〈ハタラク〉をデザインする salary編

<12>がん患者のための美容室で笑顔を生む

  • 2014年8月8日
  

 〈美容師〉 5年目 三田果菜 31歳

 2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる、と言われている。年間罹患(りかん)者数は70万人。がんは珍しいものではなくなった。

 私は、抗がん剤の副作用で脱毛してしまうがん患者さんのための美容室を開いている。「医療従事者でもない三田さんが、なぜ?」

 私ががん患者さんのサポートを始めたきっかけは、身近な人ががんになったことだった。副作用で脱毛し、外見に変化が起こることを目の当たりにした。その一方で、私はメークやウィッグでもオシャレを楽しみ、キレイになれることを知っていた。

 美容のチカラを本当に必要とする人に届けたい。私は、がん患者さん専門の個室美容室をオープンした。相談は無料。自毛、ウィッグに限らず患者さんのオシャレのお手伝いをさせてもらっている。オシャレな帽子やヘアネット、治療中にあれば便利なグッズも用意した。

「私これから、どうなるんでしょうか……?」

 患者さんは不安な気持ちを抱えている。自分の毛が抜けた姿が想像できない。どんなふうに抜けるのか分からない。何を買えばいいのか分からない。怖い。誰に聞けばいいのかすら分からない。

「私だけは奇跡が起こって抜けないかもしれない」。そう思っていても、毛は抜けていく。落ち込む人もいれば、もう何でもいいねん!と開き直る人もいる。まわりに自分が困っている姿を見せたくない人、仕事を休めずつらい思いをしている人……。

 人の数だけ悩みがあるように、その時、その人にとっての大事なオシャレのお手伝いができる場所でありたい。

「こんなこと言ったらあかんけど、がんになってここに来て、スタッフの皆さんに会えてよかった」

 笑顔で家へ帰っていかれた女性の方がいた。それを見たご家族も笑顔になった。「美容のチカラ」、それは、たとえ前に進んでいなくても、変化するプロセスを体感して、前に進む勇気を持つことができること。

「がん」というと重いイメージがあるけれども、がんになる人たちは普通に毎日を過ごしている。私は誰ががんになっても困らない、がんでも自分らしく、キレイでいられる、わくわくできる社会をつくりたい。

 それが実現できた時に見える景色が、私のサラリーなのかもしれない。

(次回は8月15日に&Mで「商社社員」を掲載する予定です)

    ◇

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