リノベーション・スタイル

<89>写真現像用の暗室と広めの玄関を

  • 文 石井健
  • 2014年10月29日

 [Y邸]
 Yさん一家(夫34歳、妻34歳、長男1歳)
 東京都目黒区 築35年 / 56.7m²
 工事費 1000万円

 ご主人は千葉県、奥様は都内で働いているご夫婦です。以前はYさんの社宅に住んでいましたが、取り壊しが決まったため、新しい住まいを探していました。新築も検討したものの、せっかくなら「趣味を生かした部屋にしたい」と相談に来られました。

 Yさんは大のカメラ好き。まず要望があったのは「暗室」でした。そして「広めの玄関」。部屋は56平米と3人にしてはコンパクトですが、その中でどうやってこれらの要望を取り込むかがテーマになりました。

 暗室が欲しいという方はときどきいらっしゃいます。薬品を使うので、処理の仕方や換気などに気をつけないといけません。ポイントは、どの程度の頻度で使うかということ。それによって、部屋の中でのバランスが決っていきます。

 月に1度くらいとのことだったので、暗室は洗面所の一部に作ることにしました。普段は洗面所ですが、隅にある扉を開けると中には現像用の流しがあり、引き延ばし機も収納されています。作業をするときは、洗面所の出入り口の扉を閉めれば、部屋全体が暗室になるというわけです。

 洗面所の扉を開ければ、キッチンから風呂まで一直線につながり、家事動線がとてもスムーズです。キッチンはカウンターが高めの半クローズドな空間。シンクやコンロは業務用です。シンプルな無骨さがかっこいいですよね。とはいえ、業務用は安価で丈夫な反面、底が深いので、食器が洗いにくかったり、奥行きがないのでモノが置けなかったりと善し悪しがあります。でも、奥様の実家が料理屋で業務用を使い慣れているとのことだったので設置しました。

 キッチンの壁の上部はリビングや寝室とつながっています。寝室はとてもコンパクトで、部屋の大きさに合わせてベッドがすっぽり入っています。ベッドが壁で囲まれていると言った方がいいかもしれません。壁はコンクリートをそのまま露出させました。

 玄関に入って左側はカーテン。すべて収納スペースです。カーテンにすることでコストダウンをはかりました。

  広めにとった玄関には、「洗い出し」という小石をまぶしたコンクリート。和を感じる素材です。それに合わせて木のすのこが置かれています。

 部屋のディテールは、全体の雰囲気ができると自然に決っていきました。ちょっとしたパーツなどは「PACIFIC FURNITURE SERVICE」などで買う人が多いですね。

 ちなみにこの物件は、都内にありながら隣が広い庭なので、自然豊かな場所。マンションの前にカブトムシまでいるそうです。都会と自然、趣味と仕事……。無駄なところにお金はかけず、好きなことを身の丈で実現したバランスのいい住まいです。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。

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