きく転換することがさらに重要です。

 そうした問題意識のもと、5月初旬には、オランダの教育現場や子どもの置かれた環境を視察に出かけます。ひとりひとりの尊厳と成長が保障される教育のあり方を考えてみたいと思っています。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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