太陽のまちから

「どうせ自分なんて」を脱する、その先に

  • 保坂展人
  • 2014年6月24日

写真:札幌市若者支援総合センターで、スタッフと意見交換した 札幌市若者支援総合センターで、スタッフと意見交換した

 人口減少、少子化社会の「危機」が語られています。さらに、出産や育児のしやすい環境づくりも課題です。同時に、いま若者が置かれている現状も直視すべきだと思います。

 長時間・低賃金の「非正規労働」が広がり、大学生の「就活」はすさまじい競争となりました。競争社会の入り口で倒れ込んでしまい、自宅を一歩も出ることのできない若者たちも相当数にのぼります。

 6月中旬、独自の「若者支援政策」を進める北海道の札幌市を訪ねました。テレビ塔にも近い中心部にある札幌市若者総合支援センターには、五つの活動スペースがあり、回転率もいいそうです。

 大きな荷物を持った男の子に声をかけると、

「明日、ダンス大会に出場するんで、今日はここで練習をばっちり決めようと思っています。ここは午前中300円と安いし、街でダンスの練習するのも肩身が狭いですよ」

 という答えが返ってきました。1階には、健康器具なども置いてあり、比較的活発な若者たちがひとときを過ごしているそうです。

 さらに2階には落ち着いた雰囲気のロビーがあり、就労支援を行なう「さっぽろ若者サポートステーション」と、就労の手前で悩みを抱えたり、ひきこもったりしている若者たちを支援するチームが同居していました。

 若者支援総合センターの職員は15人。社会福祉士が3人、教員が3人、臨床心理士1人、キャリアコサルタントが5~6人、さらにユースワーカーの仕事をしてきた人たちもいるそうです。

 窓口を訪れた若者と話をして「就労支援につなぐのが適切」と判断した場合は、すぐに「サポートステーション」につないで支援をしてもらう。まだハードルが高いと思えば、より参加しやすいプログラムを紹介するそうです。

 たとえば、「ごはんづくり」や「ヨガ」「俳句」で楽しんだり、「対人イロハ塾」で人と接する練習をしてみたり。こうした最初のステップで慣れてくると、次のステップに行ってみてはどうかと背中を押すのだといいます。

 そもそも「相談に来る」こと自体が難しい一部の若者に対しても、さまざまな工夫を凝らしているそうです。たとえば、「有償ボランティアに来て、手伝ってくれないかなあ」と声をかけて誘い、「封筒詰め」の単純作業をしながら雑談する中で、就労支援のプログラムをさりげなく伝えたりするのだそうです。

 話を聞いていて注目したのは、「中学校卒業時の個別支援」でした。いったん卒業してしまうと、社会のどこにもつながらない生活が始まってしまうかもしれないのが中学3年生。そこで、学校を通して本人や保護者の許可をもらった上で紹介してもらって、支援する。すでに8人にアプローチして、6人の中学3年生がこの場につながっているそうです。また、ひきこもりの子どもたち向けには、月1回「親の会(家族の会)」を開いたりもしています。

 目指しているのは、「どうせ自分なんて」「こんな世の中なんて」という後ろ向きの思いからまず抜け出すこと。その一歩が踏み出せたら、社会の一員として「刺激しあい、学びあえる存在との出会い」をへて、「誰かに必要とされる喜び」や「次世代を育てる使命感」を抱き、次第に「社会を担う存在」へと変わっていく。そうした段階的なアプローチが有効のようです。

 若者支援の取り組みを続けているうちに、関係機関の連携だけでなく、窓口での対応だけでもなく、若者たちの育ちを見守る居場所の必要性に気づいたといいます。いわば、「居場所(溜めの場)」の重要性です。

 札幌市には、ここを含めて市内5カ所の若者支援拠点があります。そのひとつ、豊平若者活動センターを訪ねてみると、北海学園大学の学生たちが地域コミュニティの活動にも参加していることが新鮮でした。

 HISTORYというサークルで、小学校のPTAと協力して「お化け屋敷」の本格編を実演したり、豊平神社のお祭りで山車を引いたり、YOSAKOIソーラン祭りに参加するなど、地域活動に積極的に関わりながら、若者活動センターの音楽ライブにも取り組んでいるそうです。

「街創造スタッフ」というグループに属する学生たちは「大学の枠を超え、地域の人々やや社会人と一緒に動くことで、学生だけでは得られない体験をした」と話してくれました。これが若者支援の最前線です。

 元気にバンドをやったり、ダンスや演劇、パフォーマンスをやるといった積極的な若者たちの中にも、家庭や進路の問題で深刻な悩みを抱えている子はいます。

 活発に動き回る若者たちと、悩みを抱えて呻吟(しんぎん)している若者たちも同世代の仲間との出会いによって、自分を取り戻すことができる。この両者が「ひとつながり」で分断されていないことが大事だと感じました。

 世田谷区でも、この秋、若者支援の活動がいよいよ本格化します。若い世代が元気に歩みだす後ろ盾となるべく、札幌市の取り組みから学んでいきたいと思います。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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