太陽のまちから

世田谷と川崎が手をとりあう「水素革命」へ

  • 文 保坂展人
  • 2014年10月28日

写真:4月18日に開催した「世田谷発エネルギー地産池消革命最前線」-水素・燃料電池技術で自然エネルギーを活かす-の様子 4月18日に開催した「世田谷発エネルギー地産池消革命最前線」-水素・燃料電池技術で自然エネルギーを活かす-の様子

写真:川崎にある千代田化工の水素プラント視察時の写真 川崎にある千代田化工の水素プラント視察時の写真

 多摩川をはさんで隣接する世田谷区と川崎市、両者が手を取り合うと人口規模は230万人となります。

<(230万人は)都道府県の人口でいくと15位に入る。この小さな連携で230万人というスケールメリットは大きいです>

 「水素革命」を特集した「週刊ダイヤモンド」(10月25日号)に掲載された、福田紀彦・川崎市長の発言です。

<いくら川崎市が水素を大量供給するといっても、初動は、環境意識の高い「使う」層がいないと水素の価格は下がりませんから、世田谷区と組む価値があると確信しました>

 インタビュー形式の対談のなかで、私は次のように答えています。

<日本ではエネルギー需給を考える時、開発側・供給側の理屈だけで制度設計してしまってきた。いくら日本企業の技術が進化しても、エネルギーを使う側である需要家・消費者の視点がないと、水素や再生可能エネルギーなんて普及しない。水素革命を起こすために、われわれが声をあげることは使命だと思います>

 こうした対談が実現したのは、この夏、川崎市の臨海工業部のエネルギー施設を視察・見学させてもらったのがきっかけです。トルエンを利用して水素を液体化し、その後、液体化した水素(メチルシクロヘキサン=MCH)を気体に戻すプラントや、首都圏の一般家庭用の電力を生み出す規模(650万キロワット)の発電施設群などを見学させてもらいました。川崎市では日本で初めてとなる水素発電所の計画も進んでいます。

 再生可能エネルギーの活用について、私は3年前から「自治体間連携」を模索してきました。世田谷区と交流関係にある全国の約40の地方都市や農山漁村とつながり、「人・技術・資本」と「エネルギー事業」を循環させていこうという発想のもとで取り組んできたのです。隣接する川崎市との連携は、新たに視野を広げてくれるものでした。

 10月28日には、「水素・燃料電池と電力自由化」をテーマとしたビジネス・セミナーが開かれます。私も呼びかけ人のひとりである世田谷新電力研究会が主催し、今年2回目の開催です。テーマは 「エネルギー革命最前線~“水素・燃料電池新時代”と“電力自由化”」。セミナーの呼びかけ文には、次のように書かれています。

<いよいよ燃料電池自動車(FCV)が年度内に市場投入されます。国のエネルギー政策の上でも水素・燃料電池の戦略的重要性がうたわれ期待は高まっていますが、一方で水素ステーション等の配置予定は限定されており、世田谷区内に設置予定がない等の課題も見えています。
 当研究会では、燃料電池自動車(FCV)の発売を先がけとして、家庭用燃料電池の将来像も視野に、再生可能エネルギーを使った水の電気分解で水素を取り出して燃料電池に充填する技術にも注目しています>

 登壇者は経済産業省資源エネルギー庁の戸邉千広・燃料電池推進室長、市場投入を準備するトヨタ自動車東京本部技術部長、電力システム改革の専門家である高橋洋氏、 そして福田・川崎市長と私という5人です。100名余りの定員はすぐに埋まってしまいましたが、「水素・燃料電池」について意欲的活用を目指す川崎市と世田谷区の首長が参加する点が他のセミナーとは異なる特徴かもしれません。

 トヨタは11月中旬に、燃料電池車「ミライ」を発売する予定です。メーカー価格は700万円ですが、破格の補助金があるため、ユーザー価格は500万円まで抑えられます。ただし、「水素・燃料電池新時代」にむけて普及が加速するには大きな壁があります。約3分間で燃料電池車700キロの走行を可能にする水素を供給できる「水素ステーション」が世田谷区にはないのです。その計画すらありません。

 いかにすぐれた性能を持っていても、水素ステーションに行くのに30分から1時間もかかるようでは、実用的ではありません。全国では100カ所が目標とされているものの計画中のものを含めて目標の半分にも満たず、商用もまだわずかです。

 なぜ、水素ステーション設置が進まないのか。それぞれの立場から、問題点を浮き彫りにしたいと思います。

 さらに、今年6月に電気事業法の改正によって、2016年から電力の小売りが全面自由化される見通しですが、私たちの生活にどのような影響をもたらすでしょうか。需要家・消費者のサイドに立って、制度設計をオーダーをしていくことが必要です。形だけの自由化で電力会社の事実上の独占状態が変わらないようでは名ばかりの改革となってしまいます。住民にもっとも近い自治体の立場から「電力を選べる社会」に向けた準備を整えておく必要があると思います。

 ヨーロッパを見ても、エネルギー転換は地方自治体が引っ張っています。都市部の電力消費地である世田谷区と、同じように住宅地を背後に抱えながら臨海工業部も持つ川崎市とで何ができるのか。おおいに語り合いたいと思います。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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