太陽のまちから

低投票率は「白紙委任状」に等しい

  • 文 保坂展人
  • 2014年12月1日

 いよいよ、総選挙が始まります。このままでは、棄権や白票も含めて、投票に行かないか、意思表示しない人が増えて、結果として「安倍政権への白紙委任」となるおそれがあります。是が非でも投票に行って、後日の悔いのないようにしたいものです。

 総選挙となれば、これ以上に大きな「国民の選択」はなく、告示日となれば各党が何を掲げて闘うのかに注目が集まってきました。2005年は「郵政選挙」、2009年「政権交代選挙」と呼ばれるように、街頭では飛ぶようにマニフェストが手渡されていきました。

 ところが、告示の直前だというのに、テレビの報道番組以外に「総選挙」の話題を聞きません。この間、顔をあわせた人の数は多いですが、政党関係者以外に「総選挙」の話をした人はほとんどいませんでした。

 このままでは5割を切るような「戦後最低の投票率」にとどまる可能性もありそうです。世論調査では「この時期の衆議院解散」に否定的な意見が強く出ています。任期2年を残して、突然の奇襲解散に打って出たのは、野党がバラバラである時期を狙って、安倍首相の「長期政権」への布石を打つことが主な理由である、ということも多くの人が理解しています。(2014年11月25日「太陽のまちから」)

 私たちは、目の前の物事を順序立てて考え、合理的なものだと確認すると意識の中に刻んでいきます。ところが「12月2日公示・14日投票」には、従来までの総選挙と比べると、政権や政策変更の土台を問うような「切迫した必然性」をうかがうことができません。すると、食事中に飲み込んだ異物を反射的に吐き出してしまうように、記憶に深く認識されません。納得できないものにはつきあわないぞ、という積極的拒否反応さえ生まれてきます。

 投票率が劇的に低下し、無党派層が選挙に関心を示さず、組織票が勝敗を決するという結果も予想されています。これが従来のように、政権側に有利に作用すれば、計算通りということになるでしょう。ただし、自民党を支える地縁組織、業界団体は高齢化して疲弊しています。2年前の「TPP反対」の公約を覆して推進しようとしている政権側から、「農協の解体論」まで飛び出している現状を見ると、これまでの「投票率と選挙の常識」は覆る可能性もあります。

  また、05年も09年も選挙結果に大きな影響を与えたのは無党派層だと言われています。投票に行かないことを決めている人や、年末の繁忙期に総選挙の存在を忘れている人たちの多くが「こうしてはいられない。やはり投票に行こう」と判断を変えるだけで、波紋は大きく広がっていくでしょう。

 朝日新聞の世論調査では、安倍内閣の2年間の経済政策について、「成功」(37%)「失敗」(30%)と、評価がやや高いものの、国民の間で意見が分かれる重要政策については辛口の反応が出ています。 「憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を容認したこと」について「評価する」(32%)「評価しない」(50%)、さらに「原発再稼働」に「賛成」(28%)「反対」(56%)となっています。

 ところが、「集団的自衛権」や「原発再稼働」に反対の人たちの2割が比例区の投票先を「自民党」と答え、野党がその受け皿となっていないとも報道されています。

 11月18日にTBSの報道番組に出演した安倍首相が、アベノミクスについての街頭インタビューで否定的な声が多かったことに「おかしいじゃないですか」と不快感を示したことが話題になりました。

 その2日後、自民党はNHKや在京テレビ局に要望書を出しました。萩生田光一・自民党筆頭副幹事長、福井照・報道局長の両衆院議員の連名で、出演者の発言回数や時間▽ゲスト出演者の選定▽テーマ選び▽街頭インタビューや資料映像の使い方――の4項目について「公平中立、公正」を要望する内容になっています。(11月27日付毎日新聞

 こうした報道や言論への「注文」に対しての反応は、さっそく具体的な形になって現れています。深夜の討論番組「朝まで生テレビ」への出演依頼を受けていた若手評論家の荻上チキさんが、直前になって出演依頼を取り消されたというのです。

 荻上さんによると、21日に出演を依頼されたものの、27日になってテレビ朝日の番組スタッフから電話があり、各党議員と荻上さんらゲスト数人という出演者の構成について「ゲストの質問が特定の党に偏る可能性などがある」との理由で、議員のみの出演に変えると伝えられたというのです。(11月28日付毎日新聞

 私も、国政選挙の前に政治家として何度か「朝まで生テレビ」に出演したことがありましたが、「出演者は政治家に限る」という扱いはなかったと記憶しています。NHKの「日曜討論」とはまったくステージが違う議論が特徴だった「朝まで生テレビ」が、深夜番組ならではの自由な発言や応酬を今回に限って回避したことと、局側は「政治の圧力によるものではない」と弁明しているが、先の要請は無関係だとは思えません。

 こうして、多くの国民の耳目を集めるような議論がテレビ番組から消えてしまい、ニュース番組の一部で各党のマニフェストや党首の動きなどを伝えても、総選挙に対しての関心は高まりません。低関心と投票率低下を反転させる報道が今こそ必要だと思います。

  政権にとって「白紙委任状」ほど好都合なものはありません。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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