リノベーション・スタイル

特別編<3>「こうしたら楽しい?」を追いかけたら

  • 連載100回記念対談 坂田夏水×石井健
  • 2015年2月18日
坂田夏水さん(右)と石井健さん

  • 坂田夏水さん(右)と石井健さん

  • 夏水組オリジナルの壁用ペンキ

  • 陶器の取っ手もいろいろなデザインが

  • 特注で作ったペンキの色は全部で19色

  • オンラインでも販売している

  • 「NATSUMIKUMI TILE」は全6種類

  • “CONGRI(コングリ)”は西荻窪駅から徒歩5分ほど

 自分らしく暮らすために住まいを編集する――。「ブルースタジオ」が手がけたリノベーション事例を紹介する連載「リノベーション・スタイル」が100回を迎えたのを記念して、ブルースタジオ執行役員の石井健さんがいま注目の若手3組と、これからの住まいや暮らしについて語り合います。

 第3回は、「DIY女子」ブームの火付け役、夏水組の坂田夏水さん(34)との対談の前編をお送りします。(構成 宇佐美里圭)

    ◇

石井健 坂田さんは、空間デザインを手がける会社「夏水組」を立ち上げ、ここ「GONGRI(ゴングリ)」ではインテリア雑貨を売り、バーレストラン「Lemonne(ルモンヌ)」を経営し、「こひつじ商事」では不動産も扱ってる。一見、多角経営の凄腕社長だけど、それはあくまで自分の世界観を表現するためにやった結果という印象があります。どうでしょう?

坂田夏水 そうなんですよね、思いついたらやりたくなる質(たち)で。ついつい手を出しちゃって、こうなった感じです(笑)。不動産屋や雑貨屋を目指していたわけじゃないし、使命感があったわけでもありません。「こんなことやったら面白いよね、たぶん」という感覚で……。

石井 もともとはムサビ(武蔵野美術大学)の建築学科ですよね?

坂田 はい、石井さんの後輩です。卒業してからは設計事務所、工務店、不動産屋で働き、一通り建築業界をまわってきました。

石井 このお店を始めたきっかけはどういうことだったんですか。

坂田 2008年に独立してからは吉祥寺にオフィスを構えていたんですが、ちょっと狭かったので、40~50m²くらいの物件を探していたんです。たまたま西荻にこの場所を見つけたんですけど、オフィスにするには広かったんですよね。70m²くらいなので、どうしようかなと。当時、古い建具や家具をストックする場所として倉庫も借りていたんで、倉庫をこっちに持ってくることにしたんです。それで、「どうせなら土日だけ開放したら面白いかも」と思ったのが始まりです。結局、「ちゃんとお店としてやった方がいい」とまわりから言われ、そこから雑貨屋さんの勉強を始めました。

石井 雑貨屋さんの勉強もしたんだ。どんな風に?

坂田 どういうところから仕入れて、いくらで売らなきゃいけないかとか……。お店という形でやるには、安定した流通ができないとだめなので、ちゃんとした仕入れ先を探したんですよ。うちはいわゆる“インテリアショップ”の流通をしています。

石井 あ、そうなんだ。じゃあ意外とふつうのラインナップなのかな(笑)

坂田 はい、ふつうなんですよ(笑)。でも大手がやっていても、誰も目を向けない商品を私たちが買っていたりするので、レアな感じがするのかも。

石井「DIY shop for girl」というキャッチコピーがあるように、全体的にガーリーな雰囲気だけど、お店にあるものは、自分の“趣味”と“仕事”はどれくらいの割合ですか?

坂田 うーん、3分の1が私の趣味かなあ。一番動くのは500円以下の雑貨ですね、壁にかけるお面とか、取っ手とか……。お店ってお財布を開くきっかけが大切なので、安い小物も多く置いています。あとはオンラインショップも含めると、塗料が人気ですね。1カ月100万円くらいの売り上げになることもあるんですよ。13色が19色に増えたのでもっと売れるかもしれません。

石井 そんなに売れてるんだ! 刷毛とかも売っているんですか?

