東京の台所

<63>法事で気づいた自分の意外なDNA

  • 文・写真 大平一枝
  • 2014年5月7日

〈住人プロフィール〉
 会社員(女性)・35歳
 賃貸・2DK・東京メトロ 日比谷線 中目黒駅(目黒区)
 入居1年・築19年
 

 この前の日曜日は、友だちふたりがご飯を食べにきた。ワイングラス片手に、夜更けまでおしゃべりした。土曜日には、弁当を作って新宿御苑でピクニック。キーマカレーをたくさん作って、近所の公園でシートを広げてみんなで食べることもある。食事を外に持ち運ぶ専用のバスケットもある。

「人に食べてもらうのが好きなんです。母は栄養士で、やっぱり食べてもらうことが好き。私は28歳まで熊本で外資系企業の立ちあげを手伝っていたのですが、母が会社の人の分まで差し入れを持たせてくれたので、だんだん同僚もそれを楽しみにするようになっていました」

 その後、上京して転職。今は、東京でできた友だちや九州出身の友だちのたまり場と化している。

 エレベーターのない古いマンションだが、不動産屋に案内されたとき、ミルクホワイト色で統一されたその部屋をひと目で気に入った。

「お風呂とトイレが一緒のユニットスタイルで狭いのですが、テラコッタ風のタイルが貼ってあり、シンプルな洗面台も、私にはおしゃれに見えた。古いし、女性にはどうでしょうかと不動産屋さんは心配そうでしたが、私は“ここにします!”と即決しました」

 中目黒の住宅地で、渋谷や恵比寿にも近い。都心でちょっと遊んだ後に寄れる、友だちにとっても最高に居心地のいい隠れ家というわけである。

 ひとかかえもありそうな、パイレックスの耐熱容器は、家での宴会に欠かせない。これでラザニアなどオーブン料理をどーんと作る。

 もてなし好きは母親譲りと思いきや、去年の秋、法事で大分の祖母の実家に集まったときに、はっと気づいた。

 親戚一同で、外の料理屋で食事をしたあと、82歳の祖母の家にぞろぞろと移動して、また酒盛りが始まった。料理好きの祖母も、とびきりおいしい甘い卵焼きや昆布の煮染めを作っていたが、親戚が肉だの、ワインだの、スイーツだのをそれぞれ取り寄せて、事前に祖母宅に送っていた。申し合わせたわけでもないのに。それをみんなで盛りつけて、宴会は夜遅くまで続いた。

「ああ、おいしいものをみんなでつつきあって食べるのが好きなのは、この一族の血筋なんだ、とわかりました」

 そんな彼女はあるとき、妹にこう言われたことがある。

「ばあちゃんに似てきたねー」

 ひとり暮らしでいながら、いつも化粧をして身ぎれいにして、料理上手で、来客が多い祖母。そう言われて、ちょっと嬉しかったに違いない。ところで、その法事の日、あなたは何を持っていったのですか?

「私? ちょうどその前に軽井沢に旅行したので、現地からハムとチーズを送りました。みんなで食べたいなと思って」

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PROFILE

大平一枝(おおだいら・かずえ)

長野県生まれ。ライター。生活やライフスタイルををはじめ、人物ルポなども執筆。著書に『ジャンク・スタイル』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『日曜日のアイデア帖~ちょっと昔の暮らしで楽しむ12か月』(ワニブックス)、『かみさま』(ポプラ社)、『スピリッツ・オブ・ジャンク・スタイル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)ほか多数。共著に『母弁』(主婦と生活社)、『ジャンク・ウエア』(平凡社)など。 ホームぺージ「暮らしの柄」


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