太陽のまちから

21世紀は「スローな民主主義」で

  • 山崎亮×保坂展人 特別対談(後編)
  • 2015年2月10日
  

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 世田谷区長の保坂展人さんと、コミュニティデザイナーの山崎亮さん。人口の減少と高齢化が進むなか、いずれも住民の力を生かしたまちづくりに取り組んでいる。保坂さんの連載「太陽のまちから」が100回を迎えたのを記念して、コミュニティづくりの現在と将来の展望を2人が語り合った。前編に続き、後編をお届けする。

<前編>はこちら

「家族」ではなく、「孤族」の時代に

保坂展人 世田谷区は統計上、45万世帯あるのですが、一番多いのは何かというと「ひとり世帯」なんですね。その言葉自体、日本語として変ですね。「私ひとりの家族」って。

山崎亮 おかしいですね。

保坂 3世代同居なんて、区内ではわずか1.5%です。サザエさんが生まれた世田谷でも、サザエさんの世界なんて本当に見たこともない、ということになっているんですよ。

山崎 本にも書かれていましたが、家族を前提にして話を進めると、現実からかけ離れてしまいますよね。大半の人たちが家族を持っていなかったり、あるいは「必ずしも結婚しなきゃいけないの?」という人もいるでしょう。

保坂 区が発行するものによく、「お父さんお母さんと子どもが2人で、みんな笑ってこんにちは」みたいな絵柄があるでしょう。これまで平気で出してたんだけど、それを見て不愉快になる人がいたりね。4人世帯なんて、割合としてはわずかですから。いまや、さまざまな形の「家族」があるので、伝統的な家族への回帰というのはなかなか難しそうですね。
 何らかの理由で、例えばつれあいが病気で亡くなったとか、離婚したとかという時に、一人になっちゃう。そういう時に、家族は越えられないかもしれないけれども、友人よりは家族に近いというような親しい関係があるといいんじゃないか、と。

山崎 そうですね。

保坂 あるアンケートだと、6人に1人が2週間、誰ともしゃべらずに暮らしている、という結果が出ているんです。65歳以上の男のひとり暮らしで顕著ですね。誰とも会話がなく、朝から晩までテレビしかしゃべってないとか、壁に向かって歌おうかとかいう光景が珍しくない。それと似てるとすれば、刑務所。そういう拘禁施設に近いような状況が広がっているんですね。あまりにもしゃべらず、社会的な関わりをどんどん薄めていくと、いろんなフラストレーションがたまったりして健康にも悪いようです。

山崎 最近読んでおもしろかった本の一つに、石川善樹さんが書いた『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法』というのがあるんです。それは、人とつながっていくということが、どれぐらい自分たちの健康や寿命に影響するかという、世界中のいろいろな調査をわかりやすく解説している本なんです。そのなかで印象的だったのは、人と会って笑顔になることの大切さです。笑うことがけっこう寿命を延ばすらしくて。作り笑いでも寿命は2年延びるらしい。
 だから、誰ともしゃべらず、全然笑わないというのを長いこと続けていくというのは健康にもよくないと思います。たしかに旧来のイメージされる「家族」というものではないとしても、おっしゃるように「友達以上、家族未満」みたいな関係性を地域の中にどういうふうに作っていくのか。あるいは、その場をどういうふうに設定していくのかというのは、これからますます重要になってくるテーマなんでしょうね。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。

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