太陽のまちから

「縦割り」から「横つなぎ」で解決へ

  • 文 保坂展人
  • 2014年6月3日

 「縦割り行政」という言葉があります。行政機構が大きくなると、課題ごとに守備範囲を明確にして仕事に取り組んでいきます。 ところが、時代の変化とともに、法や制度の狭間(はざま)で問題が起きたり、かつて前例のない事態に遭遇したりする場合があります。 

 東日本大震災後の被災地を訪ねて地元市長のお話を聞くと、たびたび「縦割り行政の弊害」が語られます。復興事業を進めるにあたって(中央省庁の縦割り行政が)壁になっているとのことです。 

 人口88万人の世田谷区も大きな行政組織となり、これまでに経験したことのない新たな課題に次々と直面しています。昨年秋に策定した区の20年ビジョンである「基本構想」を実現するため、今後10年間の行政方針となる「基本計画」をつくるにあたっては「マッチング」に心がけました。 

 マッチングとは「目的を共有し、縦割りを超え、さまざまな分野を横つなぎ・組み合わせる手法」です。区民、事業者、区の間の壁もとりはらい、困難な課題に対しても、ベストの取り組みができるようにしていきたいと思います。 

 世田谷区役所では今年度から「領域連携課長」が7人生まれました。別名マッチング課長です。それぞれの領域・所管で抱える仕事を横断的につなぎ、経験や技術、手法などを組み合わせることで、より大きな効果を生むことを意識して仕事を進めていく役割です。

 「空き家活用」という分野でも、都市整備系と福祉系、また地域コミュニティー系など、それぞれのアプローチや活用事例があります。これまでは、それぞれの領域・系列の中に閉じこもって、互いに情報や経験を共有することがありませんでした。ところが、こうした事業に参加する区民から見ると、活動内容も形態もよく似ているので互いにつながっていないことが不思議に思えます。

 まさにマッチングが求められるのですが、ただの情報交換や手法の違いを知ることにとどめてはならないと思います。縦割りの器から出て、時代や社会の求める課題と価値を共有するチームとしての主体を持つことで、迅速かつ合理的な解決策を練り上げていきます。この「横つなぎ」の経験は、器に戻ってからも生きていくはずです。

 器の外に出て仕事をするからこそ、「いまの時代に、この器はそぐわない。思い切って、かたちを変えるべきだ」という視点も出てくるでしょう。自治体組織のかたちは、伝統的な骨組みを変えないまま、明治の昔から連綿と続いてきた部分を引きずっています。

 国の中央省庁再編から14年がたちました。内閣府の領域・人員ともに広がっていると伝え聞きます。旧建設省から国土交通省に変わっても、道路・住宅といった許認可事務の流れは、国・都道府県・自治体と連なっています。ところが、内閣府で扱う「科学技術」「男女共同参画」「子ども・若者支援」「食育」「犯罪被害者支援」「自殺対策」「子どもの貧困対策」「消費者行政」などは、自治体行政の枠ではすっきり受け止めきれないものも少なくありません。

 どのような組織に生まれ変わるのがいいのか。マッチングの議論を深め、その解答を実行に移していきたいと思います。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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