太陽のまちから

日本の重大な分岐点 「解釈」の果てに

  • 保坂展人
  • 2014年7月1日

写真:「集団的自衛権」行使について記者会見する安倍晋三首相=5月15日 「集団的自衛権」行使について記者会見する安倍晋三首相=5月15日

 このところ、激しい雨がたたきつけるように大地を打ちすえています。日本列島のあちこちで地盤がゆるみ、自然災害の危険が高まっています。異常気象は常態化して過去になかったことが連日のように起きています。

 政治の場もしかりです。「集団的自衛権の憲法解釈変更」が与党合意をへて、安倍内閣で閣議決定しました。歴代政府がこれまで、ぎりぎりの一線を守り、集団的自衛権の行使を「出来ない」としてきたことを「出来る」と変更する内容です。それも、日本国憲法の根幹に関わる部分についてです。

 1945年(昭和20年)の敗戦以降、日本は他国と銃火を交えず、殺し、また殺されることなく平和主義を貫いてきました。憲法が戦争参加を厳しく制約してきたからです。

 ところが、「集団的自衛権の行使」とは、他国が交戦状態に入った時に参戦するという中身です。「必要最小限度」の行使に限定している、と言われていますが、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」や「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由」などが「根底から覆される明白な危険」があると時の政権が判断すると、海外での武力行使に踏み出すことになります。

 戦争放棄をうたい、海外での武力行使を禁じてきた憲法に背反するのは明らかです。また、一内閣の閣議決定で憲法解釈を180度転換するのは最高規範である憲法の否定であり、蹂躙(じゅうりん)に他ならないと思います。改憲を是とする論客の中からも、立憲主義の点から容認しえないとの声があがっています。

 過去に目を転じれば、多くの犠牲者を出して泥沼化したベトナム戦争も、現在の混迷の源となったイラク戦争も、アメリカに続いて、多くの同盟国が「集団的自衛権の行使」として参戦した結果、戦死者を出しました。

 イラクでは、日本は、アメリカからの自衛隊派遣要請に対して、憲法上の制約の下、「非戦闘地域」とされるサマワでの「復興支援活動」に限定しました。もし、「集団的自衛権を行使できる」という憲法解釈であれば、「非戦闘地域」という概念(それ自体、無理やりひねり出したものですが)に拘泥することなく、イラク攻撃そのものに参戦する道がひらかれたことになります。

 しかし、イラクには事前に語られた大量破壊兵器の存在はなく、「戦争の大義」は見つかりませんでした。戦争の結果、平和と民主主義がもたらされるはずでしたが、今日の内戦に近い混乱状態は何を物語るのでしょうか。

 おそろしく重要なことが、なにげない日常のニュースにまぎれて語られています。戦争の入口をくぐってしまうと、出口にたどり着くのは至難の業です。その間には想像を超える犠牲を余儀なくされるのです。

 毎日新聞の直近の調査では、「日本が集団的自衛権を行使できるようにした場合、他国の戦争に巻き込まれる恐れがあると思う」かと聞いたところ、「思う」が71%で、「思わない」の19%を大きく上回る結果が出ています。政府の説明する「必要最低限の限定容認」が歯止めにならず、戦争に拡大することへの懸念が高まっています。

 また、朝日新聞の調査では、憲法改正ではなく、憲法解釈を変える首相の進め方について「適切だ」は17%で、「適切ではない」は67%。政権での議論が「十分だ」は9%で、「十分ではない」は76%と、大きな方向転換を決めた手法そのものへの批判が強くあります。

 これまで、日常生活の中で憲法を特段、意識することがなかった人たちの中にも、この動きに違和感を覚えるのではないかと思います。あるいは、「集団的自衛権行使容認への憲法解釈変更」の閣議決定が、未来の私たちの暮らしや運命に関与してくるとは思わないと考える人も多くいるでしょう。けれども、政治は土足でズカズカと暮らしの場に踏み入ってきます。

 国会の議論も生煮えで不十分、民意を反映しているともいえない与党協議という密室のやりとりで、国の最高法規である憲法の読み替えをするべきではありません。そして、今回の閣議決定で終わりではありません。次には、関連法の改正手続きが待っています。

 今、政治の場で何が起きているのか、日本はどこへ向かおうとしているのか。きわめて重大な分岐点に立っています。私たちひとりひとりが声をあげ、政治の場に届けていく営みを続けたいと思います。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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