坂田 はい。塗装に必要なもの全部が入ったセットも売っています。養生テープとかも入っていて、買ったらそのまま使えるような。

石井 プレゼントにも良さそうですね。

坂田 ですね。ちなみに色は全部特注なんですよ。ほら、ラベルに“Natsumikumi Selection”って。楽天でも売ってもらっていて、主婦の方に人気です。

石井 「夏水組」ではデザインやインテリアコーディネートをやっているんですよね?

坂田 はい。間取り図を描いたり、工事管理や見積もり精査をしたりもします。工務店とお客さんとの間に入って調整する仕事というか。ひと言で言うとデザイン会社なのですが、一般的なデザイン会社や建築士事務所とは業務内容が違うかもしれません。

石井 手がける物件に共通するものは「カスタマイズ」と「DIY」?

坂田 はい、賃貸でも壁紙が選べたり、床材が選べたり。たとえば、初期の頃からかかわっている東池袋の「ロイヤルアネックス」という物件は賃貸なんですが、間取りも内装も自分の好きなように工事費の負担はなくカスタマイズできるんです。その流れで昨年、「品川プリンス・レジデンス」のモデルルームも手がけました。こちらの工事費は借主が全額負担なんですが、高級賃貸でもそこまでできるところはなかったので、新しい試みですね。

石井 へえ。

坂田 最近は企業との商品企画もやっていて、通販カタログの「ベルメゾン」では、机やチェスト、ベッドカバーなど一通りデザインして“夏水組ワールド”を作りました。粘着テープの「ニトムズ」さんとは、インテリアマスキングテープも作っています。壁に貼るだけでタイル風になるタイルステッカーなど、壁に貼って簡単にデコレーションできるテープなんです。

石井 最近はメーカーさんと一緒にやることが多いんですね。

坂田 そうですね。ベネッセの「たまひよ」の写真スタジオを造ってからは、写真スタジオの仕事も多くなってきましたね。もともとは住宅だけだったんですが、企業とのコラボの方が多くなりました。

石井 飲食店の「ルモンヌ」は今どんな感じですか? 僕が行ったのはオープンしてすぐだったかな。

坂田 まだ1年ちょっとしか経っていないので、開店祝いにきていただいたのかも。いい感じですよ! 家賃と光熱費とシェフのお給料がクリアできれば続けられます。私はいつでも好きなときに飲みにいけますし(笑)。最低ラインはクリアしているので大丈夫かなと。

石井 6席くらいのお店でしたよね?

坂田 はい。1年半前、家から事務所まで歩いてくるときに、「テナント貸します」っていう看板を見つけたんです。それがすごく安くて。とりあえず借りとこうと思って、その日のうちに申し込んじゃったんです。いい物件はすぐなくなっちゃうから。で、借りてから「さて、どうしよっか」と(笑)。最初はシェアキッチンとか物販とかしようと思ったんですが、藤田くん(夫)の友達のコックさんがちょうど自由だったので、彼にお店に立ってもらうことにしたんです。小さなお店なのでアルバイトもいなくて、彼ひとりで全部やってもらっているんですが。

石井 それくらいの規模だと、だいたい一人だよね。アイディアを思いつく人はたくさんいるけれど、みんなが欲しいと思える形に落とし込んでいく才能が坂田さんにはありますよね。

坂田 こうしたら楽しいんじゃない?って、遊んでるんですけどね(笑)。

    ◇

坂田夏水(さかた・なつみ)
1980年、福岡県生まれ。株式会社夏水組の代表取締役。2004年、武蔵野美術大建築学科卒業。アトリエ系設計事務所、工務店、不動産会社勤務を経て、08年、夏水組を設立。空間デザインのみならず、商品企画、雑貨屋・飲食店経営など、活動は多岐にわたる

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から500件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)

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