太陽のまちから

過密と過疎 小さなコミュニティの可能性

  • 山崎亮×保坂展人 特別対談(前編)
  • 2015年2月3日

山崎亮×保坂展人 対談

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 世田谷区長の保坂展人さんと、コミュニティデザイナーの山崎亮さん。人口の減少と高齢化が進むなか、いずれも住民の力を生かしたまちづくりに取り組んでいる。保坂さんの連載「太陽のまちから」が100回を迎えたのを記念して、コミュニティづくりの現在と将来の展望を2人が語り合った。前編と後編にわけてお届けする。

<後編>はこちら

こどもの声を「騒音」ととらえる社会

保坂展人 人口減少社会のなかで、世田谷区はこの3年半ぐらいで2万4千人ほど増えてるんですね。首都圏に集中するということもあるんでしょうけれども。

山崎亮 すごい。全国の自治体がもう、うらやましくてしょうがない現象ですね。

保坂 10年ほど前に、おぎゃーと生まれてくる赤ちゃんは5800人ぐらいだったんですが、それが今、7800人ぐらいまで増えてきています。子どもの人口で言えば、ちょうど平成になったあたりで、14歳までの子どもが10万人を切って、だんだん減っていったんですが、7~8年前から増加に転じて、昨年は25年ぶりに10万人を回復しました。

山崎 何が起きてるんですかね。ただ、世田谷と聞くと、育てやすいというイメージはありますね。

保坂 この春、保育園を12カ所つくるんですが、子育て支援を徹底的にやっていけばいくほど、子どもは増えているんですね。だから、なかなか待機児童を減らすことができないんですが、「子ども子育て応援都市」というのを宣言しちゃおうと思っているんです。

山崎 そうなんだ。たしかに大変なことですね。保育園を増やせば増やすほど、また人が増えてきちゃうんだから。

保坂 大変さの一つに、保育園や幼稚園の子どもの声をめぐる問題があるんです。「ちょっと耳につくので抑えてくれ」とか、「園庭に出ている子たちが騒ぎ過ぎている」といったクレームを受けることが増えてきていて。全国どこでも、昔からあった問題でもあるようですけど、最近、新しく保育園をつくることが多いので、そうした声に触れることが増えています。どうも保育園はうるさいらしいといって、反対の署名運動が起きたりもしているんです。でも、子どもの声は騒音なのでしょうか。

山崎 うーん。みんな自分たちが幼児・児童だった時のことをもう忘れてしまっているんでしょうかね。

保坂 東京都は環境条例を改正して、子どもの声を「騒音」の対象から外そうとする動きが起きています。ただ、そうした改正を逆の意味にとらえられて、保育園ができたら最後、大変なことになる、という誤解も生まれているんですね。

山崎 逆にね。

保坂 静かな住宅地だと思っていたら、ママさんたちが自転車に乗って集まってくる。そうした環境の変化に抵抗を感じるのでしょうか。やはり、子どもが少ない、子どもがいない風景というものが長く続いてきたので、いつしか慣れてしまったんでしょうか。

山崎 保坂さんはコラムでドイツの事例を紹介されたりもしていますけれど、それが騒音か騒音じゃないかというのを条例とか法律で決めていくというのも一つでしょうけど、なにか根本的な解決には至らない気もしますね。

保坂 たぶん、コミュニティ・ソーシャルワーカーのような働きをする人たちが必要になっているんだと思います。やはり、顔と顔を合わせて話をすることが必要でしょうね。知らない子の声というのは、拒否反応を引き起こしやすいんです。だけど、1回でも会って、少し遊んでやったとか、運動会見たとか、毎朝「おはよう」って声が返ってくるとか、ちょっとしたことで受け止め方は変わるんですね。

山崎 そういうところでも、対話の場というのがすごく重要になってくるんですね。きっとね。それから、世田谷区でいうと、もうどうしようもない話かもしれないんですが、僕は、人が密集して住みすぎているということも、かなりたくさん問題点を生み出しているような気がするんですね。
 これは古くて新しい問題かもしれません。過度過密と言われている時期からずっとそういう問題が出てきたんでしょうけれど、僕が強くそれを感じたのは、2005年に尼崎でJR福知山線の脱線事故が起きた時でした。

保坂 はい。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。

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