太陽のまちから

自由な教育で国際的な人材を育てる

  • 保坂展人 オランダ報告(3)
  • 2014年5月27日

写真:ホフスタット・リセウム中等学校の図書室 ホフスタット・リセウム中等学校の図書室

写真:タブレット端末を使った授業(ホフスタット・リセウム中学校) タブレット端末を使った授業(ホフスタット・リセウム中学校)

写真:国籍だけでなく、荷物もカラフルだ(デ・オントムーティング小学校) 国籍だけでなく、荷物もカラフルだ(デ・オントムーティング小学校)

 オランダの教育は学校にだけあるのではありません。むしろ、学校をとりまく多様な支援機能が充実していることに特色があります。

 ハーレムに拠点を置く民間教育団体「ヨーロッパ・プラットホーム」は、65名のスタッフを抱えています。とくに、力を入れているのが「国際化教育」の支援です。エロス(Elos)と名づけられたプログラムは、国際化教育の水準を引き上げ、学生たちが国際交流するだけでなく、実際に国際社会で活躍できる力をつけさせるものです。

 現在、エロスを採り入れている学校は、オランダを含めた13カ国140校にのぼります。スカイプやEメールを通して、交流校同士で共通の課題に取り組んだり、植物の種子を同じ時期にまいて成育の違いと気候の影響を知ったり、生徒たちが相談を重ねながらバーチャルな企業を立ち上げたりと、多彩な実践が始まっています。

 オランダに7千ある小学校の1割ほどでは、バイリンガル教育も始まっています。4歳から英語による英語の授業が行われています。中学校で、こうしたバリンガル教育を受けた子と受けていない子をどのように「接続」していくかが課題となっているそうです。

 また、オランダの中学校の生徒たちは、生徒会連合のような全国生徒組織(LAKS)をつくっています。アムステルダムの街中に事務所があります。17歳のヤスミン・テスラーさんが活動内容を説明してくれました。

「1984年春に、12歳から18歳までの生徒たちが、教育政策にかかる政治決定に生徒の立場から発言権を確保するためにつくったのが始まりです。教育制度の改革には『教員』『保護者』『生徒』の3者合意が必要で、学生定款も決めています。そのなかには『生徒は1日ふたつ以上のテストを受けてはならない』というものもあります」

 年間約1億円の活動費はすべてオランダ政府から出ていて、事務所の運営費・専従費や会議費などに使われているそうです。全生徒を対象とした「学校の満足度調査」も行っています。

 大学入試のないオランダで、生徒にとって関心の高い「卒業試験」について、実施直後に特設電話を引き、生徒たち15万人の声が集まったそうです。この結果は、テレビで報道され、社会的な関心を呼びました。

 テスラーさんは続けます。

「また、教育改革の中で『生徒は1014時間以上、授業に出なければならない』という規則が生まれたときには、生徒たちが『異議あり』」の声をあげました。2007年と2011年に大規模な抗議行動が組織され、代表である議長がメディアのインタビューに答えたり、国会で発言したりしました。すぐに制度が変わったわけではありませんが、超党派議員の手で『中等教育を再点検せよ』という動きが生まれたのも成果のひとつでした」

 17歳の彼女は、メンバー間の連絡といった事務局の役割と国際交流を担当しています。国際交流の担当者としてどんな視点を持っているかという問いに対しては、こう答えてくれました。

「グローバル化している現在、生徒たちは国境を超えてつながり始めています。国際交流について、国はもっぱら経済的利益を強調していますが、私たちは互いの交流によって全人格的な成長をめざしています」

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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