太陽のまちから

「世界一幸福な国」の教育

  • 保坂展人 オランダ報告(1)
  • 2014年5月13日

写真:オランダのある小学校の校舎前に停めてあった自転車。 オランダのある小学校の校舎前に停めてあった自転車。

写真:習熟度モニターのパソコン画面。 習熟度モニターのパソコン画面。

 このごろ、政治の場で「教育」が語られることが多くなりました。残念ながら、ほとんどの議論は、大人の側から見た「理念的な教育論」に終始しているように感じます。子どもが成長・発達していく教育の場を、教育方法やシステムを変えることでどのように良くしていくのか。そんな「実践的な教育像」を議論することが重要ではないかと思います。

 5月上旬、私は、「子どもの幸福度世界一」(2007年、2013年/ユニセフ調査)とされるオランダの教育事情を視察してきました。

 オランダ・ハーグ市にある小学校では、児童の多くが移民の子どもたちでした。なかには、つい最近、親に連れられて来たという子どももいます。出身は数十カ国に及ぶだけに、「みんな一緒」ではなく、「みんな違ってる」ことを前提としています。

 子どもたち一人ひとりの違いをそれぞれ伸ばしていく教育は、どのように行なわれているのでしょうか。

 象徴的なのが特別支援教育です。

 オランダには「習熟度モニター制度」があり、小学校では、ひとりひとりの子どもについて学習段階や習熟度を客観的なデータとして把握しています。たとえば、国語なら「読解力」「単語の把握」「スペル」などの要素に分けて評価し、平均的な進度に比べて学習の遅れが見られる子どもに対してオーダーメイドの支援を行います。

 担当するのは、個別データを見ながら支援プログラムをつくるIB教員(特別支援教育支援員)です。障害をもつ子どもたちへの理解度が高く、教育スキルを持つベテラン教員が担当します。

 IB教員は常に「習熟度モニター」のデータをチェックし、一人ひとりの学習状況に応じて支援します。児童と親に対しても定期的に面談をして、個別の記録というエビデンスを示した上で、プログラムを提供します。根拠となるデータを示されることで、子ども自身が自分の課題を知り、また適切な目標に向かって学習計画を立てることができるわけです。

 多様な宗教や文化、背景を持つ子どもたちを親も含めて教育プロセスに乗せていくためには、合理的な根拠を示すことが重要なのです。

 特別支援教育の対象となる子どもたちは、ふだんはクラスの中にいて授業を受けながら、個別指導や少人数指導の時間になると、特別支援教育の部屋に出向いて個別のプログラムに取り組んでいます。

 じつは、オランダでの特別支援教育は、進度が「遅れている子」のみならず、「進みすぎている子」も対象にしているというのもユニークです。繰り返しになりますが、あくまで「みんな違う」という前提のもとに教育が行われている点が印象的でした。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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