リノベーション・スタイル

<100>「パパの好きなように」したら

  • 文 石井健
  • 2015年1月21日

 [T邸]
 Tさん一家(夫37歳・妻35歳・長女2歳)
 東京都目黒区 築42年/67.81m²/総工費 1365万円

 ご夫妻は関西出身ということもあり、どのエリアに住むかについてはそれほどこだわりがありませんでした。とはいえ、お子さんもできたので子育ての環境が良く、かつ都心の仕事場に近いところ、ということで目黒区の林試の森公園近くの中古マンションを購入しました。

 五反田・目黒エリアは最近、人気なんです。住環境が良く、都心にもほど近い。深夜にタクシーで帰ることになっても、それほど痛くありません。古い中古物件も意外とあるんですよ。

 ご主人はクリエイティブ系の仕事で、最初から「こんな風にしたい」というイメージがしっかりとありました。その一つが「大きい本棚が欲しい」ということ。もう一つが、「ヘリンボーンのフローリング」など、個々の素材へのこだわりでした。

 一方、奥様は、基本的に「パパの好きなようにしていいよ」というスタンス。その代わり、キッチンや動線の使い勝手の良さ、収納、予算など現実的なことを気になさっていました。ちょうどいいバランスです(笑)。そこで、そういった個々の希望を“パッチワーク”のように重ねて並べることにしました。

 まず本棚は、廊下の片側の壁とリビングにずらりと並べて造りました。床は大きくわけて、リビングのヘリンボーン、キッチンのタイル、寝室や子ども部屋のカーペットという“パッチワーク”に。リビング全体にヘリンボーンを敷いたので、「いっそのことキッチンも」と、キッチンシンクにもヘリンボーンを使いました。下半分が鏡になっているので、床のヘリンボーンが反射され、床とキッチンが不思議なつながりになっています。

 ダイニングテーブルはパーケットにしたので、テーブルと床が立体的な“パッチワーク”を織りなしています。ちなみに、このキッチンは両側から使えるタイプ。ヘリンボーンに切り込みが入っていて、収納棚になっています。大工さん泣かせでしたね。

 キッチンの隣には、IKEAの棚を挟んで小さな子ども部屋があります。この2部屋は棚で仕切られていて、ゆるやかにつながっています。青いカーペットを敷いた小あがりになっていて、床下は収納です。子どもからキッチンは見えませんが、キッチンからは部屋をのぞくことができます。

 最近、こういったプラスαのスペースを作る人が増えています。ワークスペースにする人が多いですが、ちょっとした書斎にしたり、趣味部屋にしたり。日常生活の中の小さな“逃げ場”になっているようです。従来のLDKからはずれて、ひとりで落ち着ける場所を求める人が増えているのかもしれませんね。

 廊下を挟んだ反対側には、寝室やもう一つの子ども部屋があります。いずれも個室ですが、扉がありません。どの個室も扉がなかったり、壁を途中で途切れていたりします。見る位置、いる場所によってこもったり、つながったりできるのです。

 空間、素材がパッチワークとなってつながったキャンバスに、家族が思い思いの絵を描けるような部屋になりました。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。

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